“与件の整理”を行なう
それでは実際の「1枚企画書」で「遣」のハートを伝えるにはどうしたらいいかをひとつの事例とともに説明します。
下図Bの「1枚企画書」で特徴的なのは、トップ(一番上)で“与件の整理”というものを行なっているという点です。与件とは与条件、つまりその企画立案に先立って与えられた前提条件を指します。
すばらしいと思い、完璧に違いないと考えていたのにボツになってしまう企画書があります。そうした企画書に特徴的なのが、この与件が踏まえられていない点にあります。つまり相手の望むものが何かを理解しないまま企画にとりかかり、長い時間をかけてまったく的外れなことに労力を費やしてしまうというケースです。
こうしたミスマッチを避けるため、プロのプランナーが行なっているのが上図Aの点線のプロセスです。
すなわち、クライアント(依頼主)が何を望んでいるかを前ページにあったように「斟酌、咀嚼、解釈」するため、問いが発せられたその場にもう一度立ち返り、その発言の真意はどういったところにあるのか、またほんとうに望んでいることは何か、最終的な形としてどういったものを求めているのかなどを見出す作業で、一般的にはヒアリングと呼ばれています。
禅宗に「答えは問処にあり」という言葉があります。これは答えを出し急ぐ前に、問いが発せられたその出どころに立ち返って、洗い直しをすべきだという意味に受けとれます。企画にもこうした「問処の洗い出し」という手順が必要となるのです。
