iPhoneの課題はプラットホームとビジネスモデルの強化
松村 iPhoneの話では今年はiPhone 3GSが6月末にリリースされました。東京ではすごい変化を体験していて、特に女性と学生のユーザーが増えているように感じます。東京に限っては、すでにiPhoneが珍しいものではなく、よく見る端末になってきました。
林 僕の使う路線では、1つの車両の中で、iPhoneが3人以下になることはないですね。特に女性は、とある関係者に聞くと販売比率で30%を超えてくる割合になってきているようです。また今年、ファッション雑誌などでiPhoneの話をする機会が多かったです。特にファッション系の人たちへの導入から火が点いたようですね。
松村 iPhoneが2010年に新モデルを出すのか? OSの進化はどうなるのか? 新しいコンテンツストアはどうなるのか? 日本でのキャリアはどうなるのか? など、まだまだ不確定の部分が多いですが、ひとまず現行のiPhone 3GSの完成度が高い点は感じています。
林 そうですね。2010年のモデルが出るとしても、真新しいデザインや機能を詰め込まなくても、順当進化でも十分じゃないか、と思っています。
2009年夏の講演でよく話していたのは、iPhoneの3つの波。1つめは日本でリリースされなかった初代iPhoneで「Web 2.0 in your pocket」、Web 2.0の革命がポケットに入ってきたこと。2つめはiPhone 3GリリースとApp Storeでグローバルなアプリケーションプラットホームを作ったこと。これまでのケータイ用、PC用、ゲーム機用のアプリケーションがiPhoneに流れ込んできました。そして3つめはiPhone 3GSリリースのタイミングで顕在化した、生活の根の深いところにiPhoneが入り込んできたこと。
今のiPhone 3GSは、セカイカメラをやるにしてもコンパスやGPSの精度が足りないと思う場面がありますし、バッテリはまだまだ持たない。そこをちょっとブラッシュアップするだけでも、良いかもしれませんね。
また端末やOS、APIなどプラットホームとしての進化は一番重要です。App Store以降のiPhoneの進化は、アップルによるものとアプリ開発者によるものの、2輪の進化になりました。アプリ開発者のイノベーションを円滑に進めるための施策は必要だと思います。
松村 プラットホームについては、これはアップルの仕事ではないかもしれませんが、非常に成功している開発者がいる一方で、多くのアプリ開発者やビジネスとしてiPhoneに取り組んでいる人たちにとっては、ビジネスモデルなどがキチンと構築されていなかったり、普通のモバイルからの移行がまだ進んでいなかったり、日本での販売スタートから1年半がたった現在も、iPhoneがスマートフォンビジネスやスマートフォンがある社会を創り切れていないようにも感じます。このあたりは課題が残っているのではないでしょうか。
2009年の話題の中心は
アップルよりソーシャルメディアだった
このポッドキャストは元々アップル製品やその周辺のサービス、プロダクトについて語る番組だったが、今回の2009年を振り返る対談でもっともボリュームが大きかったのはソーシャルメディアだった。
Twitterに加えてiPhoneアプリ版がリリースされて、生中継が手軽に使えるようになったUstreamで数々のイベントを中継してきたし、この対談自体も配信した。ジャーナリストの役割、メディアの役割、聴衆としての個人の役割というものがそれぞれ少しずつ変化した年だったのではないか、とも思える。
ブログとYouTubeが個人にウェブを通じたメディア発信を提供し、2009年顕著になったTwitterとUstreamは、個人のメディア発信をリアルタイム化した。おもしろい共通点はシンプルなテキストとビデオの情報共有システムがセットになってトレンドを作っている点。
では、次はどんな特徴が追加されてくるのだろうか。場所だろうか? 人のつながりだろうか? あるいは磁場の可視化だろうか? そしてこれらをサポートするツールはいったいなんだろう?
ウェブ、ノートパソコンから、iPhoneをはじめとするスマートフォンより特徴的なガジェットになるのかもしれない。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
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