“内需の限界”を前に、先手を打つ――。国内EC市場が活況の中、次の成長戦略を描くべく、海外の消費者を取り込む動きが活発化している。舞台は、中国を中心とするアジアだ。今年4月にユニクロが独自ドメインのECサイトを立ち上げたのに続き、今月10日には千趣会が中国最大のECモール「タオバオ」に出店。いまだ19.1%という低いネット普及率ながら(2008年時点)、世界ナンバーワンのネット人口を誇る中国の伸びしろに期待する向きは、EC業界でも強い。
こうした流れをさらに加速させようと、ネット決済サービスを手掛けるSBIベリトランスが今年4月に立ち上げたのが、「E-Commerce for Asia Alliance」(ECAA)というコンソーシアムだ。コンソーシアムには、EC事業者向けにさまざまなサービスを提供する企業16社が参加。ECサイトの立ち上げに必要な現地通貨決済サービスや物流・配送サービス、多言語対応のショッピングカート、広告サービスなどを共同で売り込み、EC事業者のアジア進出を促していく。
参加企業は、全日空や日本郵便などの大手物流業者から、ソフトクリエイト、コマース21などのECパッケージベンダー、アドウェイズなどのネット広告企業まで、企業規模もバックグラウンドも実にさまざま。当面の活動は、オンラインカタログの整備やEC事業者向けセミナーの開催、参加企業間の情報交換だが、将来的には新しいソリューションパッケージの共同開発も計画している。
28日に都内で開かれた第1回のセミナーには、EC事業者を中心に100名が参加するなど、関心の高さがうかがえた。海外向けECサイトは、大手を中心に多くのEC事業者が期待を寄せる一方、商習慣や法規制の違いなどのハードルが高く、成功事例の蓄積やノウハウの共有も進んでいない。
ECAAがそうした現状を変え、日本EC事業者のアジア進出を成功させるけん引役となるのか。「参加企業を100社程度まで増やし、アジア全域をカバーする体制を整える。会員各社で力を合わせ、“新大陸”を開拓していきたい」(SBIベリトランス代表取締役 執行役員COOの沖田貴史氏)という取り組みは、まだ始まったばかりだ。