独禁法違反の容疑を指摘されたB-CAS
先週、総務省の「デジタル・コンテンツの流通促進等に関する委員会」(デジコン委)で、もめ続けているB-CASについての中間答申(骨子案)が出された。7月中旬にも中間答申が出される見通しだが、この「骨子案」にもまだ3つの選択肢が併記され、どれに決まるのか結論が出ていない。
デジコン委では、コピーを1回にするとか10回にするとか不毛な議論が続いてきたが、そもそも「エンフォースメント」の目的はコンテンツ保護なのだから、CAS(放送制限システム)は必要ない。
そこで昨年末になって、B-CASカードの廃止が検討され始めた。その最大の原因は、カードを発行するB-CAS社に独占禁止法上の問題が出てきたからだ。3月17日の参議院総務委員会では、次のような質疑が行なわれている(強調は引用者による)。
加賀谷 健委員(民主党):カードはB-CAS社しか扱っていないということだが、公正取引委員会として、公正な取引に関する疑いに対する見解を伺いたい。
政府参考人・公正取引委員会:システムに対応するカードを発行する会社が1社だけということ自体は問題でないが、新規参入を阻害するような行為がある場合は、独占禁止法上の問題が生じる。
このように公取委は、B-CAS社がカードの発行を独占していることが独禁法違反にあたる疑いのあることを指摘した。公取委は同じ趣旨の答弁を、4月22日の参院総務委でも行なっている。
加賀谷委員:受信機はこの(NHKの)メッセージを表示する機能を搭載しなければならないという法律はないが、B-CAS社がB-CASカード支給と引換えに受信確認メッセージの表示をメーカーに義務付けている。これは独占禁止法で禁止している拘束条件付取引にほかならないと思うが、公取委の見解はどうか。
公取委局長:そのカードを供給する会社が競争業者の新規参入を阻害するといったような行為を行う場合には、独占禁止法上の問題を生ずることになる。
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