シンビアン(株)は22日、英シンビアン(Symbian)社のCEOに就任したナイジェル・クリフォード(Nigel Clifford)氏の来日に合わせて都内で記者会見を開催した。
英シンビアン社CEOのナイジェル・クリフォード氏 |
英シンビアンは携帯端末用のOS開発で知られるメーカーで、同社が提供する“Symbian OS”は3G端末など高機能な携帯電話機で採用が相次いでいる。クリフォード氏は英ブリティッシュ・テレコム(British Telecom:BT)社や英ケーブル・アンド・ワイヤレス(Cable & Wireless)社などでマーケティング職を務めたのち、通信ソフトウェア・サービスの英ターショウ・テレコムズ(Tertio Telecom)社を設立。売却までを主導した人物。シンビアンのCEOには2005年5月18日に任命され、6月に就任したばかりである。
クリフォード氏は、会見でシンビアンの現状を報告した。2005年の第1四半期には全世界で675万台のSymbian OS搭載携帯電話機が出荷され、前年同期比で180%という大きな成長を遂げた。Symbian OSを採用したメーカーは現在15社で、その中にはフィンランドのノキア(Nokia)社、英国のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(Sony Ericsson Mobile Communications)社、米国のモトローラ(Motorola)社、韓国のサムスン電子社やLGエレクトロニクス社、台湾のベンキュー(BenQ)社、中国の聯想集団有限公司(Lenovo)などが名を連ねている。
国内での採用例はまだ少ないが、富士通(株)や三菱電気(株)のFOMA端末や、5月に発表されたモトローラ(株)製の『M1000』、ノキア・ジャパン(株)製のボーダフォン端末『702NK』が同OSを採用している。クリーフォド氏は「日本市場がシンビアンの成功の鍵を握る」と発言し、3G対応の高機能端末が広く普及している国内市場を重視している点を強調した。また、今後は世界市場でデファクトとなりつつある高機能電話機だけではなく、普及価格帯の製品にも積極的に同OSを提供していきたいと述べた。
リッチコンテンツを扱うためには、携帯電話専用のプラットフォームが必要
国内におけるシンビアンの戦略に関しては、シンビアン(株)代表取締役社長の久 晴彦(ひさ はるひこ)氏が説明した。同氏は上記国内メーカーに加え、シャープ(株)とソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)がSymbian OSによるFOMA端末を開発中であると述べた。
シンビアン(株)代表取締役社長の久 晴彦氏 |
Symbian OSを採用するメリットとして久氏が挙げたのは「携帯電話機用OSの専業メーカー」として責任を持ったサポートを提供できる点、再利用しやすいC++のクラスライブラリーで構成されている点などである。同氏は国内の携帯電話機で幅広く用いられている“μITRON”について「いいところはエンジニアが自分でいじれる点。PDC端末などではよかった」と一定の評価を示したものの、「テレビをはじめとした多彩な機能が搭載された携帯電話ではバージョンアップの際に問題が生じたり、情報共有などに問題が生じやすい」と、技術基盤としてさまざまな機能を標準でサポートできるリッチなOSの必要性を説いた。
シンビアン(株)はNTTドコモがFOMA向け仕様として決めたUIプラットフォーム“MOAP”(Mobile Oriented Applications Platform)の開発にも協力しており、Symbian OSとMOAPを組み合わせることで、開発の短縮化ができるとしている。
また、久氏はセキュリティーと安全性を強化する取り組みとして認証システムとなる“Symbian Signed”を紹介。署名の状態によってアプリケーションがアクセスできるソフトウェアのレベル制限などが行なえる仕組みを盛り込んでいると述べた。