日本電気(株)は13日、東京・三田の本社会議室にプレス関係者を集め、2004年度中に同社(グループ会社含む)が行なってきた環境活動の成果をまとめた“環境アニュアルレポート2005”を発行したと発表した。このレポートは毎年6月に、同社の活動の透明性を高めるべく公開しているもので、今年が9回目。昨年までは冊子とウェブサイトでの配布/公開を行なっていたが、環境への影響を最小限にするべく、今年から冊子での配布を完全中止したという。
クールビズに対応した軽装で挨拶する、CSR推進本部環境推進部長の斎田正之氏 |
発表会には、CSR推進本部環境推進部長の斎田正之氏らが出席して、「弊社でも6月から“クールビズ(※1)”に対応するべく、このように軽装で活動しています」と切り出し、同社の活動内容の詳細を報告した。
※1 クールビス ネクタイやスーツなど、ビジネスマンに固定化された服装を簡略化することで、屋内の冷房温度を下げすぎないように配慮する活動エネルギー起源のCO2削減目標 | CO2以外の温室効果ガス、および輸送におけるCO2削減の目標 |
まず、2004年度中の環境活動における社会背景として、
- 京都議定書の発効(2005年2月16日)
- “省エネ法”改正の動き(第162通常国会に提出、物流荷主への省エネ取り組みの義務化など)
- “温対法”に“温室効果ガス排出量公表制度”を規定(同上、事業場ごと、ガス種ごとに排出量を報告など)
- 欧州において“RoHS(ロス)指令”(※2)が発効予定(2006年7月、日本や中国でも同様の規制を検討中)
- 欧州において“WEEE(ウィー)指令”(※3)が発効予定(2005年8月)
※2 RoHS指令 鉛、水銀、六価クロム、カドミウム、PBB(ポリ臭化ビフェニール)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、という6種類の環境に有害な物質を含有する製品の出荷を禁止する指令
※3 WEEE指令 使用済み製品の回収、リサイクルを生産者に義務付ける指令。日本では“資源有効利用促進法”として、家庭用パソコンなどのリサイクルが2003年10月に施行されている
などを挙げ、環境対策やエコプロダクツ(環境に配慮して開発・生産した製品)にさらなる注目が集まっていることを強調した。これらを受けてNECでは、2010年度の目標数値を、“GHG(温室効果ガス)総排出量を基準年度レベルへ削減”と定め、活動を行なっているという。基準年度とは、開発・生産活動などによって発生する“エネルギー起源CO2”が1990年度、CO2以外の温室効果ガスは1995年度、物流によって発生するCO2は2000年度としている。これを具体的な目標数値に換算すると、
- エネルギー起源CO2(NECグループ全体での排出量)
- 125万トン(2004年度は133万トン)
- CO2以外の温室効果ガス
- 56万トン(2003年度は108万トン)
- 物流によるCO2
- 2.2万トン(2003年度は2.7万トン)
となる。
NECの掲げる環境経営の概念。短期的な活動ではなく、継続可能な活動として実践および提案を行なうという | ITソリューションによる環境負荷低減の将来予測 |
これらを実現するために、開発・設計から生産・製造に至る各工程でCO2の削減を図るとともに、CO2以外のガスについてはガスの代替や除外装置の設置、物流においては輸配送ネットワークの効率化、共同輸送の実施、低燃費車導入などを進めるとしている。また、これらで実績を挙げたソフトウェア/サービス/ソリューションについては、環境負荷や環境リスクの削減を目指す同社顧客に対して提案・提供を行なっていくとしている。その一例として、“給与明細Web照会システム”を挙げ、
- パソコンやサーバーの設置・運用による電力消費に伴うCO2排出量の増加
- 製紙や印刷、シーリングなどにおけるCO2排出量の削減
を計算するとトータルで約65%のCO2排出量の削減効果が見込める、と説明した。このほか、2万台の販売実績を持つ再生パソコン“NEC Refreshed PC”、ADSLモデムの“クローズドリサイクル”、愛・地球博の長久手地区で実施している環境モニタリングシステム“万博アメダス”の事業展開、環境対策の必要性・重要性を啓蒙するために環境実務者を対象としてNEC社内で実施している“ディベート型環境eラーニング”、茨城県石岡市の休耕田を買い取って始めた“NEC田んぼプロジェクト”など、同社が2004年度中に実施してきた環境活動の詳細を報告した。
ADSLモデムのリサイクルの概要 | NEC田んぼプロジェクトの概要 |
クローズドリサイクルは、従来売り切り型が多かったADSLモデムについて、通信事業者からレンタルの業務委託を受け、使用済みモデムの検査・清掃をNECが行ない再利用を図るというもの。再利用できないものはネジ1本を外して解体し、材料としてリサイクルする。ネジ1本で解体できる設計にしたため、従来よりも解体・リサイクルのコストが削減でき、ビジネスとして黒字化に成功したという。
NEC田んぼプロジェクトは、NECの社員などを対象に草刈から田植え、稲刈り、収穫までを実体験することで環境意識の啓発を目指す活動。最終的には、収穫した米で日本酒“愛酊、で、笑呼(あいていでエコ)”を作り、参加者で分け合ったとのこと。
環境アニュアルレポート2005のページ |
なお、説明の後のQ&Aで集まった記者から「サプライヤー(部品提供会社)への調査はどうなっているか?」と聞かれると、「調査は会社単位でほぼ終わっている。製品レベルでは6~7割程度というところだが、できていないのは設計段階で未発売のものがほとんど。発売に至るまでに順次調査を進める。調査方法については、社内での監査(有害物質の有無の検査体制)を30年近く行なっており、専門性について心配はしていない」と答えた。