ついに姿を現わした『Xbox 360』の本体とコントローラーを披露するマイクロソフト執行役 Xbox事業本部長の丸山嘉浩氏 | 『Xbox 360』の本体と付属の無線式コントローラー。付属コントローラーを無線式とするのは、家庭用ゲーム機としては初の試みだ |
マイクロソフト(株)は13日、東京都内にて“次世代Xboxプレビュー”と題したイベントを開催し、次世代家庭用ゲーム機『Xbox 360』(エックスボックス サンロクマル)を発表した。日本での発売は2005年末の予定で、価格は未発表である。米国ロスアンゼルス市で17日より20日まで開催されるコンピュータゲームと関連機器・サービスの展示会“Electric Entertainment Exposition 2005”(E3 2005)では、より詳細な発表が行なわれる予定だ。
今年は米マイクロソフト社を始め、ソニー・コンピュータエンターテインメント(株)、任天堂(株)のゲーム機メーカー3社から、2000年代後半に向けた次世代ゲーム機戦争の火蓋が切られる年である。家庭用ゲーム機市場には最後発で参入したマイクロソフトだが、今回は先陣を切って次世代機についての正式な発表を行なった。その発表方法も前代未聞で、米国の音楽エンターテイメント専門放送局“MTV”と共同で、Xbox 360に関する特別番組を制作し、それを13日(現時時間では12日夜)放送するという形で発表を行なったのだ。この発表方法についてマイクロソフト執行役 Xbox事業本部長の丸山嘉浩氏は、「報道関係者やパートナーの方はもちろん、一般ユーザーの方にも次世代Xboxを広くご案内するため」と語った。
MTVで放映されたXbox 360のプレビュー特別番組“Xbox The Next Generation Revealed”。司会役は“ロード・オブ・ザ・リング”で主人公フロドを演じた、俳優のイライジャ・ウッドを起用 |
コード名“Xenon(ゼノン)”の名で呼ばれていたXbox 360については、事前に名称や筐体デザインが海外サイトに多数流出するなどしており、実際に披露されたXbox 360本体のデザインも、流出していた情報どおりのものだった。本体は光沢のあるホワイトで、縦置きを前提とした(横置きも可能)デザインとなっている。前面のパネルは交換可能で、ホワイト以外のカラーやデザインのバリエーションも登場するという。同じホワイトカラーの付属コントローラーは、家庭用ゲーム機の標準添付品としては初めて、無線方式を採用している。
横置きにした状態でのフロント部分。フロントローディング式のドライブトレイ、赤外線リモコン用受光部、メモリーユニット用のスロットなどが並ぶ。電源ボタンが明るく輝くギミックは、日本のデザインチームからのリクエストだったという |
Xbox 360付属のワイヤレスコントローラー。基本的なデザインやボタン・スティック配置は、日本でデザインされた現行Xboxのコントローラーを踏襲している。白と黒のボタンがなく、STARTボタンやBACKボタンが中央のロゴ付近に配置されている。ちなみにコントローラーは4台までワイヤレス接続可能 |
現行のXboxは、家庭用ゲーム機としては初めてネットワーク端子(10/100BASE-TX)を標準搭載し、ブロードバンドネットワークを活用したボイスチャット対応の対戦ゲームやビデオチャット、小規模ゲームのダウンロード配信などが可能なネットワークサービス“Xbox Live”(エックスボックス ライブ)に対応したゲーム機であった。Xbox 360ではこの路線を継承・強化し、標準搭載のネットワーク端子に加えて、IEEE 802.11a/b/gに対応する無線LAN機能をオプションで用意する。
展示されていた筐体(内部はない)の背面。側面や背面には吸排気用のスリットが並ぶ。黒い開口部は、上からネットワーク端子、映像/音声出力端子、電源コネクタと予想される |
搭載CPUは米IBM社のCPU“PowerPC”をベースとしたカスタムCPUで、3つのコアを内蔵し、各コアで2スレッドを同時実行可能な対称型マルチコアプロセッサーとなっている。1MBの2次キャッシュメモリーを内蔵し、動作周波数は3.2GHz。GPU(グラフィックチップ)には、カナダATIテクノロジーズ社が開発したカスタムGPUを搭載。次世代のパソコン用GPUで予定されている、統合型のプログラマブルシェーダーアーキテクチャーを採用している。GPU内に10MBの組み込みDRAMが搭載されるほか、本体にはメインメモリー兼フレームバッファとして512MBのGDDR3メモリー(700MHz動作)が搭載される。「搭載しないのでは?」との噂もあったHDDは結局内蔵され、20GBのHDDが搭載される。HDD自体は取り外し可能で、アップグレードも可能になる予定。内蔵光ディスクドライブはDVD-ROMドライブ。またゲームデータの保存などに使うメモリーユニットは、64MB容量のものが発売時点で用意される。またネットワーク経由でWindows XP Media Center Edition(MCE)搭載パソコン内のオーディオ・ビデオコンテンツにアクセスし、Xbox 360上で再生するネットワークメディアプレーヤー機能“Media Center Extender”も標準搭載している。なお本体スペックの詳細については下記スペック表を参照のこと。なお現行のXboxとの互換性については、「現時点では決まっていない」(丸山氏)とのことで、可否についての発表は一切なかった。
日本市場攻略の本気の現われ? 有力クリエイターによる
Xbox 360用ゲームタイトル4本が発表
米国や欧州ではPlayStation2に次ぐシェアを獲得したXboxであるが、日本市場での惨敗ぶりはすさまじく、市場シェアでは3%にも満たないことを、同社幹部も認めている。欧米でいかに好調であろうが関係はない。日本のコンシューマーやゲームファンにとっては、自分たちが遊びたくなるゲームのないXboxは、もはや“忘れられたゲーム機”でしかない。とはいえ、日本市場で惨敗しながらも欧米ではそれなりに成功を収めたのだから、いっそ日本市場は“最初からないもの”と割り切るという選択肢も考えられただろう。しかし同社は日本市場攻略を諦めてはいない。今度こそ日本市場を攻略すべく、同社は日本の有名ゲームクリエイターを集めてXbox 360用ゲームを開発し、日本市場開拓の起爆剤としようとしている。
今回の発表会では、Xbox 360用ゲームを開発しているゲームクリエイター3氏が登壇し、開発中のゲームについて語った。登壇したのは、元(株)カプコンにて『ストリートファイター』シリーズや『バイオハザード』シリーズを手がけた、(株)ゲームリパブリック 代表取締役CEOの岡本吉起氏、元(株)セガで『セガラリー・チャンピオンシップ』や『スペースチャンネル5』『Rez』などを手がけた、キューエンタテインメント(株)代表取締役の水口哲也氏、元(株)スクウェアにて『ファイナルファンタジー』シリーズを手がけた、(株)ミストウォーカー坂口博信氏の3氏。いずれも日本のゲーム界に名を残したヒット作や個性的な作品作りなどで、高い評価を受けているクリエイターである。開発中のタイトルもいくつか映像が披露され、水口氏は韓国Phantagram社と共同開発中の『Ninety-nine Nights(ナインティナイン・ナイツ)』を、坂口氏は『ブルードラゴン』『ロストオデッセイ』の2タイトルを発表した。ブルードラゴンはキャラクターデザインに、ドラゴンクエストシリーズのキャラクターデザインでも名高い漫画家の鳥山明氏を起用。またロストオデッセイはキャラクターデザインに『スラムダンク』『バガボンド』などで知られる漫画家の井上雄彦氏を、シナリオ担当に直木賞作家の重松清氏を起用しているとのこと。まだ開発中の作品のため、イメージ映像程度の披露に止まったが、いずれも力の入った作品と期待される。スタート後に日本市場で受け入れられるタイトルを揃えられず、失速したまま浮上できなかったXboxの失敗を繰り返すまいという、マイクロソフトの真剣さがうかがえる。
坂口氏らが開発を手がけるアクションRPG『ブルードラゴン』のロゴ。鳥山明氏デザインのキャラクターが3D CGとなって活躍するゲームは『ドラゴンクエスト8』などもあるが、次世代機のパワーを使って描かれるブルードラゴンのキャラクターは生き生きとしていて、実際のゲーム内で動き回る姿を見たいと思わせる魅力がある |
今回の発表はE3 2005での発表に先立ち、MTVでのプレビュー番組に合わせて行なわれたという特殊な事情もあり、開発中のゲーム画面やデモ映像の披露はまったくと言っていいほどなかった。また米国と日本、欧州で年内に出荷するとの見通しは語られたものの、同時発売タイトルの数や出荷台数の予定、Xbox Liveサービスの拡張内容についてなども、一切明らかにされなかった。今回明らかにされなかった具体的な点については、来週のE3 2005に合わせた発表待ちということになりそうだ。
CPU | IBM PowerPCカスタムCPU-3.2GHz |
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コア数 | 対称型3コア、各コアが2スレッド動作可能 |
キャッシュメモリー | 1MB 2次キャッシュ内蔵 |
CPU演算性能 | 90億内積処理実行/秒 |
CPUシステムバス帯域 | 21.6GB/秒 |
GPU | ATIカスタムグラフィックプロセッサー-500MHz、統合型シェーダーアーキテクチャー |
GPU内蔵メモリー | 組み込みDRAM 10MB |
GPU内蔵メモリー帯域 | 256GB/秒 |
シェーダー演算性能 | 480億回/秒 |
システムメモリー | 512MB GDDR3メモリー(メインメモリーとグラフィックスメモリーの統合型) |
システムメモリー帯域 | 22.4GB/秒 |
浮動小数点演算性能(システム全体) | 1Tflops |
HDD | 20GB(取り外し可能) |
光ドライブ | DVD-ROMドライブ |
I/O | USB 2.0×3、メモリーユニット用スロット×2,イーサネット端子、ワイヤレスコントローラーを4台接続可能 |
映像出力 | 標準ビデオ出力、ハイビジョン(D3/D4)出力対応、ワイド画面対応、最大解像度1920×1080 |
オーディオ | 48KHz、16bitオーディオ対応、サラウンド音声出力対応、32bitオーディオ処理、同時デコード音声チャンネル数320、同自発音数256 |