1080pに対応する韓国サムスン電子の80インチプラズマTV『HP-R8082』。高解像度化が困難だったプラズマTVも、今年はフルHD対応の製品がいくつか登場するだろう |
デジタル放送とデジタルTVの急速な普及にともない、デジタルTVに対してさらなる高解像度への要求が高まっている。その目安としては、“1080p”と呼ばれる縦方向の有効走査線数が1080本(1920×1080ドット)でプログレッシブ表示の表示方式に、TVが対応できるか否かが重要視されている。既存の大画面デジタルTVのほとんどは、実は1080本の走査線を備えていない。そのため1080pや1080i(有効走査線数1080本でインターレース表示)の映像を表示する際には、実際のTVの走査線数に合わせて縮小表示を行なっている。当然この方式では1080p/i本来の画質を忠実に再現しているわけではなく、今後登場するデジタルTVには、1080pを縮小したりせずに表示する能力が求められている。1080pをそのまま表示できることを、一般的には“フルHD(High Definition)対応”と呼び、大手TVメーカー各社は“フルHD対応”の文字が記されたハイエンドの大画面デジタルTVを続々と出展してきた。各社のフルHD対応デジタルTVについて見てみよう。
HDソリューションに力を入れる松下電器
フルHD対応に非常に力を入れていたメーカーの1つが松下電器産業(株)である。同社のブースでは、入ってすぐのところにフルHD対応の液晶リアプロジェクション(リアプロ)TVを展示し、高解像度大画面の美しさをアピールしていた。また構造的に画素密度の微細化が困難で、液晶TVに比べて高解像度化に不向きと言われていたプラズマTV用に、極端な巨大化をせずに高解像度化が可能な“High Definition Plasma Display Panel”の試作品を出展。プラズマTVのフルHD対応にも道筋を付けた。
フルHD対応する松下電器の液晶リアプロTV『PT-61LCX85』(未発売)。61インチの大画面を備える | 一般的な50~60インチクラスのプラズマディスプレーでフルHD対応を実現する“High Definition Plasma Display Panel”の試作品 |
左が既存のプラズマディスプレーパネルの拡大映像で、右がHigh Definition Plasma Display Panelの拡大映像。画素を構成する発光体のサイズが小さくなっているのがよく分かる |
またフルHDに限った話題ではないが、松下電器ブースではHDコンテンツを家庭内ネットワークを通じて家中の機器に配信するという、“HD Networking”と題した展示を行なわれて注目を集めていた。松下電器の掲げるHD Networkingでは、ケーブルTV用同軸ケーブル(COAX)や高速無線LAN、そして100BASE-TX並みのスピードを持つ電力線ネットワーク(HD-PLC)を使用して、HD対応のホームサーバー“AVCサーバー”内のコンテンツを、家庭内の他のHDTVから視聴する。展示の主体は家庭内ネットワークを構築するためのネットワーク機器で、特にHD-PLC用アダプターは物理層で最高速度170Mbps、実効転送速度は最大90Mbps、COAX用アダプターでは物理層最大250Mbps、実効転送速度最大150Mbpsと、HDコンテンツを複数ストリーム同時に送るに足る非常に高速なネットワークを構築可能としている(無線LANはIEEE 802.11aを想定)。こうした機器展示だけでなく、HDコンテンツのさまざまな利用シーンでの活用を提案するなど、松下電器のHD関連製品への力の入れようがありありと分かる展示であった。
松下電器の掲げるHD Networkingの構成図。HD-PLCやCOAX、無線LANなど、新規の配線が不要な家庭内回線を使ってネットワークを構築するという現実的なプランだ |
HD-PLC対応のネットワークアダプターの試作品。この他にもHD-PLC対応ルーターやネットワークカメラの試作品も展示されていた | 家庭内のHDコンテンツサーバーには、HDD/BDレコーダーが使われる |
巨大なパネルでフルHD対応 サムスン電子
韓国サムスン電子社も、フルHD対応をキーワードにした大画面デジタルTVを多数出展していた。もっとも、表示画素を微細化して同等の面積でフルHD対応を可能にしようという松下電器のアプローチとは異なり、パネルサイズの大型化によって必要な画素数をカバーしようという発想で、展示されていたフルHD対応TVはどれも、その表示方式では最大級のサイズを持つデジタルTVばかりだった。同じ韓国のLG電子社と「世界最大の○○TV」を激しく競い合う間柄だけに、さもありなんという印象だ。