日本電信電話(株)(NTT)は27日、同社の未来ねっと研究所がピアツーピア(P2P:Peer to Peer)通信方式を用いて、サーバーを介さずに情報の送受信を行なう新技術“SIONet”を開発したと発表した。同技術を使えば、企業向けの共同作業支援サービスや分散コンピューティングサービスのほかに、個人が主体となった参加型コミュニティーが構築できるという。
現在のインターネットでは、ウェブやメールなどのアプリケーションの通信技術として、サーバークライアント方式を採用。サーバーを介して情報の送受信を行なうため、サーバーへの負荷集中という問題を引き起こしている。この問題を解決する通信技術として、個々のコンピューターや端末が対等に通信するP2P方式が登場した。同方式は、負荷が集中するサーバーを持たないため、端末の増加により大規模化した次世代のインターネットに適しているという。
P2Pネットワーキング基盤技術の提供 |
P2P通信方式を採用したものとして、NapsterやGnutellaなどのファイル交換ソフトが有名であるが、これらはファイル交換という単一目的のために開発されたシステムであり、他のファイル交換ソフトとの互換性/相互運用性を持たない。今回発表されたSIONetは、アプリケーション部分とプロトコル部分を完全に分離したことで、ファイル交換のほかに、SIONetのプロトコル部分を利用して、アプリケーション部分の互換性/相互運用性を持ったさまざまなP2Pサービスを開発できるとしている。
スケーラブルなSIONetの構築技術 |
また、SIONetでは、Gnutellaのように無作為のユーザーへ同報転送を行なわず、意味情報に基いた転送を行なうため、不要な情報をネットワークに流さないという。さらに、ルーターに相当するノードを地理的に分散して配置できるため、トラフィックが増加したり、一部のノードで障害が発生しても、システムを正常に稼働できるとしている。そのほか、意味情報から情報の転送先/転送経路を決定し、イベントプレースと呼ばれる論理的なネットワークを構築可能。情報の転送をイベントプレース内に限定することで、個人情報を保護し、特定のコミュニティーに限定した情報交換を行なえ、不正な情報の授受を防止できるとしている。