翻訳家・評論家の大森望氏と翻訳家の柳下毅一郎氏は、“インターネット・カルチャー”と題するトークライブを、(株)東芝の運営するマルチメディアアートスペース“T-BRAIN
CLUB”にて行なった。3年前にそれぞれ自分のホームページを立ち上げている両氏が、経験談を交え、インターネットが文化に与える影響などを語り合った。
「百科事典の価値を低下させた」というほど、翻訳家である両氏にとって、インターネットはものを調べる道具として威力を発揮しているが、大森氏は、「コミュニケーションの場として使うのが正しいのではないか」と述べる。大森氏はSFのサイトを中心に、柳下氏はハッカーのサイトやエログロのサイトを中心にコミュニケーションの場を求め、また自らのホームページでもそのような場を提供している。
大森氏は“日記猿人”というホームページ(http://wafu.netgate.net/ne/index.html/)を例に挙げ、インターネットは、日記という極めて私的なものさえコミュニケーションの場へと変化させることを示した。ここでは、個人の日記が一同に名を連ね、人気ランキングなども掲載されている。
インターネットにより、誰でもたやすく非合法な世界、ディープな世界に接触できるようになった。柳下氏がインターネットに初めて触れたころ興味を持ったのも、「人間と情報との距離感が、現実より近いことだった」と語る。そして、違法コピーなどのネット犯罪について柳下氏は、確信犯を食い止めるのは難しく、インターネットの特性として割り切るべき、と述べた。大森氏も現時点ではどうしようもないと見ている。
人間のやることは、現実空間でもヴァーチャル空間でも変わらない、ふたつの空間では犯罪を含めて同じ現象が起こっているというのが両氏の結論だ。その意味で両氏は、インターネットに過大な期待も寄せていないし、過大な批判も持ってはいない。大森氏もインターネットに費やす時間は1日30分程度という。
「CD-ROMの絵本をありがたがる人もいるけど、それがふだん絵本など読まない人だったりする。また、テレビを見ているときはCM中にトイレに行く人が、わざわざ企業のホームページ見たり。不自然だと思う」
メディアに関わらず、本当におもしろいものだけが残るという期待を込めて大森氏は語った。(報道局 浅野広明)
・大森望氏のホームページ
http://www.ltokyo.com/ohmori/
・柳下毅一郎氏のホームページ
http://www.ltokyo.com/yanasita/index.html#index/
・T-BRAIN CLUB
http://www2.toshiba.co.jp/spm/T-BRAIN/