LPI-Japan開始間近
2000年4月13日に設立された、Linuxの技術者認定機関LPI-Japan(Linux Professional Institute Japan)が、ついに8月から日本語による試験を開始することとなった。LPIとはどういった試験なのか、今後の予定はどうなっているのだろうか。
記事作成にご協力いただいた、リナックス・プロフェッショナル協会の成井弦理事長 |
LPI概要
LPIは、「Linux Professional Institute」の略語であり、同名の認定機関「LPI.Inc(以下、本体をLPI.Inc、日本の組織をLPI-Japanとする)」によって実施されるLinuxの技術者認定試験である。LPI.Incは、カナダで登記されたベンダーに依存しない中立の認定機関であり、1999年正式に非営利法人として認可された。ちなみに、カナダで登記された理由は、インターネット上で役員会を開催することが可能だからだという。米国で登記した場合は、物理的に役員が集まらないと、役員会とは承認されないのだそうだ(もっとも、実際の役員会はインターネット上で行なわず、LinuxWorldなどとあわせて開催しているとのことだ)。
そして、このLPIの日本法人が特定非営利活動法人「LPI-Japan」である。メンバーは、
- 理事長 成井弦氏―日本SGI(株)副社長
- 副理事長 木戸康行氏―(株)ネオナジー代表取締役社長
- 監事 村井純氏―慶應義塾大学教授
- 理事 小島國照氏―ターボリナックス ジャパン(株)代表取締役社長
- 理事 中原道紀氏―日本アイ・ビー・エム(株)Linuxビジネス開発担当
- 理事 Jay Powell氏―リナックスケア(株)代表取締役社長
らで、いずれもボランタリーな活動となっている。
LPI-Japanの運営形態
LPI.Inc(Japanも含め)の運営は、すべて企業からの寄付金により行なわれている。以下が「LPIスポンサーシップ・プログラム」で、LPIに寄付した金額によってグレードが分かれている。
- プレミアム……500万円(米5万ドル)~
- ゴールド……250万円(米2万5000ドル)~500万円(米5万ドル)
- シルバー……100万円(米1万ドル)~250万円(米2万5000ドル)
- ブロンズ……50万円(米5000ドル)~100万円(米1万ドル)
- コントリビューター……10万円(米1000ドル)~50万円(米5000ドル)
日本では現在プレミアムスポンサーのみを募集している。プレミアムスポンサーになっているのは、
- 日本SGI
- 日本アイ・ビー・エム
- ターボリナックス ジャパン
- NEC(予定)
である。プレミアムスポンサーになると、LPI.Inc(日本の場合はLPI-Japan)のWebページにバナーが貼られる。また、寄付金を早い段階に納めた場合、LPIのロゴに加えて「Charter」という称号もあたえられる。別の言い方をすれば、プレミアムスポンサーはバナーがLPI.IncのWebページで露出するだけなのだが、LPIのような公共の事業に献金した事実もまた、企業にとってプラスとなっていくだろう。成井氏によると、「Linuxにおける競争は、“いかに貢献したか、そしてその貢献をいかにアピールしていくか”にかかっている」という。
試験内容
試験問題は、LPIのサーバから受験者のアクセスに応じて試験会場に送信される仕組みだ。回答方法は、マウス操作により5択の中から選択する方法とっており(試験問題のデータをセーブされる恐れがあるのでキーボードは使わないようになっている)、試験時間は90分(英語版)になっている。詳しい内容は以下の通り。
- 試験料
- 1万1000円(税抜き)
- 試験場
- 全国45カ所(LPIの試験を行なう業者「VUE(Virtual University Enterprises)」の日本国内提携会社である(株)エヌ・ティー・シーの施設)
- 言語
- 現在では英語版のみ。日本語版は7月末から8月にかけてベータ版を実施予定(試験レベルは101と102)
- 現在の状況
- 現在、LPI-Japanが把握している日本人のLPI取得者は3人。その3人が、ベータ段階の日本語版を受験し、その結果により日本語版の試験時間や内容が決められる
テストの詳細情報は、http://www.yesitis.co.jp/LPI/LPIPT.htmlを参照のこと。
認定資格は、3段階のレベルがある。「レベル1」の技術水準は“UNIXの基礎程度”であり、「レベル2」になると、トラブルシューティングやシステムの企画・提案などSEとしての技術を問われるようになる。「レベル3」では、試験範囲が暗号化やデータベースなどの専門的な分野になり、さらにスペシャリストの能力が必要になってくる。なお、現在において日本ではレベル1のみ試験可能だ。
LPIの資格構成
LPI認定(LPIC)レベル1(2課目必須)
- 試験No.101 Linux一般1
- 試験No.102 Linux一般2
LPI認定(LPIC)レベル2(2課目必須)
- 試験No.201 応用管理
- 試験No.202 Linux最適化
LPI認定(LPIC)レベル3(2課目必須)
- 試験No.321 Windows統合化
- 試験No.322 インターネット・サーバ
- 試験No.323 データベース・サーバ
- 試験No.324 セキュリティ・暗号化
- 試験No.325 カーネル操作、 デバイス・ドライバ、 ディストリビューション、 パッケージ作成
- 試験No.32X その他、応用
今後の展開
LPI-Japanの今後の展開としては、LPI.incからの情報や試験などを日本語訳するために、できるだけ多くの企業から寄付を募り、国際的な立場から日本におけるLinuxの普及活動の促進をすることが考えられている。また、LPIをデファクトスタンダードな認定試験にするため、積極的なプロモーションやLPIスポンサーシッププログラムなどのの啓蒙活動を行なうという。この活動により、
- Linux技術者の目標が明確化される
- Linux関連教育機関の目標が定まる
- Linux関連テキスト本の目標が定まる
- Linux関連会社の技術レベルの目安になる
- Linuxの市場の活性化が進む
という効果が期待されているという。
成井氏は「Linux以外のOSは(ほとんどが)特定のベンダーのOSであり、LinuxはみんなのOS」と語る。つまり、LPIはみんなの認定試験であり、特定のベンダーやディストリビューターに依存しないオープンで、世界共通基準による認定ということである。このみんなの認定試験ということから、英語のWebページでは受験者が試験問題・内容に対する意見を自由に投稿できる仕組みが作られている。そして、バザール方式に近い形で試験のチューンナップをかけていくことで、つねによりよいものを作っていくことができるという。