米AMD社は8日、コード名「Deneb」で知られていた新しいデスクトップパソコン向けCPU「AMD Phenom II X4プロセッサ」を発表した。既存のPhenomシリーズのアーキテクチャーをベースに、高クロック化と低消費電力化を実現している。CPU単体、および搭載製品は本日から発売開始の予定。
また同時に、Phenom IIを核としたプラットフォーム「Dragon」も発表された。CPU以外は既存のチップセット(AMD 790GX/FXシリーズ)とGPU(Radeon HD 4800シリーズ)で構成される。
発表された製品ラインアップは下記の2製品。いずれも通常電力版で、45nm SOIプロセスで製造される。上位製品の「Phenom II X4 940 Black Edition」は、クロック倍率上限設定のないオーバークロック向けハイエンド製品である。標準のCPUクロックは3.0GHzとなり、65nm版Phenomの2.6GHzと比べて大きく向上している。
Phenom II X4シリーズ | ||||||
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クロック周波数 | 2次キャッシュ | 3次キャッシュ | TDP | 価格(ドル、円) | ||
Phenom II X4 940 Black Edition | 3.0GHz | 2MB (512KB×4) | 6MB | 125W | 275ドル(約2万5850円) | |
Phenom II X4 920 | 2.8GHz | 235ドル(約2万2090円) |
CPU内部のアーキテクチャー自体は、2008年11月に発表された45nmプロセス版のクアッドコアOpteronと同等で、対応ソケットやHyperTransportの数などが異なる。CPUのダイサイズは258mm2で、トランジスター数は約7億5800万個。
CPUコア数は4個で、各コアごとに64+64KBの1次キャッシュと512KBの2次キャッシュを備える。さらに共有3次キャッシュを6MB内蔵する。対応CPUソケットは既存のSocket AM2+と、DDR3メモリーに対応可能なSocket AM3(いずれも940ピン)。しかし、AM3のマザーボードが現時点では販売されていないので、既存のAM2+マザーボードの多くが、BIOSを更新することでPhenom II X4に対応する予定だ。
CPU内蔵のメモリーコントローラー自体はDDR3/DDR2の双方に対応するが、現時点での対応メモリーはDDR2-1066/800/667/533/400となっている。チップ間インターコネクトバスにはHyperTransport 3.0(3.6GT/秒)を使用する。
性能を重視して動作クロックも高いCPUであるため、TDPは125Wと高い。しかし45nmプロセス化と電力制御技術「Cool'n'Quiet 3.0」により、アイドル時の消費電力は従来より40%程度低いとしている。
Phenom II X4の特徴としてAMDは、オーバークロックへの余裕の大きさを挙げている。DragonプラットフォームとAMD製のオーバークロックソフト「AMD OverDrive 3.0」の組み合わせで、3GHz台を超えて4GHzも狙える可能性があるとしている。実際に製品説明会で披露されたデモでは、3.8GHzまでのオーバークロックを実演してみせた。
今回の2製品はいずれも、性能重視のパフォーマンス分野向けとなっているが、AMDでは2009年中に、DDR3メモリーのみに対応する「Leo」「Pisces」「Kodiak」(いずれもコード名)のCPUをリリースする予定である。Leoはパフォーマンス、Piscesはメインストリーム、Kodiakはコマーシャル(ローエンド)向けとされている。