「なぜ日本にグーグルのような企業が生まれないのか?」「もの作りでは一流だった日本が、ネットサービスで伸び悩んでいる理由は?」
新書「ウェブ国産力~日の丸ITが世界を制す」の著者で、IT業界の動向に詳しいジャーナリスト佐々木俊尚氏は、大企業とベンチャーの間の埋まらない溝が日本の発展の大きな障壁になっていると話す。
同氏が考える未来の検索や、これから5年先を見据えて、日本企業が取り組んでいかなければならない問題について聞いた。
大企業とベンチャーの溝をどう埋めるか?
── まずは日本のITの現状に対してどんな感想をお持ちなのか。そのあたりからお伺いしたいと思います。
佐々木 大きな枠組みで言うと、日本を代表するIT企業はあいかわらずハードウェア偏重の世界にいます。しかし、ビジネスの中心はすでに「サービス」のような上位レイヤーに移行している。日本の大手企業はそのへんのキャッチアップが十分にできていないんです。
本来それを担うべきなのは、最先端と言われているWeb 2.0ベンチャーになるんでしょうが、なかなか資金力が伴わないし、人数も少なく産業の分野としてはまだまだ小さい世界です。米国でグーグルやアマゾンなどが成功しているのとは対照的です。
日本の大企業はベンチャーを馬鹿にする傾向があります。所詮「彼らはモノを作れないじゃないか」と昔ながらのプロダクト偏重の考え方だったり、「マーケティングや広告をやっているだけなんじゃないか」と。確かに1990年代初めのインターネットベンチャーにはそういうものが多かった。しかし、第3世代のベンチャー──2000年を境に出てきたはてなやミクシィといった企業──の技術力は決して低くはありません。そのへんに誤解がある。
日本では、大企業が「小さい会社」と組むのを躊躇する傾向があります。資金力があり、要素技術もたくさん持っている大手IT企業と、資金力が低く、技術的にも劣る部分もあるけれど、旺盛なベンチャースピリットとサービスのアイデアを持っているベンチャー企業の間にある溝がなかなか埋まらない問題が生まれている。
米国には「エンジェル」という存在がいます。一定の成功を収め、言うならば「上がり」の状態になったベンチャー経営者が、若い企業家に対して1000万、2000万の資金協力をするという構造ができている。ベンチャー文化が育っていない日本では、50~60代で成功している人はあまりいません。今後は増えてくると思いますが、まだまだ状況は熟していない。これをどうするかが課題になってくるでしょうね。