月刊アスキー 2008年2月号掲載記事
Web2.0のキーワードのひとつ「集合知」は、“みんなの意見は案外正しい”という認識を元にしているが、意見だけでなくどうやら未来予想も案外正しいらしい。
米国のHollywood Stock Exchange(HSX)では、毎年アカデミー賞の各賞をどの作品が/誰が受賞するか予想しているが、2004~2007年度においては予測した計33の受賞対象のうち29個を的中させた。的中率は87.8%。2005年に至っては8賞すべてが正解だった。
HSXにおける予想は「予測市場」と呼ばれる手法で行われる。受賞候補それぞれが株式市場における個別銘柄に相当する「株」として公開され、ユーザーはH$(ハリウッドドル)という仮想通貨で株を売買する。選考結果が出ると、正しい予測の株が25ドル、他は0ドルになる。みんなが「これは受賞するだろう」と思う作品ほど値が上がるしくみだ。欧米ではこうした“予測”を株に見立てた予測市場がこの1~2年で数多く開設され、仮想通貨をリアル通貨と交換できるものもあるという。
一方、株式会社プレディクションが11月から始めた「予測市場」は、日本で初めて予想の取引を可能にするサービスだ。加入すると3万P$が支給され、当たると儲かる「ベット」(賭け)の市場と、ひとつひとつの予測を株に見立てて参加者が売買する「ストック」の市場がある。現時点ではP$は無償で提供され、現金などに換えることはできない。
ビジネスとしては、OEMやASPでの提供、調査・コンサルティング、サイト内広告の3つを柱にするという。「米マイクロソフトが社内で製品の発売時期に関する予測市場を立て、良好な結果が得られたことがニュースになりました。メーカーさんに社内向け予測市場を提供して、新製品のリサーチに使っていただく、といったOEM/ASPのビジネスの需要は大きいと考えています」と苅田あずさ社長は語る。
また「今は信じていただけない方が多いかもしれませんが、実際に運営していると、予想の的中に驚くことが多いのです。予測市場の実態がもう少し認知されるようになれば、企業から依頼を受けて調査用の市場を用意したり、予想市場の利用についてのコンサルティングもビジネスになると思います」とする。
12月には携帯電話にも対応予定で、その際にはインターフェイスを工夫して、現在のPC上での予測市場の参加者より若い層の参加も狙うという。海外では予測市場の運営企業にVCが資本参加する例も相次いでいる。予測市場が日本でブレイクするかどうか、2008年が注目の年になりそうだ。