月刊アスキー 2007年3月号掲載記事
駅の構内が面白い。駅はいま、安全性に加えて快適性も追求しており、「駅ナカ」はここだけで十分暮らしていけるくらい、多様な商品をそろえるようになった。
その流れのなか、映画『マイノリティ・リポート』のような未来に結び付きそうな実証実験を、JR東日本フロンティアサービス研究所が行っている。
東京駅と上野駅に設置された「新幹線列車編成案内システム」は、新幹線の編成や号車をグラフィカルに表示して、乗客を的確に案内する。恵比寿駅の「列車在線位置表示システム」は、次に到着する列車がいまどこにいるのかを、これも絵で表示するものだ。
鉄道運行システムからの情報を、大画面ディスプレイにグラフィカルに表示するという点では、この2つのシステムはよく似ている。だが、これらは同じ研究所の中でもまったく畑の違うグループによって開発された。前者は光環境や温熱環境といった駅空間の研究を行うグループが、後者はユビキタスなソリューションを研究するグループが手がけた。
かつては駅構内の乗客への情報提供と言えば、ロール幕や電球、LEDしか使えなかった。だが、大画面のフラットパネルディスプレイをデバイスとして安価に利用できるようになったことで、表現力や自由度が大幅に増した。その表現力を使っていかに乗客へ情報を提供するかという部分で、異なる土壌の研究グループがいま接しているというのは興味深い。もっとも、自由度が増したことで、いかにわかりやすいインターフェイスを設計するかという新たな課題も抱えているという。
床や壁に表示された図形や映像が乗客を誘導してくれる日はまだ少々遠そうだが、究極的には「行き先をインプットすれば、最適な経路を提示して誘導してくれるインターフェイス」(同研究所中川剛志氏)を目指している。