月刊アスキー 2007年2月号掲載記事
電車やタクシーの車内、駅やオフィスビルのフロア内、そしてビルの壁面など、いまやあらゆる場所で大小様々なディスプレイが、ネットワーク経由で配信された広告映像を表示している。これらは「OOH」(アウト オブ ホーム メディア)、あるいは「デジタルサイネージ」と呼ばれる。
先行する米国ではテレビCMが日本ほどリーチしない(日本は6兆円の広告市場のうちテレビCMが30%以上だが、有料チャンネル主体の米国は20%以下)こともあって、スーパーマーケットに置いたディスプレイでCMを流すほうが、テレビCMより効果が高いという。米国のデジタルサイネージの広告市場規模は、2011年には4000億円になると予想される(フロスト&サリバン調べ)。
中国でも、フォーカスメディアという企業がエレベーター内に設置したディスプレイに広告を配信して成功し、NASDAQに上場した同社の株式時価総額はすでに2500億円を超えた。
日本では2005年にはデジタルサイネージのシステムの市場が129億円(富士通キメラ総研)となったが、メディアとして発展した米中とは少々事情が異なる。
日本ではマスメディア的に、誰が見ても同じ映像を配信するだけでなく、QRコードやトルカを活用してクーポンを発行したり、モバイルECとの連動、あるいはIDを検知してユーザーに合う広告を表示するなど、「プロモーションのツールとして発展しつつある」(デジタルサイネージの代表的な企業であるピーディーシーの菅原淳之社長)という。
ユーザーはケータイをディスプレイに近づければ商品情報を入手でき、そこで購買もできる。配信側はそのログをもとに絞り込んだ情報を表示するなど、「ユビキタスなプラットフォームとして」(菅原氏)の活用が期待される。