日本エイ・エム・ディ(株)(AMD)は14日、同社としては初となるDirectX 10世代のグラフィックスチップ(GPU)“ATI Radeon HD2000”シリーズと“ATI Mobility Radeon HD 2000”シリーズを発表した。最上位GPUである『Radeon HD 2900』を搭載するグラフィックスカードは、本日より販売を開始している。
エンスージアスト市場向けのハイエンドGPUに“HD 2900”、メインストリーム市場向けのミドルクラスに“HD 2600”、バリュー市場向けのローエンドが“HD 2400”がラインナップされている。2枚のグラフィックスカードをパソコンの装着してパフォーマンスを向上させる“CrossFire”にも対応する。発表されたGPUの主な仕様は以下のとおり。
デスクトップ用
Radeon HD 2900 | Radeon HD 2600 | Radeon HD 2400 | |
---|---|---|---|
ストリームプロセッサー数 | 320 | 120 | 40 |
コアクロック | 740MHz | 600~800MHz | 525~700MHz |
テクスチャーユニット数 | 16 | 8 | 4 |
対応メモリー/容量 | GDDR3 512MB | GDDR2/3/4 256MB | GDDR2 128~256MB/GDDR3 256MB |
メモリークロック | 825MHz | 400~1100MHz | 400~800MHz |
メモリーインターフェース幅 | 512bit | 128bit | 64bit |
数値演算性能 | 475GFlops | 144~192GFlops | 42~56GFlops |
トランジスター数 | 約7億 | 約3.9億 | 約1.8億 |
ノート用
Mobility Radeon HD 2600 XT | Mobility Radeon HD 2600 | Mobility Radeon HD 2400 XT | Mobility Radeon HD 2400 | Mobility Radeon HD 2300 | |
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コアクロック | 600~700MHz | 400~500MHz | 500~600MHz | 350~450MHz | 450~480MHz |
メモリークロック | 700~750MHz | 550~600MHz | 600~700MHz | 400~500MHz | 400~550MHz |
メモリーインターフェース幅 | 64/128bit | 64/128bit | 64bit | 64bit | 64/128bit |
注:Mobility Radeon HD 2300はシリーズ名こそHD 2000であるが、実際はDirectX 9c世代のGPUで、アーキテクチャーもほかのHD 2000シリーズとは異なる。後述するAvivo HDは備える。
AMDではRadeon HD 2000シリーズの利点として、大きく分けて次の3点を掲げている。
- 第2世代ユニファイドシェーダーアーキテクチャーによるDirectX 10ゲームの優れたパフォーマンス
- Universal Video Decorderによる究極のHDマルチメディア体験
- 65nmプロセス、Windows Vista対応、優れた電力効率など技術面のリーダーシップ
特に注目されるのは、RadeonブランドのGPUとしては初となる、ユニファイドシェーダー(頂点シェーダーとピクセルシェーダーを統合したプログラマブルシェーダー)の採用であろう。旧ATI Technologies社は、すでにXbox 360搭載GPUとして、ユニファイドシェーダーを備えるGPUを供給していた。今回のRadeon HD 2000シリーズは、それに続く第2世代のユニファイドシェーダーアーキテクチャーを備えるとしている。演算処理を行なうストリームプロセッサーは、最上位のHD 2900で320個を搭載する。前世代のRadeon X1900シリーズが合計96個のベクトル・スカラープロセッサーを搭載していたのに比べると、大幅に増加している。HD 2600は、HD 2900の3分の1程度の120個、HD 2400は8分の1の40個のストリームプロセッサーを備える。
演算結果を基にZバッファやアンチエイリアシングの処理を行なう“レンダーバックエンド”の数は、最大16個でRadeon X1900シリーズと同等である。メモリーインターフェースはバス幅が512bitで、リングバス構造でコアとメモリーを接続する点もRadeon X1900シリーズの構造を継承している。メモリーバンド幅は106GB/秒にも達する。
HD 2000シリーズは、プログラマブルなテッセレーター※1も内蔵する。AMDの説明では、テッセレーターとディスプレイスメントマッピングを組み合わせることで、840ポリゴン・頂点バッファーサイズ70KBの地形モデルから、約100万ポリゴン・31MBの複雑な地形モデルを生成でき、しかもレンダリングにかかる時間は、元々128万ポリゴンあるデータをレンダリングする場合の半分程度で済むという。
※1:ポリゴンを分割する機構。少ない頂点で構成される雑な3Dモデルを、より多くの頂点で構成される滑らかなモデルに変化させられる。
またHD 2000シリーズには、“Avivo HD”と呼ばれるビデオ再生アクセラレーション機能が備わっている。Avivo HDを構成する機能をまとめて、Universal Video Decorder(UVD)と呼んでいる。UVDではH.264/AVCやVC-1といった、Blu-rayディスクやHD DVDで使われるビデオコーデックのデコードの、全段階をGPU上で処理できる点を特徴とする。AMDでは、HD DVDの再生を行なう場合、CPUのみによるデコードではCPU負荷が80%以上、競合他社のGPUによる再生アクセラレーションでもCPU負荷が65%近くあるところを、UVDによるデコードでは10%程度まで減らせるとしている。UVDを使用した映像デコードにはソフトウェア側の対応が必要である。AMDでは再生ソフトのメーカーと協力して、対応を進めているという。
さらに、HDMI映像出力に著作権保護のための暗号化をほどこす“HDCP”の暗号鍵や、オーディオコントローラーもGPU内に内蔵しているため、別途HDCPキーのモジュール搭載や、パソコン内部でサウンド機能とグラフィックスカードを接続することなく、ひとつのHDMI出力(サンプルカードの場合、DVI~HDMI変換コネクターを使用)から映像と音声の両方を出力できるとしている。
製造プロセスは、GPUとしては初の65nmプロセスを使用している。高クロックを重視したHD 2900のみ80nmプロセスを使用する。AMDでは65nmプロセス採用の理由として、リーク電流が低いため電力効率が良く、ノート向けに適するとしている。HD 2900がカード全体で200W以上の消費であるのに対し、HD 2600は45W程度としている。そのほかに“PowerPlay 7”と称する省電力機能を持ち、ノートパソコンではX1600世代と比べて、15~32分のバッテリー駆動時間延長が可能としている。
HD 2900搭載カードは、本日より販売を開始している。HD 2600とHD 2400の搭載カードはやや遅く、7月1日からの販売と予定されている。グラフィックスカードの価格の目安は、HD 2900が399ドル(約4万7880円)、HD 2600が99~199ドル(1万1880円~23880円)、HD 2400が99ドル未満とされている。