東大文一に落ちて早稲田大学法学部に進学した息子が司法試験の勉強をしている。
私は努めて平静を装い、母として「頑張ってね」と声をかける。
でも心では思う。
どうしてもっと10歳から12歳、16歳から18歳という人生で最も重要な6年間に今の頑張りと結果を出してくれなかったんだろう、と。
その6年間にかけたお金と手間を思い出し虚しくなる。
第一、仮に予備試験と司法試験に合格したとして早稲田大学法学部から裁判官や検察官になって何の意味があるのだろう。
判事ならその大半を最高裁事務総局付や最高裁判官調査官として、検事ならその大半を法務官僚として過ごす。
そしてその先に高裁長官、最高裁判官、最高裁長官、法務次官、東京高検検事長、検事総長という職務が待っている。
それが一流だ。
法廷に立って犯罪者を裁く判事、送検された被疑者を取り調べて被告人にして法廷で責め立てる検事は現場で働く現業職であり二流なのだ。
なせわそれに気が付かない。
だからお前は二流なんだ。
そんな言葉を飲み込み、頑張ってねと声をかける。