「「ゴジラ-1.0」 豪華版 4K Ultra HD Blu-ray同梱4枚組」を購入しました。《画質・音響について》まず、富士通のＰＣのモニターにpioneerの外付けのブレーレイ・ドライブで、ブルーレイ版とモノクロ版（「ゴジラー1.0／C」)を観賞。画質はクリアで、Amazonプライムの画像と同等です。モノクロ版は、予告編をインターネットでも見た時から疑問に思っていましたが、クリアですが暗すぎますね。昭和中期のモノクロ映画は、屋内でも屋外でも、もっと画像が明るい。山崎貴監督とキャメラマンの方のモノクロ化対談の記事を読みましたが、ものすごく丁寧に作業をしている。にもかかわらず、このように見にくい画像になるということは、山崎監督に何らかの意図があるのか、うちのパソコンにHDR？とかいうソフトが足りないのか、私にはわかりかねます。なお、「シン・ゴジラ」のモノクロ版をアマプラで観ましたが、こちらは「マイゴジ」ほどクリアではなく、色調もセピアっぽい感じで、やはりカラーに比べて細部が潰れていると感じました。それから、カラー版の音声はドルビーアトモスで、モノクロ版は5.1ch ドルビーデジタルで観賞しましたが、安価なサンワダイレクトの外付け10Ｗ二個スピーカーで聞く限り、差はありません。双方とも、冒頭の特攻機の不時着の場面で、私の頭の上を零戦が飛び越して行くのが聞こえました。そして、４K対応ではない東芝の古いREGZA＋パナソニックの4Ｋ対応機器のデイーガで、４Ｋ版とブルーレイ版を比較観賞。結論から言いますと、４Ｋではないテレビで見る限り、画質の差はないと思います。ＰＣのモニターで見た時よりも色が濃く黒の濃度が高くてクッキリ感が強く、夜の場面が潰れ気味でしたが、これは私のテレビの色調設定のせいかも知れません。なので、現在、４Ｋテレビを持っているか、それを買う予定のある方以外は、４K版ではなく通常のブルーレイ版かＤＶＤ版で充分ではないでしょうか……そのうち２Ｋ版も出るかも知れないし。音響は、ONKYOのHTX-25HDXにスピーカーを二個増設した5.1ch・ホームシアターセットで聞きましたが、どちらもサウンドが素晴らしいです。私は劇場ではＩＭＡＸで観賞しましたが、この作品はサウンドの重量感が凄いですね。《内容について》（ネタバレ有り）まず、劇中では説明のなくて、若い観客や視聴者にはわかりにくいであろう点を説明します。大戸島の惨劇の後に、大きな船の甲板に無数の男たちが座り込んでいる場面がありますが、あれは「復員船（復員輸送艦）」、戦地から引き揚げてきた旧日本軍兵士です（武装解除されてます）。主人公の敷島（神木隆之介）の実家と隣の太田の姉さんの家は米軍の空襲で焼かれたという設定ですが、これは、おそらく、一晩で１０万人が亡くなったといわれる昭和２０年３月１０日の「東京大空襲」のことかと思われます。そして、ボロを着て真っ黒な顔をした典子（浜辺美波）が、説教する敷島に「パンパンにでもなれっていうの？」と言い返しますが、パンパンとは進駐軍（占領軍）相手の娼婦のことです。闇市（非合法市場）で、敷島が預けられた赤ちゃん（明子）をかかえて途方に暮れる場面で、彼の左後ろを派手な化粧をして煙草を喫いながら女性三人組が通り過ぎますが、あれがパンパンです（当時、堅気の女性は人前で煙草を喫わない）。典子が汚い格好をして、わざと顔を汚しているのは、悪い男に暴行されるのを防ぐため。終戦時に中国大陸から日本へ引き揚げる人たちの中で、若い女性は髪を短く切り顔を汚して男装して、大陸の暴徒たちに乱暴されるのを防いだそうです。敷島が「コメを運んだけど、報酬をもらえなかった」というのは、闇屋の担ぎ屋をやったのでしょう。この当時、食料は配給制ですが、それでは全く足りないので、不法なコメが流通していました。この不法コメを田舎から都会へ列車で運ぶ実行者が「担ぎ屋」ですが、見つかると警察に取り上げられてしまいます。現代でいうと、「オレオレ詐欺」の現金の「出し子」みたいなものですね。そして、無事にコメを運んでも、敷島のように闇屋に騙されて報酬をもらえないこともありましたが、犯罪なので警察に駆け込むわけにもいきません。テレビドラマの金田一耕助シリーズの「八つ墓村」は昭和２３年が舞台ですが、荻島真一の主人公が大阪で担ぎ屋をやって生計を立てていましたね。彼は服も下着も軍隊で配給されたものを、そのまま着ていました。典子が小ぎれいな服装で銀座に勤めに出ますが、私は、あの勤務先はＰＸ（進駐軍専用売店）ではないかと推測しています。そして、ゴジラが東京を襲った時に、日劇の向かい側のビルの屋上で実況中継をしているラジオの放送スタッフがいますが、アナウンサーの斜め後ろで茶色のジャンパーを着た男性がオープンリール式の録音機を使っています。後半の「海神作戦」で水中音響班が使用するゴジラの鳴き声は、この時の録音テープを音源としたのでしょう（スタッフは殉職したようですが……）。さらに、ゴジラの熱線で核爆発のようなものが起こりますが、衝撃波と吹き戻しの直後、雷鳴と共に敷島に黒い雨が降り注ぎます。これは、広島に原爆が投下された直後に降った死の灰を含んだ「黒い雨」を模していると思われます。これを描いた井伏鱒二・原作、今村昌平監督の「黒い雨」（１９８９年）というモノクロ映画もあり、その惹句が「死ぬために、生きているのではありません。」「体の中で、戦争は続いています。」でした。敷島の心情と重なるところがありますね。そして、鹿島の格納庫の震電の説明で「Ｂを落とすために」と説明されますが、これは米軍のＢ29爆撃機のこと。先ほどの東京大空襲も、このＢ２９が大量に投下した焼夷弾による意図的な一般民衆の殲滅でした……。このあたりのことは、映画でも説明を省いているので、日本人でもわからない人が多いだろうし、アメリカ人の観客は全くわからなかったでしょうね。ですが、山崎監督は、以上の事実を踏まえた上で脚本を書かれたのだと思います。もしも、劇中に「東京大空襲」「広島」「長崎」「被爆者」などの言葉がちりばめられていたら、アメリカの観客の反応はどうだったでしょうか。この「マイゴジ」は、公開当初は、東宝は海外で大々的に配給するつもりはなかったそうですから、山崎監督がそれを気にして上記の言葉を削ったわけではないと思います。娯楽作品に徹するための選択ではないでしょうか。ラストで、頭が吹っ飛んだゴジラが海に沈んで行くところで、断末魔の熱線が海面から放射される場面は、１９６６年の大映映画「大怪獣決闘／ガメラ対バルゴン」で、琵琶湖で溶解されながらバルゴンが放つ悪魔の虹を思い出しました。そこで、登場人物たちが皆で敬礼をしますが、あれは海神作戦で殉職した人々、高雄の乗組員、銀座の被害者などの方々、そして「加害者でもあり、核実験の被害者でもあるゴジラ」に対する敬礼でしょう。素晴らしい感動的な場面ですが、日本人以外には理解しにくい情緒かも知れません。登場人物の中で、私は、橘元整備兵（青木崇高）が一番好きです。殴り殺しても飽き足らない敷島なのに、彼のために懸命に震電を修理し、頼まれなくてもドイツ製の脱出装置まで取り付ける。敬礼して元整備兵たちが敷島を見送る場面は、本当に涙が出ます。そして、雪風の堀田艦長（田中美央）……私は知識不足で、この俳優さんを知りませんでした。演技的にも、物理的にも（笑）、重量感たっぷり。もう、「令和の藤田進」というか、これから映画でもドラマでも高級軍人の役は全て、この田中さんに任せましょう。この体型なら、西郷隆盛もイケるな!? 武田信玄も徳川家康もイケそうだな？私は「シン・ゴジラ」が大好きです（「シン・ウルトラマン」も「シン・仮面ライダー」も好き）。そして、「ゴジラ-1.0」 は、かなり強引な設定の映画ですが、「シン」と並ぶ傑作だと思います。敷島は、「生きて帰ってくれ」という母親の願いを受けて特攻隊でありながら敵前逃亡してしまったわけです。ですが、大戸島に上陸したゴジラに零戦の２０ミリ砲を撃てなかったことからして、実戦を経験したことのない、ある種の戦闘恐怖症であったのです。その二重の罪悪感が、彼の人生を灰色に塗りつぶしているのですが、ゴジラのために典子を失って戦士として覚醒し、明子の未来を守るためにも「差し違えてもゴジラを倒す」と決意するんですね。で、敷島は命がけでゴジラを倒し、典子を取り戻すわけですが……「しきしま」は日本の古い国号です。だから、この映画は、敷島が自分の人生を取り戻す話であるとともに、戦争に負けた日本がアメリカの核実験が生み出してアメリカ軍も倒せなかった放射能怪獣を敷島が倒すことによって、結果として「日本が（間接的に）アメリカに勝つ」話でもあるのです。この作品構造は、お見事でした。山崎監督の「マイゴジ」続編が、どんな作品になるのか、楽しみですね。あんまり待たせず、なるべく３年以内に公開してほしいです（笑）。それで、劇場で観た時も「あれ？」と思ったのですが、銀座でゴジラが熱線を吐く直前の場面で民衆の中に中島みゆきさんや橋爪功さんに激似の人がいるんですが……カメオ出演なのかな？なお、終戦時に中学生だったという高齢の男性がYouTubeに感想を書きこんでおられますが、「面白いけど、感動はしなかった。登場人物の血色が良すぎる。当時は、誰もが栄養失調で食べ物のことばかり考えながら歩いていた」ということでした。私も、予告篇を見た時から「昭和２２年にしては、群衆の服装がキレイだし血色もいいような……」と気になってはいました。昭和２２年といえば、有名な「米よこせデモ」の年で、昭和天皇ですら野草を摘んでサラダにして飢えを凌いでいたというほど、深刻な食糧不足が続いていた頃なので。劇中では昭和２２年の食糧事情もシラミに悩まされることも進駐軍の犯罪とかも触れられていませんが、それは娯楽作品のノイズになると監督が判断したのでしょう。それにしても、「シン」でも「マイゴジ」でもつくづく思うのは……「人類は永久に伊福部昭に勝てない」ということ。これ以上の映画音楽は、地球上には存在しない。伊福部メロディは、日本映画界の至宝ですね。《授賞式について》「ゴジラ-1.0」 が米アカデミー賞・視覚効果賞を受賞して、山崎貴監督が受賞の挨拶で最後に昨年２０２３年に亡くなった阿部秀司プロデューサーに向けて「We did it（僕らはやりましたよ）」と報告しました。これは、１９６２年の東宝ＳＦスペクタクル映画「妖星ゴラス」で南極計画が成功して地球が救われた時に、本多監督が「こういう時、アメリカでは何て言うの？」とアメリカ人俳優に尋ねたところ、「We did it（我々は成し遂げた）」と教えられたので、それを登場人物の技師の台詞として採用したのだそうです。アカデミー賞の大舞台で山崎監督がこの台詞を使ってくれて、東宝特撮のファンとして本当に嬉しい限り。本多猪四郎監督も円谷英二特技監督も田中友幸ブロデューサーも伊福部昭先生も、今度の受賞を雲の上から喜んでくれているでしょう。（この部分は「ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK vol.19 妖星ゴラス/宇宙大怪獣ドゴラ」の私のレビューの内容とダブってます）《特典ディスクについて》（ネタバレ有り有り）本編メイキングが１時間５分。ＶＦＸメイキングが１９分。読売テレビ系で昨年の１０月３０日に放映された公開記念特番「映画『ゴジラ-1.0』公開記念特番 Behind the scenes -No.30-ト云フモノ」が、２２分。どれも必見です。劇中で、ずっと不安げだった敷島の顔が典子の「死」を境にして戦士の顔つきに変貌するので、これは時系列に沿って順撮りしたのかな……と思っていたら、とんでもハップン（昭和二十年代の流行語）。撮影の一日目は敷島家のバラックに彼が帰還する場面だけど、二日目は何と、ラスト近くのゴジラを仕留めて雪風から敷島が下りて明子を抱いた澄子姉さんが駆け寄る場面でした。これが緑山スタジオの野外でグリーンバック撮影というのは、シャレなのか？こんなに順番がバラパラで撮ってるのに、敷島の感情の変化をキッチリ演じていた神木くん、凄いね。しかし、敷島家も闇市も、スタジオの屋内撮影だったとは……オープンセットだとばかり思ってた。有名な地獄の海上ロケで、精根尽き果てた山崎監督が、船の甲板にへたりこんで呆然と空を見上げているカットもあります（笑）。桟橋で神木くんたちに「（バテているので）監督はＯＫ出すのが、いつもより早かった」とからかわれる場面も、面白い。あと、ゴジラの熱線による核爆発の衝撃波で、敷島を突き飛ばした典子が吹っ飛ばされる場面、「あー、ハイハイ、どうせ、ＣＧＩね」と思っていたら……あの場面、本当に浜辺さんがワイヤーに吊られて数メートルも飛ばされとるんですわ。準備中に怯えまくっている浜辺さんがお気の毒、１回でＯＫが出て何よりでした。あと、ゴジラに咥えられた列車から落ちる場面はスタジオの撮影ですが、浜辺さん、ワイヤー付きとはいえ、けっこう高い位置から落とされてる。川間ドッグで、高い位置のクレーンから典子が水面（外堀川）に落ちる場面は、スタントの藤田啓子さん。その後、浜辺さん本人も水面から顔を出すカットのために、水に飛びこんで「しょっぺぇぇー」と言って、スタッフの笑いを呼ぶ。あと、鹿島の格納庫の場面ですが……震電が予想以上にデカくて吉岡秀隆さんが驚いてますが、山崎監督が、作業台の上の戦時中の工作機器？が段ボール製だという事実を暴露。どう見ても金属製にしか見えない、美術のスタッフ、すげえ。キャメラに写るかどうかわからないものまで、精密に作りこんでいることがわかりました。さすが、第47回日本アカデミー賞最優秀美術賞受賞の上條安里さんです。ＶＦＸメイキングも、見所満載。白組のＶＦＸディレクターの渋谷紀世子さんによれば、下総運動場でグリーンバック撮影した銀座の群衆が逃げる場面は二百人以上のエキストラを集めたそうですが、足りないのでＶＦＸで足しているそうです。色々な場面の製作過程が見られるのは良いんだけど、欲を言えば、レイヤーというのかな、効果画像を重ねていく速度がパッパッパッと速くて、もう少し一枚一枚じっくり見せてほしかった。三番目の公開特番は、私はテレビで見てなかったので、楽しく視聴させてもらいました。山崎監督と神木くん、浜辺さんの鼎談で番組が進むのですが、浜辺さんの「あー、ふんふん」という相づちが可愛い。しかし、本年２月１６日にYouTubeにアップされた６分の「『ゴジラ-1.0』VFXメイキング＜大ヒット上映中！＞」が、収録されていないのが寂しいですね。まあ、現時点ではYouTubeで見ることが出来ますが。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で三度も「マイゴジ」の特集が組まれて、三度目は山崎監督が生出演してますが、これも収録されていない（テレ東BIZで見られるらしいが…）。「ネットで探せば見られるよ」というご意見もあるでしょうが……我々は「映像を物理的に所有したい」から安くないお金を払っているわけでね。可能な限り、関係映像は収録していただきたいのですよ、本当に。長くなったので、特典ディスクの前半のレビューはここまで。結論として、メイキングは見応えがあるので、ブルーレイ版でもＤＶＤ版でも、お財布に余裕があったら特典ディスク付きを購入した方が良いと思いますね。《再び「ゴジラー1.0／C」(モノクロ映像版) のこと》YouTubeで昭和のモノクロ映画の４Ｋリマスター版の予告編を見たり、福田純監督のデビュー作のモノクロ映画「恐るべき火遊び」（１９５９年）のＤＶＤソフトなどをチェックしてみたのですが、やはり、私には「マイゴジ」モノクロ版はグレー部分が潰れ気味に見えます。しかし、他のレビュアーの方々は画質を褒めているようなので、問題なのはうちの機器のせいかもしれません。なので、これからモノクロ版を購入しようという方は、念のために、アマプラかYouTubeで予告編を見て画質画調を確認してから決めた方が良いと思いますね。特典ディスクの後半を視聴したら、また追記します。
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