「ウマ娘」リリースまでの軟着陸っぷりを時系列で

今や押しも押されもせぬ超覇権ゲームとなったウマ娘

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ウマ娘、さすがにここまでの超絶覇権ゲームとなるとは思っていませんでしたね。テレビアニメ1期目が佳作レベルのデキっぽくはあるらしく、そこそこ「史実」へのリスペクトがなされているコンテンツ……という評判は目にするも、このタイトルの「これまで」を考えるとやや微妙な気持ちにならないわけもなく……。「ゲームも面白いが、キャラが魅力的」「ちゃんと元ネタとなったキャラクターを描いている」「元ネタへのリスペクトを感じる細かい設定」今やこういった意見を見ない日がない、現実の競馬のスターホースを真面目に描き、リスペクトを欠かさず、魅力的に仕上がっている「ウマ娘」の世界。しかし、過去に起きている「ブエナビスタと思われるCV:水瀬いのりのキャラが断りもなく消えて、その説明も顛末も明らかになっていない」という「黒歴史」が存在し、タイトルの発表からゲームアプリのリリースまでは約5年がかかっている。「ウマ娘」のリリースまでに何があったのか、時系列で追ってみたい。

タイトルの発表(2016年3月26日)

まず、本作が公表されたのは2016年3月26日のAnime Japanにて。

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キャラクターの容姿と、キャストと、プロモーションビデオがAnimeJapanのCygames(以下、サイゲ)のステージで発表されている。

……そう、後知恵ではすぐに気がつく通り「キャラクターの名前」がこの時点では公表されていないのである。

ここで紹介した18頭はいずれも名馬揃い。獲得賞金総額は151億円にもなるとのことだが、具体的にどんな馬が登場するのかはまだ明かされていない。

キナ臭い、実にキナ臭い。獲得賞金総額が計算できるということは全キャラのモチーフとなる競走馬は確定しているはず。キャラクターデザインの制作に元ネタが不必要なわけがない。キャラデザが決まっていて、キャストも決まっていて、PVも作成して、競馬ファンへの最大の訴求となる馬の名前を出さない理由なんて思いつかない。つまり、明かせない理由がこの時点で既に存在していたのである。この舞台での発表と、競走馬の各種権利者への根回しが板挟みになっていた……みたいな状況は推察される。しかしこの日、本作は公表に踏み切られた。

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当初のPVを見ても、走る動きよりもダンスの動きを魅力的に見せる印象となっていて、本筋は「競走」ではなく「ライブ」なのではないかとも思える。この頃は人数と動かし方が現実のアイドルに近いような。ゲーム版で話題となっている、スパートの時の表情の大きな変化が見える。

マチ★アソビ vol.16 ステージイベント(2016年5月4日)

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サイゲームスのコミックアプリ“サイコミ”にて『ハルウララがんばる』というマンガが展開されること以外は、まだプロジェクトの全貌は明らかになっていない

発表から1ヶ月以上たっても「何が行われるか?」が具体的ではなかったが、PVとサイゲがゲーム会社であることから、何となくゲームが制作されてアプリなどで提供されるのでは……?くらいの淡い理解がなされていた(ような気がする)。このイベントが本作リリースまでの軟着陸っぷりのキーポイントとなるのは、ここで「アイマス育ての親」とも評される石原章弘氏の目撃情報があり、キャストに何かを指示していていたというツイートがある、ということだ。
石原氏が長年携わってきた「アイマス」シリーズでは2015年9月に「デレステ」がリリースされ、石原氏はその4ヶ月後の2016年1月にバンナムを退職していた。その人が、本作ウマ娘のステージイベントに裏方として来ていて、関わっているのではないかと目されていた。
石原氏の動向については、この後に明らかになる。
ちなみに、この時点でもキャラクター名は明らかになっていない。

Cygames NEXT 2016(2016年8月21日)

「Cygames NEXT 2016」 新情報多数の『グラブル』から『ウマ娘』の熱狂ライブまで新展開続々発表 | インサイド

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石原氏は本作ウマ娘のコンテンツプロデューサーであることがここで判明する。

ここで、ついにメディア展開が発表に……!

また、ランティスから、2016年11月30日より6ヵ月連続でCDが発売されることも発表。予想を軸にしたCD連動型の企画や、イベントなども開催予定とのこと。

あれっ? ゲームは? Cygamesのコンテンツなのにゲームの情報がサッパリない。PVではキャラクターたちが競走していたのに……ゲームは? そう、公表から約半年、プロジェクトは既に暗礁に乗り上げていたのである。

そして、記事をよーく見た聡明なウマ娘ファンが気づくのである。

「あれっ、ブエナビスタと思われていた CV:水瀬いのり のキャラがいない……?」

また、竹達彩奈や上坂すみれなど、当時既にアイドル的人気の高い声優も起用から外れている。この件は色々憶測を呼ぶことになり、今なお「馬主など権利者の影響が大きいので取り扱い注意」という本作を語る上での必須事項へとつながっていくのである。過去の名馬が勢揃いしている中で不自然なほど出てこない三冠馬のディープインパクト、オルフェーヴルなどから「ノーザンファーム生産馬はNGなのでは」という憶測につながる(後にサトノダイヤモンドが出ているため、厳密にはそうではなかった)

この時点で何らかの表に出せないキナ臭い裏事情があることが見え見えで、まあどう考えても踏んではいけない虎の尾をどこかで踏んでいるよねって、そりゃぁ皆さん思いますよね。

ここで閑話休題、競走馬の権利について

ウマ娘関連でよく言われる「馬主が権利を持っているが、ウマ娘に馬名の使用許可を出していない」についての話をしておこう。

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最高裁は、次のように述べて、上記東京高裁の結論同様、物のパブリシティ権を否定し、ゲーム会社の損害賠償責任を否定しました。

上記の記事の通り、競走馬の(物の)パブリシティ権は最高裁によって否定されているのが最新の判例で、これを根拠にブエナビスタ(CV:水瀬いのり)を作中に出すこともできただろう。「ディープインパクト、強さの秘密」というタイトルでディープインパクトの強さの秘密を記した本を書き、出版したことでそれを馬主によって販売差し止めされたり馬名使用料を請求されるいわれなどないわけで、なるほど当然と言えよう。ただ、嫌だと言う人の意向を無視したところで「あの会社は仁義を通さない」という評判が立つのはCygames社としても良くないということか(サトノ冠の里見治さんは同じエンターテイメント業界のセガサミーの会長だし)、出てない馬主の馬はキレイに本作ウマ娘に出ていない。

このあたりの関係者についての配慮として、二次創作に関しての公式からお願いがある。

https://umamusume.jp/news/detail.php?id=news-0106

本作品には実在する競走馬をモチーフとしたキャラクターが登場しており、許諾をいただいて馬名をお借りしている馬主のみなさまを含め、たくさんの方の協力により実現している作品です。
モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現は行わないようご配慮くださいますようお願いいたします。

ウマ娘プロジェクトは、名馬たちの尊厳を損なわないために、今後も皆さまとともに競走馬やその活躍を応援してまいります。

事実上のエ■禁止みたいな言われ方をするが、総合的に「ナマモノなんだから、わかってるよね」という釘の刺し方で、これについては多くの人にご理解いただけているようで、公式の良い仕事と言えるだろう(ゴールドシップのキャラ設定、主に言動について「モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現」ではないというその自信はなんなんだ、というツッコミは置いておいて)

この二次創作に関することで1つ付け加えたいとすれば、上記判例は「あくまで競馬ゲームに登場する馬名と設定などを使用する場合において」のものであり、現時点で既に制作された、あるいはこれから制作されるすべての二次創作物に関して権利の侵害を認めない、ということではないということに御留意いただきたい。つまり上記判例とは違った、それこそ難癖と思われるような論理で訴えを起こされ、作者が法廷に呼ばれたり、また権利の侵害が認定されたりしないことを保証するものではない。


……ここまでで前半終了。後半は、競走馬の権利関係だけではない着陸不能な低空飛行について。

楽曲リリースでウマ娘プロジェクトは加速するのか?

前出のサイゲのイベントステージにて発表された楽曲のリリースを控える中、ハルウララのコミカライズは9月11日をもって連載が終了。明確に動いているのは楽曲関連だけという中、満を持してついに楽曲のリリースを迎えるのであるが……

なんと、それが大コケする。

全然売れなかった。どれくらい売れなかったかというと、1枚目が初動3桁・観測可能な累計が1000ちょっと。2枚目~に至っては観測可能な限り1000売れない作品が続く。

 アニソンCD売り上げデータ保管庫: ウマ娘 プリティーダービー(非公式データ)

比べちゃいけないのはわかっているが、(ウマ娘はスマホゲームをリリースしていないが)同じスマホゲームがスタートの「あんさんぶるスターズ!」だと初動で万overするものである。ウマ娘はスマホゲームもリリースされていないので、40分の1くらいしか動かないのも当たり前といえば当たり前なのであるが。とにかく、この「STARTING GATE」シリーズがメチャクチャ売れなかった。同じCygamesでも「グラブル」のキャラが歌う楽曲は初動で1万売れるものもあるくらいなのに、ウマ娘はとにかく売れなかった。少しだけ売れるようになって初動で1000ちょっと……とかそういうレベル。いや、プロジェクトの認知度や他のメディアがないと……という擁護もあるかと思うが、なんと、後述のTVアニメ1期が始まって終わって、そこそこの評価を得た後も、また楽曲展開は初動で1000行くと「おっ売れたな?」となるくらい売れなかった。TVアニメのOP主題歌とかだと初動で2000くらいは出たんだけれど、そういうの以外はピクリとも売れる気配がなく、完全なる大コケに終わった。

何でや……ライブステージで衣装付きで声優に歌わせて披露、元ネタはジャンルとして不動の競馬の超名馬、天下のサイゲとランティスが組んで、仕掛け人は「アイマス」の石原氏……流行らんわけないだろ……

盤石の布陣で売れなかった理由はわからない(わかりません)が、当時の「競馬ファン側」の意見として多く目にしたのは(観測範囲の偏りもあるかもしれないけれど)、元ネタへの経緯を欠いている、という指摘。

  1. 馬主サイドと折り合いが悪いのか、理由も明かされないまま消去されるキャラや起用から外れる人気声優の存在
  2. ゲームもアニメも制作発表すらないのに、馬の名前だけ使って曲作って声優に歌わせてライブ・アイドル商売を始める敷居のまたぎ方
  3. 挙げ句に馬名名義で歌わせている曲の歌詞が元ネタと合っていない

3番目については実例を挙げよう。

2016年11月30日発売「STARTING GATE 01」より、トウカイテイオー(Machico)名義「恋はダービー☆」の歌詞の冒頭より。

まっすぐな目で こっち見ないで
かわせない 逃げれない
こんな時 どうすんの?
恋の経験値 ギミギミギミ!

はい……。トウカイテイオーといえば、無敗で皐月賞ダービーを制し二冠を達成した名馬ですね。怪我で三冠達成を逃した後に、復帰してJCを勝利、その後また怪我で長期休養の後に1年振りの出走となった有馬記念で劇的な勝利。「かわせない」で悩むことはなかったし「逃げれない」こともなかった馬ですね。作詞者の方、ウィキペディアくらいは見ましたか? この歌詞でOKした責任者の方、競馬ってご存知ですか?

とまあ、一番理解不能な例を挙げたけれど、その後もサイレンススズカは「一人旅」「マイペース」あたりがモチーフ、マルゼンスキーは「スーパーカー」がモチーフと、ギリギリそんなもんかと思える歌詞もあれば、正直キャラソンとして理解できないものも多く、後に出てくる「競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現」についての言及が「どの口で言うのか」と評価されるのも宜なるかなというくらい、とにかく「元ネタへの敬意」が感じられなかった。今でも蛇蝎のごとく嫌う競馬ファンがいるのは、この頃の不義理が大きいことは、ゲームやアニメを楽しむ人々にも御理解いただきたい。その後どれだけ良質なコンテンツが生み出されようとここで一発レッド、二度と見向きも耳を傾けもしない胸糞の悪いコンテンツの箱に入れる人がそれなりの数出たことは、残念ながら当然と言える。

AnimeJapan 2017にてTVアニメとゲームの制作が発表される(2017年3月25日)

1年間暗礁の上で売れない歌を歌い続けてきたウマ娘だったが、プロジェクトの公表からちょうど1年、ついに転機が訪れる。

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3月25日に“AnimeJapan 2017”のCygamesブースで開催されたウマ娘スペシャルステージ“『ウマ娘 プリティーダービー』大発表会!!”で、新作ゲームの第1弾トレーラームービーやアニメ化、コミカライズ、ライブイベントなど、最新メディアミックス情報が発表されました。

テレビアニメ化とゲーム制作が発表となり、多少なりとも「進める気」が明らかになった。

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当初のPVから少し変化が感じられる。ライブシーンは「アイマス」風、かつ当初版にあったスパート時の表情の変化が抑えられている。このあたりが石原氏の目に見える影響なのだろうか。

この直後の石原氏へのインタビュー記事。
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ライブイベントに関しては、スタートアップイベントと銘打つように、声優と制作スタッフ、トレーナー候補の皆さんで“打ち入り”をするつもりです。ゲームのステージは“ショーレビュー”的な考えなのですが、2017年7月1日の舞浜アンフィシアターでのイベントは、ただ歌を歌って終わりということではなく、タイトルどおり“特別な週末”になるようなイベント感がある内容にするつもりです。

既に楽曲展開が大苦戦し、TVアニメはこの1年後に放映開始、ゲームは4年後に配信開始という「今」から見ると大変味わい深い発言である。記事の内容も、ゲームではキャラを育てて走らせることについての話とライブについての話、後者が2倍くらいある上に実際リリースされた版で好評のシナリオや継承システムについては一切触れていない。もちろん話せないことも多かったのだろうが「この記事とは何だったのだ」感が凄い。

TVアニメ版「ウマ娘」放映開始(2018年4月2日)

2018年4月2日、ついに本作「ウマ娘」のTVアニメが放映開始となる。プロジェクトの公表からちょうど2年程度。17年の7月にはゲームのリリースが18年になるという発表があり、事前登録開始は2018年3月25日からとなっていた。

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TVアニメのシリーズ構成は石原氏と、杉浦理史氏の連名。決して石原氏が一人でシリーズ構成を手掛けたわけではない。

さて、コケにコケた楽曲展開、幻のゲームとなりつつあるゲームアプリとネタ性が先行し名高くなってきたウマ娘だが、このアニメ版がそこそこ好評のうちに幕を閉じた。史実に脚色を施したというシナリオや、それを通じて伝わる競馬という競技の面白さやキャラクターなどが特に評価されていたように観測している(筆者は未視聴)。大人気覇権アニメとまではいかずとも、ウケるのはこの路線なのではないか……?という手応えをウマ娘プロジェクトの中の人が感じ取ったのか、このTVアニメの放映あたりを境に、ウマ娘プロジェクトの方針転換がある。公表初期から始まる楽曲・ライブ・声優という軸から、競技(スポ根)・シナリオ・キャラクターという軸の押し出しが感じられるようになる。
TVアニメ放映後は新たな楽曲制作による商品リリースはなし。会場を借りてのライブイベントも、TVアニメ放映前から決まっていたであろう2018年10月14日の2nd EVENTを最後に3回目以降は発表なし(2020年はコロナもあったが)

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石原氏のコンテンツプロデューサー退任(サイゲ退職)と、更に加速するスポ根路線

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もちろん、実際行動に起こしてからは問題にぶち当たることもあります。ただ、リスク回避のために石橋を叩いて叩いて……そして壊すという企業が多いなか、いきなり躊躇なく踏み出すことができるのはクリエイターにとっては最高の環境といえます。

2018年6月の記事でこう仰っていた石原氏は、2019年4月、ウマ娘プロジェクト公表から3年後、ゲームアプリのリリースを待たずしてCygamesを退職し、ウマ娘のコンテンツプロデューサーを退任となる。

https://umamusume.jp/news/detail.php?id=news-0124

この時点で結果的に3年もの時間を浪費したことになったウマ娘プロジェクト。(時系列からもわかるが、立ち上げたわけではなく)「預かった」ウマ娘のプロジェクトでコンテンツプロデューサーとして大きい功績を残せていたのであれば、道半ばで役職を降りることもなかっただろう。ゲームアプリがリリースされ、それが大好評である今から見たら、より「2年前にプロデューサーを退任となって会社も退職した人のゲームが、当初から路線変更し大好評」であることが色濃く浮き上がってしまっている。その後、グッドスマイルカンパニーで仕事をしているという記事はあったが、何か具体的な実績を挙げているという話は耳にしていない。

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過去に制作した他社のゲームについてインタビューを受けていたようではあるが……。

決定的な転換点転換点の通過がハッキリした「シンデレラグレイ」の制作

石原氏退任から1年。「シンデレラグレイ」が週刊ヤングジャンプ誌上で連載が始まり、この作品が好評で、現在(2021年3月16日時点)でも既に刊行されている1,2巻とも手に入りづらい状態となっている。試し読みなどをしていただければわかる通り、この「シンデレラグレイ」は紛れもないスポ根モノであり、あと漫画が上手い。TVアニメ版を踏まえて……なのか、満を持しての覇権コンテンツがついにウマ娘に登場したのである。

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オグリキャップの育成・笠松時代からスタートし、スポ根モノの基本中の基本、無名の超才能が努力によってスターダムにのし上がる様を描く。ハッキリ言って、これまでのク○プロジェクトは何だったんだってくらい面白い。トウカイテイオーに「逃げれない」とか歌わせてたプロジェクトから出てきた作品かこれ、という本格的なマジモノ。なんだったら、他は毛嫌いしてもいいからこれだけ読んでくれ。2021年まで来て正統派スポ根が大当たりし、そして……

ゲームアプリがついにリリース

2021年2月24日、ついについについに、プロジェクト公表から5年弱、ウマ娘のゲームアプリはAndroid版、iOS版同時にリリースとなった。その評判については、この記事をここまで読んだ方は御存知の通り。記事執筆時点(3月16日)でソーシャルメディア上におけるスマホアプリゲームぶっちぎりの超覇権ゲームとなっている。「マスターも、プロデューサーも、提督も競馬に行ったきり帰ってこない」という「ネタ妬み」が遥か後方に置かれる盛況ぶりである。

長かった。この記事も長くなった。お疲れさまでした。もう少しだけ続くんじゃ。

最後に、この「当初の不義理も(ある程度)吹き飛ばす大ヒットゲーム」が生まれたキーポイントについて、私見を書いておきたい。それは、元ネタである競馬のスターホースたちをぞんざいに扱い、しつこい物言いとはなるが、トウカイテイオーに「逃げれない」と歌わせるような当時の方針が受け入れられなかったことにあるのではないかと思う。ゲームもアニメも具体的な制作発表がない、できない段階でそのような楽曲展開を先行させ、キャストをステージに上げ歌って踊らせ、「デレステ」のようなライブステージを売りにするようなゲームでは売れない、コンテンツとして成立しないと制作サイドに判断させたことで、ゲーム(やアニメも?)の制作方針が変わり、開発期間は長期化したがゲーム史に名を残すようなゲームが生まれたのではないかと考えている。蛇蝎のごとく「ウマ娘」を嫌っていた人々もそれに貢献してしまっている……と書くと嫌味や皮肉に聞こえてしまうかもしれないが、少なくとも「お気軽なアイドルゲーム、レースもちょっとあるよ」という内容よりは、マシに思えるのではないか(覇権ゲームになって解釈違いが大量発生するほうが嫌、という御意見ももちろんあるかと)

当然、何らかの虎の尾を踏み抜いた形跡があるのは明らかで、それについてはいつか精算する時が来るのか、または十字架を抱えたまま終了まで行くのかはわからないが、横たわる黒歴史として刺さり続ける。

「ゲームのスクショを見たけど、キャラがプレイヤーに気に入られようと媚び売ったり奇行に走らされているのを見ると残念な気持ちになる」みたいな感想をお持ちの方も「シンデレラグレイ」はそういうのないし漫画も上手いし面白いから、是々非々で先入観なしに、これだけ本当にオススメです。何よりも、最初にこれに出会いたかった。今は手に入らないけどな!(オチ)

以下、追記など(3月17日以降に編集)

反論(批判)記事

『ウマ娘』立て直しの功労者として及川啓監督、杉浦理史氏、そして伊藤隼之介Pの名を刻もう - Junchangchangの日記

反論・批判というパッションで書かれたものだけれど、個人的には色々補足いただいてありがたかった記事。お礼などは別記事にて。

それを受けての訂正

見出しを変更『決定的な転換点「シンデレラグレイ」の制作』→『転換点の通過がハッキリした「シンデレラグレイ」の制作』
本文にはTVアニメ1期の放映についての言及で「このTVアニメの放映あたりを境に、ウマ娘プロジェクトの方針転換がある」と記載してあるため、書き方が悪かったシンデレラグレイの開始についての見出しを変更。内容としては引き続き「TVアニメ1期から方針転換が見える」