本人の嗜好で先発品を希望する際の特別な料金について(2024年10月)
2024年10月1日から特別な理由もなく、先発品を希望する場合、後発品との差額の4分の1に当たる料金を別途徴収されるルールに変更されている。これは十分に周知されておらず、急に院外薬局で別料金を請求された時、びっくりする人もいるのではないかと思う。以下、その簡単な説明が記載されている。これはペナルティのごとき料金なので更に消費税も徴収されるようである。
以下は上記内容が記載された厚生労働省のホームページ。
この差額が生じる条件だが、医師が必要と認める場合は徴収されない。例えばてんかんの患者さんでジェネリックに変更した場合、血中濃度が変化して発作が起こるようなケースである。
てんかんの患者さんがこのルールのために後発品に変更し、その結果、長期間起きなかった発作が起こった場合、自動車免許もしばらく使えなくなるし、人によればそのために仕事もできなくなるので酷いことになる。特に地方では影響が大きい。
また、稀に抗精神病薬をジェネリックに変更した際、幻覚妄想が悪化する人が実際にいる。そのようなケースであれば医師が先発品継続の必要性を認めるため徴収されない。
複雑な点は、精神科では自立支援法による医療費の援助があることだと思う。今回のペナルティは、自立支援法外で行われるもので、月額の支払い上限が例えば2500円の人であっても、それを超えて徴収される。
更に複雑なのは、その徴収は保険点数で実施されることである。ある患者さんは、処方内に唯一先発品のリーマスが処方されていた。それも1日、200mg1錠だけで、おそらく先発品との1日の25%の差額は僅かだが、切り上げで1日1点となり、これは10円に相当するため、14日分でペナルティ徴収分が140円となった。これは安価なリーマス200mg1錠(先発品、13.5円、ジェネリック6円くらい)に比べると大きな金額だと思う。
今回の対象となる薬だが、市場でジェネリックが50%以上シェアがあり、むしろジェネリックを使う方が一般的になっている薬が対象となっている。元々、ジェネリックさえないコンサータなどは関係がない。またロキソニンはなぜか対象になっていない。
興味深いのは、生活保護の人のペナルティの扱いである。生活保護はジェネリック処方が義務付けられているので、徴収するケースはあり得ないと言う風に記載されている。以下の通り。
医師が先発品の必要性を認めるか、調剤薬局に在庫がない以外は先発品は処方できない。生活保護の患者さんの嗜好であれば許されないが、上記に挙げた血中濃度が不安定になりてんかん発作が起こるとか、ジェネリックだとアレルギーが生じるなどの特殊事例は、医師が必要と認めるケースなのでペナルティは徴収されないのである。
個人的に不思議に思うのは、現在のように、ジェネリックの供給が不安定で、出荷停止が相次いでいるタイミングでこのようなルール変更が実施されたことである。
調剤薬局に在庫がない時は、ペナルティは生じないルールである。と言うことは、同じ処方でもペナルティを徴収される日とそうでない日が生じうる。これは混乱を招くと思う。
また、医師が必要性を認めるケースも曖昧になると思うし、なんだかズブズブというか、患者さんへの説明やペナルティ金額の細かい計算など、現場の仕事も著しく増えるので、いったい意味あるのか?というルール変更だと思う。
そもそも、うちの病院では中毒疹を恐れて、院内処方ではラミクタールしか使っていない。従って院外でも躁うつ病の人は、ラモトリギンの人は少なくラミクタールが主体に処方されている。ところがラミクタールは高価な向精神薬なので、このルールのペナルティも比較的大きく、300mg〜400mgを突然ジェネリックに変更して、劇的にスティーブンス・ジョンソン症候群が生じたら大事件である。これだけは心配している。
なんとなくこの用量でも数年単位で長期間服薬している人は中毒疹は起こらないように思うし、増量中ならともかく、医師が先発品が必要と認めるほどではないと思う。
今回のペナルティは、現場の仕事も増やすし、医師の心配も増やすルール変更なのであった。
参考
上記の記事は不正確な部分があり以下の記事も参照してください。