職業弁護士であったはずの橋下大阪府知事が、またもとんでもないことを言い始めました。共同通信によると、彼は3日、高校の授業料無償化で朝鮮学校を除外する是非をめぐり、「北朝鮮は暴力団と同じ不法な団体で(学校との)関連性を認定しなければならない」と述べ、近く府内の朝鮮学校を視察する考えを示した。橋下氏は「拉致という不法行為を行っている団体と関係する施設とは、府はお付き合いしない」と明言。「府のお金がほしいなら、府民が納得する振る舞いをして」と述べたといいます。
MSN産経はわが意を得たりとばかりにより具体的に報道しています。それによると橋下知事は「拉致問題は北朝鮮が行った不法行為と(日本)政府も認定している。北朝鮮と朝鮮総連は深い関係にある。朝鮮総連と朝鮮学校が結びついているのなら、税金は投入できない」ということです。
橋下知事は教育と政治を分けて考えるべきではないかとの指摘について、「学校経営に暴力団関係者がかかわっていたら税金を投入できないのは府の規則でも決まっている。朝鮮学校と朝鮮総連に関係があるなら、この規則に当てはまる」と述べた。朝鮮学校を視察し、授業実態などを検証したうえで最終判断するといいます。
また、国が朝鮮学校を支援対象にすると決めた場合の対応については「(無償化の)一部は府税も入っている。府税分については府独自で対応することはできる」との見解を示したといいます。
橋下知事の言質は、品性を欠き、差別的であり、果たして彼が弁護士であったのか疑いたくさせるものです。大阪府の知事としての見識と良識を欠いた発言です。2チャンネルの北朝鮮バッシング書き込みを読んでいるようです。いや次の点から糞味噌で溢れている2チャンネルにふさわしい言質だともいえるでしょう。
なので取り上げるかどうか迷ったのですが、彼は以前にもこうした発言をして物議をかもしたことがあり、
http://ameblo.jp/khbong/entry-10239587630.html
朝鮮高校生が受けた心の傷や、在日コリアンの怒りを思うと取り上げないわけにも行かないと思い、低質な発言に貴重な時間を割くことになりました。
彼の発言はおよそ糞も味噌もごっちゃ煮にした支離滅裂なものです。彼は北朝鮮を「暴力団」と決めつけ、その海外公民団体である朝鮮総連を「暴力団支部」でもあるかのように扱い、その朝鮮総連と朝鮮高校が」関係が有るのなら「学校経営に暴力団関係者がかかわっていたら税金を投入できないのは府の規則でも決まっている」のでそれに従って(無償化対象かどうかを)決定するというのです。
もちろん彼が北朝鮮に行ったことなどなく、北朝鮮関連の知識も語れるほどのものではないでしょう。それは多分に幽霊を見たこともない人間が幽霊について語っているのと同じ類のものです。彼の発言の出発点はここにあります。したがって支離滅裂になるしかありません。悲劇は彼自身がそれを分かっていないことにあります。
この奇怪なレトリックは、持ち合わせのない「知識」を総動員してまず仮定を事実と決め付け、それに従って我田引水的に結論を引き出すというもので、検察が「冤罪」を生むもっとも典型的な手法です。弁護士を生業としてきた彼がその手を使うとは驚きです。
また無償化には府税も使われるが、その「府税分については独自で対応することはできる」と言っていますが、それは地方自治体の越権行為になる可能性もあります。それが通じれば例えば大阪市にもその権利はあるわけで、府政が切り刻まれることになりかねません。府政どころか国政が切り刻まればらばらになる可能性さえ生まれてきます。
こんなことが許されては実に勝手気ままな府政になってしまうでしょう。彼のこうした発言を彼独特のパフォーマンスだと言う人もいます。ジャーナリストの粟野仁雄氏は、彼を取材した在阪の放送記者が「ぼったくり、文部省は馬鹿、等発言が刺激的で全国ニュースになる」と彼の人気取りの手法を暴露していると言います。しかし人気取りのパフォーマンスに利用され、犠牲になったのでは朝鮮高校や在日コリアンが怒るのも当然でしょう。
また大阪府庁担当の全国紙記者は、「情熱はあるが情がない。地道に努力していた人の苦労をなんとも思わず、不要と思えばバンバン切る。反対者は徹底的にやり込める。メール魔なのでメールで攻撃する。基本的に役人を信用していない。壊すことは得意だが、建設はどうか。パラマウントのようなのをやりたい、とか幼稚な発想が多いんです」と評していると言います。彼は思いつきで提案する面は否めない。「小学校の校庭をすべて芝生に」と提言したが、公園の芝等は「養生中につき立ち入り禁止」ばかりだと皮肉っています。
粟野仁雄氏は「結局、彼は行政手腕が評価されているのではなく、いまも弁護士資格を持つタレントへの人気が評価なんですよ」と皮肉る向きもあると伝えています(リベラルタイム2009年8月号 特集「全国知事」一斉点検)。
それよりも弁護士である彼が、国際人権規約や、日本国憲法、人権法、子どもの権利条約などについてまったく知らないことの方が驚きです。(つづく)