オリジナルとコピーの“文化闘争” --- 長谷川 良

中国が「コピー天国」であることは良く知られている。世界のブランド商品をコピーした中国製商品は到るところで安価で売られている。例えば、グッチのバックの偽造品は本物と区別が難しいこともあって、ブランド品の好きな世界の女性たちの間で人気を呼んでいるという。
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▲オーストリアのハルシュタット湖畔の風景(オリジナル)2015年11月5日、撮影

ただし、大国建設という「中国の夢」を抱く習近平国家主席は「コピー天国」という不名誉なタイトルを返上するために知的所有権の堅持を呼びかける一方、コピー商品の追放に乗り出している。北京発の共同通信によると、上海で来春、中国本土初のディズニ―ランドが開園されるが、それに先駆け、中国国家工商行政管理総局は5日、ディズ二―ランド関連のコピー商品追放のキャンペーンを実施すると発表したという。

ところで、中国人のコピー意欲は単に世界のブランド商品に留まってはいない。中国の企業が3年前、欧州の街並みをそのままコピーして中国国内で建設したのだ。中国都市計画者に街並みをコピーされたのは当方が住むアルプスの小国オーストリアのオーバーエスターライヒ州のハルシュタット湖畔の家並だ。そのニュースを聞いたオーストリア国民は、自国の自慢の景勝地が中国人に盗まれたような気分になったほどだ。当方も当時、中国人のコピーへの“限りない欲望”に改めて驚いた。

中国の企業は2012年6月、ハルシュタット湖畔の家並み、ホテル、教会、広場ばかりではなく、街の色彩までそのまま完全コピーし、高級分譲地として販売を始めたというのだ。

3Dプリンターや高品質コピー機の登場で世界はコピー時代に突入している。その時代の恩恵を最大限に享受しているのは中国だが、韓国聯合ニュースによると、韓国軍は先月から、3Dプリント技術を用いて航空機をはじめとする兵器の部品をコピー製作しているという。米テキサスの学生が3D(3次元)印刷機を利用してプラスチック製銃を製造したといった類の話はもはや日常茶飯事となった(「プラスチック製銃を製造した学生」2013年6月12日参考)。

もちろん、コピーの前にオリジナル(独創)が存在するから、オリジナルとそのコピーの間で知的所有権問題を含め、様々な紛争や人間模様が展開するのは当然かもしれない。コピー文化が市民権を獲得し、オリジナルの世界に侵入してきている。逆にいえば、コピーも文化性を帯びてきたのだ。

人間は昔から自分が気に入ったものや対象をコピーしたい欲望を持っている。文化はその人間のコピー能力を育てるプロセスともいえるわけだ。コピー文化の最先端は、分子や生体のクローン技術だろう。生命体のコピー技術だ。

ところで、友人が5日、ハルシュタットを訪問した。その際、撮影したハルシュタット湖畔の写真を当方に送信してきたので紹介する。オーストリアが誇るハルシュタット湖畔の風景の美しさは格別だ。中国企業家がハルシュタット湖畔に目をつけ、それを完全コピーしたのもある意味で頷ける。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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