デフレと円高を解決するためのとっておきのアイディア

藤沢 数希

FED(アメリカの中央銀行)がさらなる非伝統的な金融緩和に踏み込むかもしれないということで、最近はまたリフレ論争がインターネットで活発になってきた。筆者は、中央銀行というのは物価の安定を第一に考え受動的に金融政策を実行すればいいのであって、物価の安定を損なう大きなリスクや、将来の国民負担につながりかねないような非伝統的政策をやすやすと取るべきではないと考えている。そのような国民生活に大きな影響を与えうる政策を、選挙で選ばれてもいない中央銀行の官僚が実行するべきではないし、現在の法律では実行できないようになっている。また円の為替レートに関しても、安易な政府の介入に頼ることなく、民間企業の自発的な経営判断を尊重するべきだ。すなわち、円がファンダメンタルズより割高なら、海外の会社を買収したり、海外の資源を備蓄するチャンスなのだ。アメリカの5000億円の会社をよっつも買収すれば、合計で2兆円の円を売ってドルを買わなければいけないのだから、それだけで9月の為替介入と同じ規模の円安圧力が発生するのだ。


しかしながら、多くの経済評論家がデフレと円高こそが日本経済停滞の元凶であって、これさえ解決すれば日本経済はまた復活するといっている。筆者は必ずしもそういった安易な意見には同意しないが、デフレと円高を解決するアイディアをいっしょに考えることはやぶさかではない。そこで今日は、みっつほどインフレと円安を誘導するためのアイディアを議論したい。

1. 中国との尖閣諸島問題をお金で解決する

筆者は最近の尖閣諸島をめぐる中国との関係悪化には心を痛めている。中国はビジネスの大切なパートナーであるし、今後もますます重要になる。このように問題がこじれてしまったら、最後はお金で解決するしかないのではないか。そこで筆者はいっそのこと尖閣諸島一帯の海底資源も含めて、中国から全部買い取ってしまえばいいのではないかと思う。もともと日本の領土なのだから買い取るという表現は適切ではないかもしれない。その場合は、もういちゃもんを付けないという約束で「解決金」という形でお金を払えばいいのではないか。理不尽かもしれないが、日本では家賃を払わない住民に出て行ってもらうためにさらに引越し代などのお金を払ったり、全然仕事をしない社員に辞めてもらうために割増退職金を払ったり、家でワイドショーを見ながらゴロゴロして家事もしない主婦に離婚してもらうために多額の慰謝料を払ったりするので、それほど不自然な話でもなかろう。そこで、ここは話を円滑に進めるために相場よりも破格に高い金額を提案すればいい。例えば100兆円とか。中国も喜んで受け入れるだろう。

その100兆円はどこから調達するかというと国債を発行すればいいし、その国債は今なら民間の銀行にお金が余っているので、100兆円を10年の分割払いとして10兆円ずつ毎年国債を発行すればいいだろう。市中にだぶついた国債は日銀がすぐに吸収してくれる。それがめんどくさかったら、国会でちょっと議決して日銀に直接買い取って貰ってもいいし、政府紙幣を発行するという手もある。それだったら100兆円一括払いも可能だろう。

中国政府に渡った100兆円は、資産運用され他の資産に変わるのでそこで円が売られて円安にもなる。これを日銀が市場に放置すれば、今流行の非不胎化介入と同じ効果だ。第一次世界大戦後のドイツを思い出せば、かなりインフレの方も期待できるのではないか。

2. 北朝鮮の金ジョンウンに王様就任祝いとして一万円札の輪転機をプレゼント

新聞報道等によれば若干27歳の若きジョンウンが北朝鮮という王国を継承するようである。日本国政府としてもここは何かプレゼントを贈るべきではないか。そこで筆者は、日本円の輪転機をプレゼントしてみてはどうかと思う。これは外交上の機密事項ということで密約ということにして超法規的措置としたい。ちょうど米軍の核持ち込みを黙認したみたいに。

一部の経済学者によると、現在の日本経済というのは、モノに対してお金の量が少なすぎる状況で、日銀がお札を刷って空からばら蒔けば様々な問題は一気に解決するとのことだ。しかし日銀が空からお金をばら撒くことは、現在の法律ではできない。国会で議決すれば、巨額の定額給付金という形でできないこともないが、そのためにはこんな簡単な問題がわかっていない経済学者や、国会議員、それにいつも金融を引き締めてばかりでぜんぜんわかっていない日銀の白川総裁が国債をもっと買い取るように説得しなければいけない。それは骨の折れる仕事だし、国民のためにもならない。そこで外交上の機密ということにして、北朝鮮に輪転機をこっそりプレゼントするのである。

北朝鮮はスーパーノートと呼ばれる超精巧な米ドルを作るなど、その筋の技術に関しては世界的な評価を獲得している。そこに本物の輪転機をプレゼントすれば、必ず上手く運用してくれるに違いない。彼らが一万円札をどんどん刷ってくれれば、リフレ派の経済評論家のいうとおり、貨幣供給量が増えて、デフレも治り、円安に誘導できるのではないか。日本経済の夜明けがやってくるだろう。

3. 新たな埋蔵金として国債の利息支払をちょっとだけ待ってもらう

現在の日本国政府は毎年10兆円ほど国債の利息を支払っている。これは国家予算の10%程になり、毎年毎年増えている。老人の年金や農家の所得保障などの財源を作り出すのはますます困難になっている。しかしここでよく考えよう。日本の国債はほとんどが日本人が持っている。同じ日本人、仲間だ。だったら日本が困っているのなら、少しぐらいの利息ぐらいまけてくれてもいいではないか。リフレ派の経済学者も、諸外国と違い日本国債はほとんど日本人が保有しているのでギリシャのようなことは起きないといっている。そこである日突然、野田財務大臣と菅首相に記者会見を開いてもらって、深刻な顔して次のように一言いってもらうのである。

「社会保障のための財源を作るため、国の予算を圧迫している国債の利払いを一時的に停止します」

このサプライズで、筆者の肌感覚では1ドル200円ぐらいまでは簡単に円が暴落すると思う。待ちに待った円安だ。また輸入物価が高騰するので一気にインフレにもなるだろう。もし、あまりにも激しい円安やインフレになったら、また会見して、次のようにいってもらえばいいのである。

「利払いを停止するといいましたが、まだ決定したわけではありません。現在、内閣で鋭意検討中であります。為替市場をより注意深く見守っています」

これでちょっとはもどるかもしれない。こうやって上手く日本語表現を工夫すれば、物価上昇率が2,3%のマイルドなインフレが実現できるかもしれない。

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コメント

  1. yamachan54 より:

    すばらしい!
    どれもすぐに実行できるアイディアです。民主党ならこれくらいの大胆な改革を実行可能だと思います。
    どうして今まで誰もやってないんだろう?

  2. shuu0522 より:

    # yamachan54さん

    なぜ大胆なことをやらないのか?
    それはちゃんとリスクを計算するからです。
    コラムで面白おかしく書く分にはうまくいったケースだけですが、
    実際に実行するとなると失敗したケースも検討せねばなりません。
    100兆円提示してバカにするなと拒絶された場合、
    国内外からどのような対応を受けるのか?
    輪転機をプレゼントしたことがバレた場合どうなるのか?

    所詮はリアルに対策を実行する立場の発想ではなく、
    物書きの飯の種となる「ネタ」レベルでしかないのです。

  3. taquonoss より:

    この素晴らしい釣りですね。
    さすがです。

  4. 東京アックマン より:

    白川への痛烈な風刺ということだな。

    「日本国はじまって以来の、最低、最悪の日銀総裁白川さんよお、見ろよ、おまえ、馬と鹿といわれてんぜ。」

  5. mewmint より:

    惜しい!
    輪転機の進呈先を私にすれば完璧だ(^^b
    何でも買うぜ!国内で!!!

    まぁ、極端な話をすることで、相手の理論の破綻を導き出すというのはありだと思う。んが、経済ってさじ加減が微妙なので、どんな方法であっても、毒にも薬にもなることを考えると、こういう反論の仕方はナンセンスだと思うんですよね。

    デフレや円高を抑えるのは目的ではなく、手段以前の試験紙みたいなものでしかない。デフレならデフレの、円高なら円高の原因を緩和することで、処方するべきだという話なので、揚げ足取りのように「なら金をばら撒けば~w」という突っ込みはなしでしょ?

    デフレの原因は、不当な方法で低価格を実現している外国の製品の台頭による国内生産の疲弊と、若者の賃金を、老世代が貯蓄のために上前をはねている為だと考えています。無法者に正攻法で立ち向かえば、サービス残業や低賃金はデフォ。そして、働いた対価が、使われない老世代の貯蓄に回されていては、消費が上向くはずもない。溜め込んでいる老世代が、国内の製品やサービスに還元してくれれば、上前は若者も働く意欲が戻り、日本は元気になるんじゃないかな。国内需要があれば、円高も痛くなくなるし、インフレになれば円も下がる。それでも為替がおかしい場合は、政治的な解決が必要かもね。

  6. hogeihantai より:

    100兆円出すのであれば、何の経済的価値もない尖閣を買うより香港の不動産を買ったほうがましですね。

    2010年国連の日本分担金は2.65億ドル(約200億円)。
    5000年分一括前払いすれば100兆円になります。使い道はビルゲイツ.メリンダ財団に任せる条件にすればよい。

  7. https://me.yahoo.co.jp/a/u540mrdbVIb5etvNTFCFUJ40iuo- より:

     2.の輪転機のプレゼントには笑ってしまったが、それでも真に受ける人が居そうなので、もう少しジョークと分かる様にすべきかと。

  8. shuu0522 より:

    # yamachan54さん

    なぜ大胆なことやらないのか?
    それはちゃんとリスクを計算するからです。
    コラムで面白おかしく書く分にはうまくいったケースだけですが、
    実際に実行するとなると失敗したケースも検討せねばなりません。
    100兆円提示してバカにするなと拒絶された場合、
    国内外からどのような対応を受けるのか?
    輪転機をプレゼントしたことがバレた場合どうなるのか?

    所詮はリアルに対策を実行する立場の発想ではなく、
    物書きの飯の種となる「ネタ」レベルでしかないのです。

  9. jasumin777 より:

    かずきあたまいい!

    思ったよりもずっと

    感心した

    正直、感動した!

  10. worldcomw より:

    規模が大きいのでネタだとわかりますが(分からない人も居るようです)、1/10か1/100に矮小化すると実際に提案する人が居そうですね。
    逆に、現在実行されている政策を10倍、100倍にして考えてみると面白いです。

  11. forcasa3 より:

    > 不当な方法で低価格を実現している外国の製品の台頭による国内生産の疲弊~
    今から30年程前に鉄鋼や自動車、半導体等に関して日本が米国から散々叩かれた時と全く同じ理屈ですね(笑)。

  12. yamachan54 より:

    釣り記事に釣られたフリしてみたら、それに釣られる人がいるのを見てうけたwww

    要約すれば、こんなアホな方法で解決できるデフレは本質的な問題じゃないということだよ。円高も為替介入で止めるのは本道じゃないし、100兆円規模の国富ファンドでも立ち上げて、円高バイアスがかかってるうちにプラチナや石油やウランなどの現物資産だとか、他国の成長企業の株を買い占めてプレッシャーをかけて、自国ではなく他国に介入させるのが王道。
    日銀は、というか日本政府は、増税しても借金を返せなくなるギリギリの点がどのあたりなのか手探りで探す、という壮大な実験をやっているんだから、何らかの形で本当にデフォルトが起こる可能性もある。ハイパーインフレは人為的に起こさなくても自然に起こるよ、いい確率で。

  13. powerpoint1 より:

    3.なら無利子国債でいいでしょ。
    相続税は軽減をセットにして。

    金持ち優遇なんて声は無視していい。
    デフレから抜けたらインフレ抑制に固定資産税、キャピタルゲイン課税、所得税、法人税の累進強化すればいい。
    金持ちが逃げる?円安要因でしょ。
    それに円高+デフレで逃げ出してるのが現状。
    国内の需要が回復したら日本で商売やるでしょ。

    そもそも過去最大の預貸ギャップのある現状で
    長期金利が上がるとも思えないので無利子国債まで
    やることもないですが。
    日銀が買い切りを増やせばいいだけですね。