雑草の言葉

「自由貿易」と言う名の「貿易の強制」

2025/01/11
Economic Fascism 8

 自由貿易の功罪がよく論じられます。よく言われる「功」の部分に胡散臭さを感じるのは私だけではないでしょう。
 自由貿易のメリットは、「国際取引の拡大により、各国の生産効率が向上し、世界全体の経済成長を促進すること」などと言われています。
経産省の自由貿易のプロパガンダ?
           経済産業省のプロパガンダ?
「保護貿易によるブロック経済が第2次世界大戦の大きな原因の一つ・・・だから戦争防止のためにも『自由貿易』は必要」などとも言われています。中学・高校での社会科の授業などでもそう教えているそうです。(一理はあるにしても、こんな「メリット」を教え込んでいいものでしょうか??)
自由貿易と保護貿易の違い
     自由貿易と保護貿易のステレオタイプの説明。
       自由貿易が公平だとしても公正か?


 1947年にGATT[関税及び貿易に関する一般協定]が設立され、WTO [世界貿易機関]に発展して経済のグローバル化が押し進められました。さらに21世紀にはFTA[自由貿易協定]やらEPA[経済連携協定]、TPP[環太平洋パートナーシップ協定]等よく分からない胡散臭い2国間、多国間の協定が次々に出来て、一層の自由貿易が押し進めらてきました(ゴリ押し?)。

 これらの機関、協定の設立趣旨は建前だけのものであり、実際のところは一部の人々による「金儲け」が目的でしょう。大航海時代の搾取の構造と大して変わりないんじゃないでしょうか?最初に示した「自由貿易のメリット」も推進の為のプロパガンダに他ならないでしょう。
    ビクトリア号 マゼランの船隊の1隻

 個人的には「自由貿易」といえばいい印象はほとんど無く、環境と地域社会の破壊に思えます。「自由貿易」の「自由」は、「身勝手な自由」であり「貿易の強制」と言った方が実情を反映しているのではないでしょうか?自由貿易で儲けることが主たる目的でしょう。


「自由貿易」の名の下にエネルギー(特に石油)を大量に使って遠くの国から物資を運び込むのは、エネルギー資源の浪費であり環境汚染です。地球の反対側から大量に物資を運び込むなんて浪費がこの先ずっと続けられるとは思えません。
 「より安い」の一点で、他国から大量に食糧その他を輸入して、自国の農業を破壊した代償は計り知れないでしょう。そしてそれは農業だけに留まりません。
 独立国家は、貿易をするしないの自由、関税をかける自由があるはずです。

 槌田敦氏はその著書『新石油文明論』(第5章)で「現代の砂漠化の犯人は自由貿易」と述べていますがそれもさもありなんです。そのうち記事にしようかと考えています。 

 アメリカの大統領に返り咲いたトランプは、海外諸国からの輸入関税を大幅に増やして保護貿易を拡大すると言って他国から警戒されています。それによって中国はじめ、日本を含む多くの国に経済的打撃があると言われていますが、それは悪いこととは言い切れないでしょう。ただ、アメリカもダブルスタンダードではなく、自国と同様に他国も関税をかける事を認めるべきです。世界の貿易が縮小することは淋しいことかも知れませんが、淋しいだけのレベルです。長い目で見れば社会にとっても環境にとってもいいことです。保護貿易くらいで戦争を始めようとする強欲な連中こそ異常なサイコパスでしょう。このままでは自由貿易も世界の破局の大きな要因となることでしょう。
 ただ、現実的にはここまでグローバル化してしまった世界が貿易を縮小することは非常に困難である事も確かです。
ルネッサンスの世界地図 木版世界地図
   ルネッサンス時代の木版世界地図

21世紀に文明が崩壊するのを止めるには1つ1つの要因がそれぞれ非常に困難です。そしてそんな要因がたくさんあるのです。21世紀はまさに綱渡の世紀です。

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Comments 8

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guyver1092

槌田敦氏

 私も読みました。現在の地球の状況を見る限り、槌田氏が正しいと考えています。
 自由貿易は強者についてのみ自由で、弱者には自由はないのでしょう。結果、弱者は生存のため、自国の太陽エネルギー固定装置たる自然環境を破壊しているのでしょうね。

 メリットとして挙げられている生産効率の向上ですが、物理的制限のあるこの現実の世界である限り、永遠に生産効率向上など不可能です。結果として、太陽エネルギー固定装置を取り崩して輸出を強制されているのだと考えます。生産効率に上限があるのに無限に経済成長しようとすれば、最終的には現在始まっている文明崩壊戦争が拡大するのでしょう。
 全く憂鬱なことです。

2025/01/11 (Sat) 20:23

Anthony

>エネルギー(特に石油)を大量に使って遠くの国から物資を運び込むのは、エネルギー資源の浪費であり環境汚染です。地球の反対側から大量に物資を運び込むなんて浪費がこの先ずっと続けられるとは思えません。

 過去に外国産のミネラルウォーターがブームになっていたことがります。というか、未だにそれらが輸入されて売っています。

 日本は国内でいくらでも「名水」と言われている水源がいくらでもあります。

 わざわざ、油を燃やして遠い海外から水を運んできて、バカげていると思います。

 が、悲しいことに関西でも有名な「六甲のおいしい水」に、水源地近くのゴルフ場のせいか?農薬や化学物質が混入していました。

 山間部にゴルフ場を作るっていう愚挙が、まだまだ続きます。。。

 こういう話を飲み屋でしていると、変人扱いされるんで、飲み屋ではおとなしくしております。(苦笑)

2025/01/11 (Sat) 20:37

爽風上々

関税自主権の回復

明治初年に不平等条約の改定のために日本政府が苦しい努力を重ねたのは、欧米諸国の「自由貿易」(ただしあちらからだけの)をとどめ関税を掛けられるようにするためでした。
欧米からの輸入品に関税を掛ける権利すら奪われた日本がそれを回復する。まさに今のグローバルサウス諸国が自由貿易によって奪われている権利を取り戻す戦いと同じです。

ただし、アメリカが関税を掛けると言っているのはナンセンスです。
開発途上国と違い、アメリカはもともと持っていた製造力を自ら手放して中国をはじめとする諸国に移転させ、そこで安く作らせることで格安製品を享受しようとしたのですから。
今さら関税を高くしてもすでに米国内に製造力はなく、製品価格を上昇させるのが関の山。
さらに労働力となるべき移民も排斥しようというのでは、米国内で誰が何を作るというのでしょうか。
インフレはさらに拡大し、それが世界を揺るがすことになるのでしょう。

なお、「水」といえば熊本では有名な阿蘇の伏流水。それを大量にTSMCに貢いでしまいました。
この先どうなることやら。
さらに排出する化学物質で環境汚染そして水俣病の再来も危惧されています。

2025/01/12 (Sun) 07:59
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 槌田敦氏

>現在の地球の状況を見る限り、槌田氏が正しいと考えています。

「自由貿易が現代の砂漠化の犯人」という、一見突拍子もないような見解は、槌田敦さん一流の洞察だと思います。

>自由貿易は強者についてのみ自由で、弱者には自由はない

全くおっしゃる通りで、「自由貿易」と言う名の「貿易の強制」です。

>太陽エネルギー固定装置を取り崩して輸出を強制されているのだと考えます。

これは槌田敦さんレベルの鋭い洞察です。だからこそ、貿易は縮小させるべきですね。

>生産効率に上限があるのに無限に経済成長しようとすれば、最終的には現在始まっている文明崩壊戦争が拡大するのでしょう。全く憂鬱なことです。

なるほど、これで「戦争防止のためにも『自由貿易』は必要」という定説をしっかり覆しますね。

2025/01/13 (Mon) 02:12
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: タイトルなし

>過去に外国産のミネラルウォーターがブームになっていたことがります。というか、未だにそれらが輸入されて売っています。日本は国内でいくらでも「名水」と言われている水源がいくらでもあります。

全くおっしゃる通りです。こんなに水が豊かな国で海外産の水を輸入するなんて愚の骨頂です。「砂漠のオアシスの水マサフィー」というのを日本国内で置かれているのを何度か見たことがありますが、水が貴重な地の砂漠のオアシスの水を水が溢れている日本に船で運んで来るなんて、本当に狂っていると思いました。こういう事を考える商社(?)の連中は厳しく処罰するべきだと考えます。

>悲しいことに関西でも有名な「六甲のおいしい水」に、水源地近くのゴルフ場のせいか?農薬や化学物質が混入していました。

そうでしたか?会津でも似たような事が起こったことがあります。未だにゴルフ場を開発しているんですね!?酷いものです。

>こういう話を飲み屋でしていると、変人扱いされるんで、飲み屋ではおとなしくしております。

いやいや大人しくせずに主張し続けていると、意外に同士に会えるものですよ。

つい先週、初めて行ったカフェで、その店のママさんがAnthony さんのような事を言っていたので
「いやいや、おっしゃる通りです。私もそう思います」と賛同したら彼女は喜んでました。

2025/01/13 (Mon) 02:27
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 関税自主権の回復

>欧米からの輸入品に関税を掛ける権利すら奪われた日本がそれを回復する。まさに今のグローバルサウス諸国が自由貿易によって奪われている権利を取り戻す戦いと同じ

なるほど、そうですね。そしてグローバルサウス諸国が自由貿易によって奪われている権利を取り戻すことを許可しなかったらアメリカを筆頭に欧米諸国の行為はダブルスタンダードです。

>アメリカが関税を掛けると言っているのはナンセンスです。
アメリカにとってナンセンスという事ですね?
これで横暴な国アメリカが自滅すれば自業自得ですがアメリカの庶民は可哀想です。更に
>インフレはさらに拡大し、それが世界を揺るがすことになる
のは困ったものです。これでアメリカの軍事産業だけが激太りしたらますます世界の危機かも知れません。
最近グローバルサウス諸国はアメリカよりも中国寄りの国も増え、BRICsに加盟する国も出て来ました。ますますアメリカは追い詰められて覇権を失いそうな感じです。アメリカはイスラエルと共に(イギリスなども)世界中から爪弾きにされればいいですが、世界を巻き込むでしょう。現代文明の崩壊が迫っているような感じです。ますます世界は揺れるでしょう。

2025/01/13 (Mon) 03:03

爽風上々

BRICS

BRICSにインドネシアが加盟しました。マレーシアもそれを狙っているという話です。
BRICSの主体がロシア、中国である以上、それはウクライナ戦争の当事者でもあります。
アメリカがロシアと和解する可能性も大きくなっていますが、それでもその溝は深いままでしょう。
そんな時に石破首相がインドネシア訪問、何を話してくるのやら。

2025/01/13 (Mon) 09:03
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: BRICS

 インドネシアもマレーシアもイスラム教徒が多いですし、その国内では反イスラエル、パレスチナ連隊デモが繰り広がれています。現在、反米感情が非常に高まっている国々だと思います。そこに日本の首相が行って、脱アメリカ支配に連帯を示すのは勇気のいる事ですし、すごい事だと思います。しかし自民党首相の石破も従米の典型ですから、そんなことは絶対しないでしょう。何しに行くんでしょうね?
 私はBRICsの方がこれからどんどんとG7を圧倒して来ると考えています。日本も従米一辺倒では沈み行くアメリカに引き摺り込まれるでしょう。従米を脱出できるのでしょうか?
でもG7とBRICsが対立して争っているうちに共倒れで文明崩壊の可能性も低く無いでしょうね。

2025/01/13 (Mon) 11:34
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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