とあるWebサービスが完成するまでの道のり〜おはようチューブ編〜
2007年06月24日 プログラミングTIPS
URLに「oha」と入力するだけでYouTube動画をDLできる「ohaYouTube」。
この「おはようチューブ」というWebサービスが完成するまでの長い長い道のりを、サイト公開から3ヶ月半経った今、開発者の視点から語ってみることにします。
「おはようチューブ」の完成までには、構想一ヶ月、街頭調査半月、プログラミング半月、テスト・バグ修正に一ヶ月かかりました。
「Webサービスは短期間で開発することが大事」と言われています。
そのために、「Ruby on Rails」を導入する人たちもいます。
「Ruby on Rails」や流行の「PHPフレームワーク」を使わなくても、「おはようチューブ」はたった3ヶ月で完成させることができました。
そんな「おはようチューブ」開発者の苦悩の物語を、開発者自ら語ります。
というのは全くの冗談で、開発に3ヶ月もかかったりしていませんので、時系列に沿って語っていきます。
- 1. 2007年3月4日、kissyoutubeに出会う
- 2. YouTubeのFLVファイルのぶっこ抜き方について
- 3. ネーミングを考える
- 4. ネーミング決定のために街頭調査へ出かける
- 5. プログラミング開始とドメイン購入
- 6. レンタルサーバのレンタル
- 7. レンタルサーバのセットアップとDNS浸透待ち
- 8. おはようチューブの完成とスタート
- 9. 2007年3月5日、GIGAZINEで紹介される
- 10. おはようチューブ開発&運営費用
- 11. 何も作らないよりは、良い
- 2. YouTubeのFLVファイルのぶっこ抜き方について
1. 2007年3月4日、kissyoutubeに出会う
2007年3月4日、100SHIKI.COMで- URLに「kiss」と入れるだけでYouTube映像が取得できる『KissYouTube』 | 100SHIKI.COM(3月4日09:14投稿の記事)
「なるほど、kissと入れるだけでダウンロードできるのか」と思いました。
「でもサイト全てが英語で書かれているし、日本語版のサービスがあったら便利そうだなぁ」
英語では抵抗感があって使いにくくても、日本語版にローカライズしたら便利そうだなぁ、と。
「便利そうだなぁと思ったのなら、自分で作ってしまえば良い!」ということで、早速このWebサービスの実装方法について頭の中で考えてみることにしました。
2. YouTubeのFLVファイルのぶっこ抜き方について
ちょうど3日前の2007年3月1日に、を書き上げて、「YouTubeのFLVファイルのぶっこ抜き方」を研究していた後だったので、作るのは簡単そうだと思いました。
というよりも、上記エントリで作り上げたサンプル「ニコニコ動画みたいなものを作ってみるテスト」の開発バージョンでは、動画IDを入力するとFLVのURLが表示され、そのままダウンロードできる仕組みになっていました。
ただ、上記エントリの中で「動画最新情報」という正規のYouTubeAPIを利用したサイトを作成していたこともあり、FLVぶっこ抜き機能については削除していました。
本来やりたかったことは、正規APIを使ってニコニコ動画みたいなものが作れるのかどうか確認することと、ニコニコ動画みたいなFlashアプリが作れるかどうかを確認したかったからで、YouTubeの動画をダウンロードすることが主目的ではなかったからです。
FLVぶっこ抜きについて調べているとき出会ったのは、「Video Downloader」などの「サイト上でYouTube動画URLを入力してダウンロード」するタイプのサイトでした。
この仕組みは、「ニコニコ動画みたいなものを作ってみるテスト」において導入しました。
そのたった3日後に、「KissYouTube」のように「YouTube動画URLに細工をしてダウンロード」するタイプのサイトが存在することを知り、とても驚きました。
それで、「日本人にも使いやすいようにKissYouTubeをローカライズしたような感じのサイトを作ってみよう!」と決めたのでした。
3. ネーミングを考える
「YouTubeにキスすると動画をダウンロードできるKissYouTube」と率直に思いました。
「外国人にはわかりやすくても、日本人にとってはわかりにくいなぁ」
キスなんて口に出して言うのは、ちょっと恥ずかしいし、日本人の全世代向けに適しているネーミングとは思えませんでした。
「元のURLに細工をしてダウンロードする」という特性上、覚えにくい名前だったら、その時点でアウトです。
それで、頭をフル回転させて、ネーミングを考えてみました。
後出しのサイトである以上、「kiss」の4文字よりも短いネーミングにしようと決めました。
「○○youtube、△△youtube…」
いろいろ考えて、一つのネーミングを考えつきました。
小学生でも中学生でもダウンロードできる「小中部!(syoutube)」これなら、youtubeの前にたった1文字「s」を入力するだけで良いので、これにしようと決めて、早速ドメインを購入しに出かけました。
ところが!
「syoutube.com」というドメインは既に他の人に購入されていました…。
仕方なく、他の1文字系のドメインの購入も試してみましたが、ほとんど購入できない状態でした。
1文字がダメなら2文字と3文字が残っているということでいろいろ考えてみましたが、このネーミングに苦労しました…。
覚えやすいネーミングがなかなか思い浮かばなかったからです。
4. ネーミング決定のために街頭調査へ出かける
「自分で思い付かないのなら、街で聞いてみよう!」と考えて、街頭調査に出かけることにしました。
「なるべくなら、若い女の子に意見してもらうのが一番!」
アンケート用紙を作成して、若い女性にアンケート協力のお願いをする作戦です。
「おはようございます!と、きれいな女性を見つけては声をかけていきました。
雑誌の特集用にアンケートを採っているんですけど、お願いしてもよろしいですか?」
この時渡すアンケートは、以下のように作成していました。
雑誌「○○」何月号 特集1 アンケート調査こんな感じです。
Q1. 名前と年齢を教えてください
Q2. 今付き合っている彼氏はいますか?
Q3. 彼氏がいる場合、今の彼氏に満足していますか?
Q4. 欲求不満なことを教えてください
Q5. アンケートの結果連絡のために、電話番号かメールアドレスを記入してください
わざわざアンケートに答えてくれるような女性は、アンケート結果にも興味があることが多いので、最後に「連絡のために」と称してケータイ番号かメアドをGETしておくところ(TMG)がポイントです。
後でいつでもアポ取り用の連絡をすることができるようになります。
また、アンケートを記入しているときに、用紙をのぞき込んでいろいろと会話を膨らませておくのもポイントです。
ネットでの出会い系サービスなどと違って、ストリートの場合はお互いのスペックを確認することができるので、その場の雰囲気次第で成功率を高めることができます。
D、JK、Cなど、好みに合わせてどの世代でも狙うことができます。
こんな風にして、おはようチューブのアンケートを半月ほど採っていたら、運良く付いてきてくれる女子大生Kさんが見つかりました。
「なんで、OKしてくれたの?」と聞いてみたら、
「だって、もう夕方なのに、”おはようございます”って声かけてくるのが面白かったから」と答えてくれました。
「えっ、おはようございます?こうして、半月間の街頭調査の甲斐あって、「おはようチューブ」のネーミングが決定しました!
おはようございます…
おはようございま…
おはよう…
おはようチューブ
ohayoutube!
おはようチューブ
ohayoutube!
」
「ごめん、用事思い出したから、今から戻らなくちゃ!と言って、街から開発室へと戻ってきました。
この埋め合わせは今度絶対するから、ごめんね!」
女の子と遊ぶことよりも、おはようチューブの開発の方が大切でした。
5. プログラミング開始とドメイン購入
「おはようチューブ」というネーミングが決定したので、今度は実際にプログラミングできるかどうか、プロトタイプの作成に取りかかりました。「うん、これはいけそう!」と手応えをつかんだところで、「ohayoutube.com」のドメインを購入しに「VALUE DOMAIN」へ行きました。
「これでまた売り切れだったら…」と心配しましたが、無事購入することができました。
「VALUE DOMAIN」で、1年間の契約「990円」でした。
6. レンタルサーバのレンタル
続いて、「おはようチューブ」を運営するためのレンタルサーバ選びに移りました。最近は安くて性能の良いレンタルサーバがたくさんあるので、選定にも苦労しました。
結局は、
「ネットナンパと言えば”サクラ”が多いから、さくらインターネットでレンタルしてみよう!」と決めました。
☆さくらインターネット☆ のスタンダードプランで、1年間の契約「5000円(一括払い)+初期費用1000円」でした。
7. レンタルサーバのセットアップとDNS浸透待ち
ドメインとレンタルサーバの申込みと契約が済んだら、後はサーバのセットアップとDNSの浸透待ちです。早速購入したばかりの「ohayoutube.com」のドメインをレンタルしたサーバーにセットしようとしたのですが…
困ったことにさくらインターネットでは、外部で購入したドメインの設定は「非推奨」となっていました。
外部ドメインの設定は自己責任となる上、推奨されているドメインの移管手続きには年間1800円かかってしまうと書かれていました。
まぁ、この辺りは気合いで乗り越えておきました。
いろいろ設定してDNSの浸透待ちをしている間に、「おはようチューブ」のプロトタイプ版のチューニングとテスト・バグ修正を行いました。
サーバのセットアップとDNSの浸透が完了したら、いよいよ本番環境でのテストです。
8. おはようチューブの完成とスタート
「ohayoutube.com」にプログラムを移し、テストとバグ修正も完了させました。実際に自分で「oha」と追加して、YouTubeの動画をダウンロードできるか確認しました。
無事ダウンロードできることを確認して、次にYouTube動画のFLVファイルを再生するプレイヤー紹介のページ「Flash Video(FLV)再生プレイヤー」も作りました。
「***.flv」というファイルだけ手に入っても再生方法がわからない人はたくさんいるはずなので、別のページとして作っておく必要がありました。
ここまで全て終了させ、ついに「おはようチューブ」が完成しました!
構想一ヶ月、街頭調査半月、プログラミング半月、テスト・バグ修正に一ヶ月かかった壮大なプロジェクトでした。
構想してどのようなサイトを作るかを考えてから、街頭へ出てアンケート調査を行い、プロトタイププログラムを作成し、ドメインとレンタルサーバを契約し、本番環境でのセットアップとテスト・バグ修正を行いました。
長い長い道のりでした。
ついでに、「動画最新情報」からも「おはようチューブ」へのダウンロード用リンクを作成し、連携を取れるようにしました。
ブログで「おはようチューブ」を作ったことを報告するために、URLに「oha」と入力するだけでYouTube動画をDLできる「ohaYouTube」というエントリも書きました。
9. 2007年3月5日、GIGAZINEで紹介される
壮大なプロジェクト「おはようチューブ」作成プロジェクトは無事完了し、一息ついたところで、大人気ブログ(?)「GIGAZINE」で「おはようチューブ」が紹介されました!- YouTubeにキスするとFLVファイルがダウンロードできる「KissYouTube」 - GIGAZINE(3月5日01:11投稿の記事)
面白いのは、この記事の投稿時間です。
3月5日01:11
と表示されています。
kissyoutubeの存在を知るきっかけとなった100SHIKI.COMの記事が投稿されたのが、
3月4日09:14
ですから、たった16時間しか経っていません。
つまり、おはようチューブ作成に3ヶ月間もかかったなんていうのは大ウソで、その100分1以下の時間で構想から完成まで作り上げていたということになります。
「Webサービスはスピードが重要!」という人が多いのはまさにその通りで、このように短期間でも便利なサービスを作ることができます。
(今回の例で言えば、昼休みに上記ブログを読み、帰宅後からサービス開発に取り組んで、レンタル契約などを済ませても十分間に合います)
短期間で作ることで、無駄な開発費もかかりません。
10. おはようチューブ開発&運営費用
今回かかった費用は、レンタルサーバ代6000円 + ドメイン費用990円 = 6990円です。
開発費は自分のヒマな時間にちょちょっと作るだけなので、もちろんタダです。
自分が欲しいゲームソフトを1本我慢するだけで、という素晴らしい時代であることを実感しました。
世の中の人に役立つかもしれないWebサービスを開発することは可能!
11. 何も作らないよりは、良い
最速インターフェース研究会の中の人は、最速インターフェース研究会 :: つまらなくて役に立つ物を作るということと語っていますが、
面白くなければ意味がないとかいう人がいるけど、それって結局「大衆ウケしないと意味ない」ってのとほぼ同義だろ。
彼らは通常分厚いハッカーの壁で保護されているので、そういう言葉は届かないから、まあ良しとしても、
無知で無学で無教養のお前らにとって面白さが分からないからといって、価値がないということではないんだよ。
俺はつまんなくて役に立つ物を作るよ。そうありたい。
- つまんなくて役に立つ物
- おもしろくて役に立つ物
- おもしろくて役に立たない物
- おもしろくて役に立つ物
少なくとも、「何も作らないよりは、良い」と思います。
おはようチューブだって、いろいろな要望を取り入れ、「ブックマークレット作成」、「ロゴ作成」、「AmebaVision、フォト蔵、GoogleVideo、dailymotionなどの動画ファイルダウンロード対応」、「YouTubeの仕様変更対応」、「YouTube日本語版対応」などの改善をしてきたことを考えると、多少は役に立っているのかな、と思います。
要望がもらえるだけでも、開発者冥利に尽きる部分がありますから。
そんなわけで、これからも「大切なゲームソフト購入費用」を、「周りからはくだらないと言われるかもしれないWebサービス開発」に費やしていきたいと思っています。
(自分では便利だと思って使っているkeitai24.comなどのサービスの反応は薄いようで、あまり役には立っていないようですが)
注意:おはようチューブの開発期間は3ヶ月もかかっていませんので、上記文章にはところどころウソが含まれています。そのほとんどは、「4. ネーミング決定のために街頭調査」であり、それ以外はほとんど真実です。