今日の午後、私は必ずホBに行かなくてはならなかった。ホBの担当箇所は非常に重要かつ繊細である。予定した日、時刻からわずかなりともずらすわけにはいかない。死にはしないが地獄を見る。
午前10時過ぎ、ホAの診療が終了した。朝、睡眠不足により電車内で何度も横の人に寄りかかってしまったことを除けば計画は順調に進んでいた。行ける、ホBの診察受付開始時刻ジャストに……!
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ぬ、ぬこさまーーーーーー!!!!!!「にゃあん」
説明しよう。往乃は約二週間に一度のペースでホAに通院している。ホAはどういうわけか市街地から離れた住宅街の中にひっそりと佇む、RPG終盤に飛空艇で行ける隠れ武器屋のような名院である(だから移動にも時間を取られる)。その周辺、数ヶ月に一度ほどの頻度で遭遇できるレアポップキャラクターがこのかあいい野良ぬこさまだ。
彼女は非常に警戒心が強く、車道の反対側に居るのを発見した私が一歩そちらに踏み出しただけで「逃げ」に入る。それはもうメタルスライムのようにあっという間に消えてしまう。いつもいつもいつもいつもそうであった。
そんな彼女が……
私から数メートルの距離で、あきらかにこちらに向かって誘うように「にゃあん」と鳴いている……だと……?……………………
ご存知の方も多いかと思うが、私は「ハルヒと猫、告白されるならどっち?」と聞かれたら
ハ……ハル……
ハルにゃん!と答えるくらい猫が好きである。
しかもここしばらく生猫分が不足していた。
今の私は目の前に人参をぶら下げられた……馬……!!もちつけ!
ノ.ヽ// ペッタン
ヽ メヽ ペッタン
∧ ∧ //ヽメ、 ∧ ∧
( ゚Д゚)// )ヽ (゚ー゚*)
/ づ / とと ヽ
~て ) //_) | ̄ ̄ ̄| 〉 ノノ~
(/ ∪ > .< ∪
KOOLになれ前原圭一。今、猫とじゃれている場合か?
NO。じゃれあい始めたらお前は小一時間くらい余裕で潰すよな?
YES。じゃあ見なかったことにして普通に横を通り抜けろ。い……
YES。普通に。
普通に横を……。
「にゃあん」
無理――――――――!!!!!ぬこが鼻先をこすりつけてくる。
どういうわけかものすっげえ友好的。何があった。
背中を撫でるとなーごとか言ってくたっと横になる。
仰向けになって大の字になっちゃったりする。
そんで目を閉じて首と肉球ハンドを左右に振るとかそんな仕草されたらもう、もう、あああああああ
駄目だ……私はここから先へは進めない。みんな、許してくれ……。十分後、往乃は通りがかった車によって救出された(ぬこが驚いて離脱した)。
しかし最後に私は見た。彼女が完全に姿を消す前、立ち止まってこちらに向き直ったのを。
そして、
我に返った私がばいばい、と手を振ると頷くような仕草をして視界から消えるのを。
彼女と次に会えるのはいつだろうか。次も今回のように遊んでくれるだろうか。
ちなみにスケジュールは十分くらいのズレならなんとかなりました。
委員長「先生、往乃さんはもっと強い心を持ったほうがいいと思います」