有名な妖怪は? と問えば、必ずその名が挙がる河童(かっぱ)。しかし、その生態はいまだ解明されていません。そこで、河童の謎に迫るべく、都内近郊に残された河童伝説の地を訪れてみたいと思います。
【走水神社】
最初にやって来たのは、神奈川県横須賀市にある「走水(はしりみず)神社」。
現地に到着してみると、湾岸道路から、左手に海が見えて、右手に山が見えます。これが、岬の先まで山が伸びているという三浦半島の独特の地形。走水神社は、その山にありました。
社務所で伺うと、河童大明神のお社は、本殿の裏の崖にあるとのこと。かつて、走水神社裏の清流に河童が住んでいて、いたずらをしたり、ときには村人たちを助けたりもしていたといわれています。自然に包まれ、山も、木も、古来の形を残しているような走水神社。近頃では、パワースポットとして知名な都心の神社に飽き足らない人たちが、遠方から訪れているとか。
【滝の川】
神奈川県横浜市を流れる「滝の川」。
現在は、高度成長期に進められた都市化のため、川の多くは、下水道のように、地下を流れています。しかし、地底を滝の川が流れている所が、緑道として整備され、憩いの場所になっていました。
滝の川の水源のひとつに数えられた滝つぼに、河童が住んでいたといわれています。いたずらをすることもあったようですが、村人たちは、水の大切さを伝え、子どもたちを水の事故から守るためにも、河童を大切にしていたようです。
【鶴見川】
滝の川と同じく横浜港に注ぐ鶴見川。99匹の河童が住んでいたという伝説が残されています。鶴見川の河童は、村の力自慢の若者と相撲をとったとか。ここの河童もいたずら好きでしたが、きゅうりを川に流したら姿を見せなくなったともいわれています。
【茅ヶ崎】
相模湾に面した神奈川県茅ヶ崎市には「河童徳利」という伝承が残されています。昔、村人がいたずらをしたカッパを助けました。河童は、お酒がいくらでも湧き出るという徳利をお礼に差し出しました。ただ、村人はお酒ばかり飲み、怠け者になってしまったとのこと。しかし、徳利は底を3回たたくと、お酒が出なくなり、村人は元通りの働き者になったといわれています。江戸時代の話ですが、その村人のお墓も残されています。
【目久尻川】
神奈川県を流れる「目久尻川(めくじりがわ)」。ここも有名な河童スポットで、目久尻川に架かる伊勢下村橋の高欄に、河童の像がまつられています。伝承によると、ここの河童は悪さをしたため村人に捕まり、目をくり抜かれてしまったとのこと。そのため、目久尻川という名前が付けられたともいわれています。
【河童の鼻とり】
目久尻川の続きです。かつて村が不作に襲われた折、食べ物に困った河童の母親が、子ども河童に、やっと実った畑のきゅうりを食べさせてしまいました。しかし、母親河童は村人たちに捕まって、目をくり抜かれてしまいました。哀れに思った老夫婦がお地蔵様を建てました。
数年後、村が日照りに襲われた際、お地蔵様に雨乞いをすると雨が降り始めました。老夫婦はよろこんで外に出て、どこからともなくやってきた子どもが、馬の鼻をとって、田植えを手伝ってくれました。作業が終わると、子どもはいつのまにかいなくなっていました。帰りがけ、老夫婦がお地蔵様を見ると、泥だらけ。村人たちは、母親河童に悪いことをしたと後悔し、供養したとのことです。
【清伝寺】
神奈川県三浦市の「清伝(せいでん)寺」には、河童が書いた「わび証文」の話が伝えられています。お寺の脇を流れる川にかつて河童がいて、木に結びつけた馬の手綱をほどくという、いたずらをしました。怒った馬子が、もう一度結び身を隠しました。再び悪さをしにやってきた河童を捕まえて、こらしめていました。清伝寺のお和尚様が、私がよく言い聞かせるので許してやってほしいと頼み、河童が、もう悪さをしません、という証文を書いたそうです。
【多摩川】
山梨県内に源を発し、東京と神奈川との境にもなっている多摩川。ここにも、さまざまな河童伝説が残されています。民話のひとつに「河童のホオズキ」があります。ホオズキに化けた河童が、それを拾おうとした女の子を川に引きずり込んでしまったという話です。水の事故に気をつけなさいという教訓でしょうか。
【常泉寺】
河童スポットとして知名な神奈川県大和市の「常泉寺(じょうせんじ)」。かつてはお寺の山にも湧水があり、なんと常泉寺には、石像など、300体以上の河童がまつられています。河童伝説の地をこれから巡ってみたい人には、格好のスタート地点といえるかもしれません。
【印旛沼】
千葉県北西部にある「印旛沼(いんばぬま)」には、一本足の河童の伝承が残されています。水面に魚の目玉のようなものが見え、漁師たちが驚くと、河童が笑いかけるとか。河童の絵図も残されているそうです。
今回は、都内近郊の河童スポットを紹介してみました。河童伝説は全国各地に残されています。行楽の秋を迎え、河童スポット巡りなどいかがでしょうか。
(取材、写真、文=竹内みちまろ)
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