阿曽原温泉1泊ハイク~1日目その2~
台風が近づいた中の阿曽原温泉1泊ハイク。
いよいよ水平歩道の始まりです!

こんな天気で水平歩道を歩こうとする私は、やっぱりどえむなのかな?(笑)
標高約1000mの岩肌を削って造られた文字通り水平な道で、欅平上部から仙人谷までの約13㎞。
黒部川の水力を活かした電源開発のために1920(大正9)年に開かれ、ダムや発電所建設用の資材を運搬するため、歩荷(ボッカ)たちが50~100㎏を担いでここを通ったと謂われる。
花崗岩の険峻な岩壁を削った道は、道幅およそ1m。

最も狭い場所では僅か70㎝ほどしかない。
風雪による浸食作用で削られた場所も多く、丸太や鉄板で足元を補強してある。

山肌側には手すり代わりの番線(針金)が張られているが、谷側には防護柵などはなく、さながら”蜀の桟道”のようだ。
路面が濡れているので、滑り易い丸太や鉄板部分は特に慎重に歩かざるをえない。
水平歩道では体力以上に、緊張感を維持することが重要である。
左手は黒部の激流が造り上げた深い断崖になっており、落差はおよそ250m。

昔から、”黒部に怪我なし!”という諺があるそうだが、
これは落ちたら怪我どころじゃ済まないという意味らしい((゜Д゜;)))
事実、残念なことに転落して命を落とされる方があり、遺体が収容できない場合もあるそうだ。
特に危険なのは、歩きながら写真を撮ったり、歩きながら風景を注視したりするなどの”ながら行為”。
水平歩道に限らず、一般の登山道でも言えることだが、人間一度に二つの行為をしようとすると、関心の大きい方に注意力がいってしまい、もう一方は漠然とやってしまう傾向にある。
この場合だと、写真を撮ることや景色を眺めることに没頭してしまい、歩くことへの注意力がどうしても散慢になりかねない。
普通の場所ならいざ知らず、道幅1m、足元は落差200m以上の断崖絶壁という環境下で、万一足を滑らせたりバランスを崩すせばとんでもない悲劇が起こりかねない。
写真撮影したり、景色を鑑賞する場合は必ず立ち止まり、足場を確保して、片手を番線や岩肌に添えて行うようにしましょう。
この辺りで前方から10人ぐらいの団体さんがやってきた。

立ち止まって目一杯山側に張り付いてじっとし、団体さんに先にすれ違ってもらう。なお道を譲る場合は山側で留まるようにし、決して谷側で留まらないこと。
もし対向者のザックでも当たってバランスを崩したら一巻の終わりですから。
どうやらこのグループはツアー会社のハイクらしく、昨日は阿曽原小屋に泊まられたそうだ。そして最後尾のガイドさんらしきリーダーの方が、
G 「ご苦労様です。工事の方ですか?」
いえ、ただのヘタれハイカーです(笑)
工事用ヘルメットを被り、黄色と黒のカッパを着ているので、工事関係者だと思われたのだろう。
少し広くなった場所でお昼にしよう(12:07)

コンビニで買ったサンドイッチを頬張り簡単に済ます。
雨で黒部川の対岸は全く見えず。

12:19 蜆谷トンネル(標高約950m・阿曽原温泉まで残り8.6㎞)

花崗岩をくり抜いた素掘りのトンネルで、距離が短いのでヘッデンは不要。

ただし高さが1.7mほどしかない部分もあるので、頭上にご注意を。
道は概ね水平だが、所々軽いアップダウンもある。

番線は特に道幅が一段と狭くなった場所や沢付近に多く張られているが、

中には”ここ必要?”という場所に張られていたり、”なんでここにはないの?”というよう箇所も見受けられた。
関電が黒部ダムを建設する際の条件として、国から水平歩道ならびに旧日電歩道(下ノ廊下)の維持・補修が義務付けられており、どうやら予算と工事業者による大人の事情が働いているのかも。
少し小降りになり、対岸に奥鐘山(1543m)の大岩壁(西壁)が見えてきた。

後立山連峰の唐松岳(2696m)から続く尾根の末端で、幅1㎞・高さ800mにも及ぶ西壁は、国の特別天然記念物ならびに特別名勝に指定されている。
クライミングの名所でもあり、その難易度の高さからクライマーの間では”黒部の怪人”とも呼ばれ、黒部別山大タテガビン南東壁(=”黒部の魔人”)と丸山東壁(=”黒部の巨人”)とともに黒部三大岩壁に数えられる。
谷を縫うように道が造られているため、対岸がそこに見えてもなかなか近づかない。

2つ目のトンネルを抜けると、志合谷(しあいだに)に入っていく。

ここも距離が短いのでヘッデンは不要。
ここから志合谷の対岸を見ると、見事なまでに水平だということが分かる。

あれが有名な大太鼓だろうか?

”弁慶の○○○○”というような名前が付いていそうな場所も。

前方に大きな雪渓が見えてきた。

雪渓は水平歩道の先を大きく遮っていて、とても渡れそうにない。
13:18 志合谷トンネル(標高約930m・阿曽原温泉まで残り7.0㎞)

ここからトンネルを通って対岸の出口までいく。かつては谷を通っていたようだが、このように雪渓が秋頃まで残り、雪渓が消えても増水時に渡渉するのが危険なため、素掘りのトンネルが掘られたそうだ。
約150mあり、内部は真っ暗でしかもU字にカーブしているのでヘッデンが必要。

内部は2mほどだが、所々岩がせり出して低くなっている箇所があるのでご注意を。
と偉そうなことを言ってますが、2回ほどしこたま頭をぶつけました(笑)
やはりヘルメットを被るか、ない場合はヘッデンを壁や天井に当てながら進むと良いと思います。
また足元には水が流れており、場所によっては水溜りも。

トンネル内の白く光っている部分は、花崗岩のガラス質成分が光を反射しているそうです。
出口らしき灯りが見えてきたので進んでみるが、高さ1mほど岩が重なっている。

よじ登って外に出て見ると、なんと足元には雪渓があって行き止まり。
後から小屋のご主人に伺ったところ、ここは昔の出入口だったそうで、危険なので岩でバリケードしてあるそうだ。
現在の出口はそのすぐ先にありました(13:30)

トンネルを出ると再び雨足が激しくなっていたので、雨宿りを兼ねてトンネル出口付近で小休止。
この志合谷は雪崩の巣窟らしく、かつてこの地には黒部川第3発電所建設に従事する作業員の鉄筋コンクリート造の宿舎があったが、1938(昭和13)年12月に起こった泡(ほう)雪崩で、3・4階部分が吹き飛ばされた。
雪崩の勢いは凄まじく、宿舎はなんと前方に見える600mも離れた黒部川対岸の奥鐘山西壁まで一気飛ばされて激突。84名の方が亡くなられたそうだ。合掌。
雨足は弱まるどころか、むしろ強くなってきたが、意を決して腰を上げる(13:34)

もうカッパの中や靴もビショビショなので、あまり関係ありません(笑)
ところどころ岩肌から滝のように水が落ちている場所が増えてきた。

下手に避けようとせず、そのまま水しぶきを浴びながら進んでいく。
そろそろ核心部の大太鼓に差し掛かったようだ。

黒部川があんな下に見える。

13:55 大太鼓(標高約930m・阿曽原温泉まで残り6.2㎞)

岩肌をコの字にくりぬいてある。
100年近く前によくこんな道を造ったもんだ。人間の力って本当にスゴイんだな…
抜群の高度感で、キャン●マがキュンとなりそうです(笑)

中国にはもっと怖い華山(かざん)の長空桟道というのがあるらしいが。
身体を番線に寄せたくなるが、腕を伸ばし心持ち曲げる程度で握った方が良い。

あまり身体を山側に寄せ過ぎると、出っ張りに接触してバランスを崩しかねない。
水平歩道にはこのような心休まる道幅の広い箇所もある。

この辺は崩れ易い安山岩のせいか、天井や壁面の凹凸が多い。

身長180㎝の私は、ここまでで合計6回ほど頭をぶっつけました(笑)
たんこぶができるくらいならまだしも、出血したり転倒したりすると危険なので、やはりヘルメットがあった方が良い。
前方に大滝が見えてきた。

そろそろオリオ谷かな?
14:50 オリオ(折尾)谷(標高約940m)

今度は雪渓に代わって、堰堤が前に立ちはだかる。
(この区間の行程)
11:12水平歩道始点・終点
12:07(昼食)12:14
12:19蜆谷トンネル
12:59トンネル
13:18志合谷トンネル入口
13:30志合谷トンネル出口(雨宿り)13:34
13:55大太鼓~14:50オリオ谷(堰堤)
阿曽原温泉1泊ハイク~1日目その3~ につづく・・・
やっぱり、山っていいね!
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