筆者が東京に出てきて大学生として生活を始めた50年以上前には,今で言うアパートに相当するのが下宿であった。当時,筆者が暮らした下宿は本郷追分にある正行寺の境内に建てられた清風荘,4畳半,ガスコンロ,トイレ共用,食事なしで4,500円,つまり,一畳につき1,000円というのが相場だった。 ちなみに,1960年頃を境に,高層のアパートが都会に建つようになり,マンションとよばれて現在に至っている。しかし,マンションは,例えばマイケル・ジャクソンが住んでいたような大邸宅を指すのであって,英語では,マンションでなく,condominium が用いられる。日本のマンションには,カタカナを名前が付けられることが多い。今年いただいた年賀状には,カタカナのマンションの名前が並んでいる。曰く パークスクエア ・・・,ライフレビュー ・・・,グランツオーベル ・・・,ミオスタワー ・・・,アーバンライフ ・・・,スカイタウン ・・・,コートソロ ・・・,ドミュール ・・・・・・・・ 命名に当たって,ほかに知恵はないのだろうか。 下宿には冷暖房はない。夏は窓全開で過ごしたが,冬が厳しかった。火鉢にしがみついて新聞を読む。机に向かうときは,下半身を毛布でぐるぐる巻きにする。 風呂帰りの手ぬぐいを部屋にぶら下げておくと,朝には ”伸し烏賊” のようにパリパリに凍っている。現在の快適なアパート暮らしの学生諸君には想像もつくまいが,本当の話しである。しかし,これで,風邪をひいたという記憶がない。人間には,それだけの適応性が備わっているのだと思う。よく,朝,布団から出るのが辛いというが,眠さを別にすると,折角何とか温まった布団から出る辛さは,あの頃の学生にしかわからないだろう。 18世紀に書かれた Samuel Hearne の日記には,北米最北端に住むアメリカアカガエルについて,つぎのように記録されている。 冬,テントを張っていると,コケと一緒に氷のように固いアメリカアカガエルが見付かることがある。不注意に扱うとポキンと足が折れてしまう。暖かい布で包んでゆっくり暖めると,息を吹き返す。 自然が創った生物は驚くほどよく出来ているのである。砂漠にもぐって,目だけを地面から出して雨の降るのを忍耐強く待つカエルがいる。野口英世の書とともにここに掲載する。
by yojiarata
| 2012-01-06 21:29
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