ヤマダイーブック閉鎖時の対処を記憶に焼き付けるとともに「事前の救済策」でユーザーの信頼を勝ち取ろう


ヤマダ電機|YAMADA DENKI Co.,LTD.

「ヤマダイーブック」の閉鎖と新サービス移行に伴い、既存ユーザーの救済が一切行われないお知らせが出ているのが発覚し炎上、その日のうちに方針転換し救済することになる騒ぎが起きました。

第一報はこちらのブログ。

…ぉぃぉぃぉぃぉぃぉぃ、なんだよこれ。引き継ぎくらいあってもいいじゃん。

安心サービスとあるのに安心じゃねーーww

慌てて真偽の確認をしようと思ったら、お知らせを見られるのがログイン認証後の画面という。仕方がないので、新規会員登録しました。

ヤマダイーブックのお知らせ画面

ヤマダイーブック システム移行によるサイト閉鎖につきまして(上)

ヤマダイーブック システム移行によるサイト閉鎖につきまして(下)

  • 「お客様にてご購入いただきましたポイントにつきましては、返金及びヤマダポイントへの交換は出来かねます」
  • 「ご購入及びダウンロードされたコンテンツにつきましては、新規電子書籍サイトには引き継がれない」

電子書店の閉鎖はこれまでいくつも事例がありますが、新サービスを始めるのに既存ユーザーの救済一切なしというのはさすがに前代未聞です。ここ数年で起きた電子書店の閉鎖と、ユーザーの救済措置についてまとめてみます。

ここ数年で起きた電子書店の閉鎖と、ユーザーの救済措置

SCE、PSP向けコミック配信を年内で終了 – ITmedia eBook USER ※2012年2月15日

  • ダウンロード済みコンテンツは、端末が壊れるまで読み続けられる(「Media Go」でバックアップもできる)
  • Reader Storeで利用できるクーポンが、これまでの購入額に応じて配布された

楽天の電子書籍サービス「Raboo」が終了へ – ITmedia eBook USER ※2012年9月26日

  • ダウンロード済みコンテンツは、端末が壊れるまで読み続けられる
  • Rabooでのコンテンツ購入金額10%相当の楽天スーパーポイントを全員に付与
  • UT-PB1・Sony Reader利用者には楽天スーパーポイントを200ポイント付与
  • 楽天Koboへの登録で、Rabooでのコンテンツ購入代金の40%相当の楽天スーパーポイントを付与
  • 楽天Koboへの登録で、kobo Touch 3000円割引クーポン付与

この時は、eBookJapanがRabooユーザーの救済に名乗りを上げ、話題になりました。

BIGLOBEアプリ「TOP BOOKS」サービス終了のお知らせ ※2013年7月23日

  • ダウンロード済みコンテンツは、端末が壊れるまで読み続けられる
  • その他救済策があったかどうかは不明(なにしろ主要メディアでニュースにすらなっていない)

エルパカBOOKS、電子書籍配信サービス終了へ――Pontaポイントで返金 – ITmedia eBook USER ※2014年1月6日

  • サービス終了と同時に、購入済みコンテンツの閲覧も不能になる
  • コンテンツ購入金額相当をすべてPontaポイントで返金

この時は、楽天KoboがエルパカBOOKSユーザーの救済に名乗りを上げ、話題になりました。

地球書店、閉店へ――コミックシーモアのポイント進呈措置を用意 – ITmedia eBook USER

  • ダウンロード済みコンテンツは、端末が壊れるまで読み続けられる
  • コンテンツ購入金額相当をすべてコミックシーモア(同じNTTソルマーレが運営する別サービス)のポイントで返金

いずれの場合も、サービス終了後も読み続けられたり、そうじゃなくてもポイント返金してたりと、それなりの対応をしてきているのが分かります。それだけに、当初のヤマダイーブックのお知らせは「史上最悪の対応」と言われても仕方のない内容でした。

ヤマダ電機はその日のうちに方針転換した

ところが驚いたのが、ヤマダ電機が話題になったその日のうちに方針を転換し、ユーザーを救済することにした点。「慌てて火消しに走った」「最初からやっとけ」などとも言われていますが、間違えちゃったことを即座に認め、即座に動けるのは凄いことだと思います。

「買った電子書籍が無駄になる」は「記載不備」 ヤマダイーブックがサービス終了告知についておわび – ITmedia eBook USER

新サービスへの継続にご承諾いただけないユーザー様に関しましては、お手持ちのイーブックポイント残高相当をヤマダポイント付与という形で対応させていただきます。

また、ダウンロードされたコンテンツに関しましては、新サービスへ移行後も、引き続き閲覧ができるよう、調整を行っております。

新サービスへの移行に伴いましては、既存ユーザー様の不利益とならぬよう、十分に配慮した形で対応を行ってまいります。

http://www.yamada-denki.jp/topics/download.t.pdf/783

ところで、ヤマダイーブックはヤマダ電機が直接運営していたわけではなく、smartebook.com(旧フォーサイド・ドット・コム)が委託されていたサービスです。

既存ユーザーの救済はいいのですが、両社の費用負担がどのような配分になったのかが少し気になるところです。

ちなみに、smartebook.com(※Internet Archive) 直営の mobi-book(※Internet Archive)

mobi-book

気がついたらサービス終了していました。smartebook.comのIR情報(※Internet Archive)(※魚拓)も凄まじい状態になっていて

smartebook.comのIR情報

……なんだか涙が出てきそうです。大丈夫なんでしょうか?

smartebook.com の後を引き継ぐのが、どの企業なのかも気になるところです。ACCESS、インフォシティ、シャープ、ボイジャー……さてはて、さてはて。

出版社による独自の救済措置も

もう一つ驚いたのが、『「買った電子書籍が無駄になる」は「記載不備」 ヤマダイーブックがサービス終了告知についておわび – ITmedia eBook USER』の最後で紹介されている、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンの対応。

一方で出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンはこの騒動を受け、外部の電子書籍ストアがサービスを停止した場合に、ユーザーが購入した同社のコンテンツを無償で提供するサービスを発表した。購入を証明できる電子メールなどがあれば、同社のサイトからepubデータをダウンロードできる。

なんと素晴らしい対応。

なお、ディスカヴァー・トゥエンティワンの直営ストアは2014年4月のリニューアル以降、DRMフリーで配信(※EPUBファイル内にメールアドレスと追跡番号が埋め込まれている)されています。オライリー・ジャパン達人出版会のような技術書以外でも、版元自らDRMフリーで配信を行うところが登場していることは、時代の変化を感じます。

以前からの事例としては、KADOKAWA直営のBOOK☆WALKERが「本棚連携」という形で、万が一の場合に備えた救済措置を用意してたりします。

電子書店閉鎖騒動が起きるたびに「だからAmazonみたいに大きいところしか信用できないんだ」という声が挙がったりしますが、ちゃんとこういう動きをしている企業もあるということがもっと認知されればいいのに、と思います。生き残っているサービスには、やはり生き残るだけの理由がちゃんとあるのです。

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