松任谷正隆さんの「レンジローバー イヴォーク」に対する第一印象は、サイアクだったという。2008年に「ランドローバーLRXコンセプト」として発表された時には、「バカ、と思いましたもん」と笑う。
「僕は、1987年からオリジナルの初代『レンジローバー』に乗り始めました。その時、グラスエリアの広さがレンジのよさだと思ったのです。上半身が外から丸見えになるぐらいウエストラインが低くて、開放感がある。第2世代にも乗りましたが、そのよさは変わっていなかった」
一方、LRXコンセプトはグラスエリアの狭さがデザイン上の特徴だった。
「何を血迷ったんだ、魅力が3分の1に減ったじゃないか、と憤りました」
ところが、こんなにネガティブな印象を持ったクルマを購入するのだから面白い。
「生産型のイヴォークがロンドンでお披露目された2010年頃から気持ちが変化して、この形が日本の道を走ったら面白いと思うようになったんです」
ただし、どうして気持ちが変わったのかはご自分でもわからないという。 「クルマってそういうものだから、としか説明できないですね。同じことが、パトリック・ルケモンがデザインを統括した初代『ルノー・メガーヌ』でもありました。あんなに気持ちが悪いと思ったデザインが、いつしか大好きになっていた」
拒否反応が強ければ強いほど反動は大きく、メガーヌもイヴォークも「好き」の方向へ一気に針が振れたという。
3台のレンジローバーを乗り継いだ松任谷さんは、「オリジナルに近いモデルのほうが価値がある」という理由から、その後「ランドローバー・ディフェンダー」に乗り換えている。12年間の長きにわたって愛用したディフェンダーは「ぴったりきた」そうだけれど、これをイヴォークに乗り換えることに決めた。
「基本設計の古い4リッターのV8エンジンを回すのは環境面でも気が引けるので、これ以上乗り続けるのもなぁ……と感じていたんです。ダウンサイジングしたエンジンの2リッターという排気量もサイズ感も、いまの自分にちょうどいいと思えました」
こうしてイヴォークを購入することが決まったけれど、ここからが大変だった。