テレビ東京の番組で曜変天目茶碗と鑑定された徳島市の男性所有の陶器

テレビ東京の番組で曜変天目茶碗と鑑定された徳島市の男性所有の陶器

 テレビ東京の番組「開運!なんでも鑑定団」で、徳島市の男性が所有する陶器が世界で4点目の「曜変天目茶碗」と鑑定され、真贋論争が起こっている問題で、奈良大が行った陶器の成分分析に対し、曜変天目研究家の陶芸家・長江惣吉さん(54)=愛知県瀬戸市=が異論を唱えている。「同大の機器では正確な結果が出ない」などとする内容で、分析の欠陥を指摘。奈良大側は指摘を認めながらも「結果に変わりはない」としている。

 長江さんは昨年12月20日に放送された番組を受け、この陶器は中国で作られる模倣品と酷似した偽物だと訴えてきた。その根拠として、陶器の外側に曜変天目にはない斑紋があることなどを挙げ、斑紋の色合いなどから18世紀以降に開発された複数の化学顔料が使われているのではないかと主張してきた。

 奈良大が2月に行った分析では、物質に含まれる元素を検出する蛍光X線分析装置を使い、茶碗表面の色ごとにX線を当てて元素の種類と量を調べた。その結果、赤い色を出すセレンや青の発色に関わるコバルトなど、化学顔料に使われる元素は発色に影響を与えない程度のごくわずかな量しか検出されず、どの色にX線を当てても成分に大きな違いがないことが分かった。

 これに対して長江さんは、奈良大の詳細な分析結果を取り寄せた上で▽緑の元素であるクロムを正確に検出できない機器で分析しており、全体の結果も信用し難い▽黒の部分から宋代の釉薬で検出されるはずのマンガンが出ていない-など、18世紀以降の化学顔料はほとんど使われていないとする同大の分析結果に再反論している。

 分析に当たった奈良大の魚島純一教授(保存科学)は、クロムを正確に検出できない機器で分析したことや黒の部分からマンガンが出ていないことを認めた。その上で、化学顔料に使われるセレンなど他の元素はほとんど検出されておらず、分析結果に影響を与えないと主張。「陶器が偽物だと断定できなくなった結果に変わりはない」と話している。