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2008年09月25日 11:24
サバイバー - チャック・パラニューク
「author of Fight Club」。
デヴィッド・フィンチャー監督が映画化した「ファイト・クラブ」の作者であるチャック・パラニュークの2作目の長編小説。まずあの映画「ファイト・クラブ」にきちんとした原作があったことを全く知らなくて、しかもその映画が原作にしっかり忠実だったという評判。それは凄い。作者の本の中から文庫化していて入手しやすいこの「サバイバー」をピックアップして読んでみました。
集団自殺したカルト教団の生き残りである主人公が、マーケティングによってメディアの寵児となり翻弄される。教団での生活とその教義、外界に出てからの住み込みの仕事、自殺者の電話相談、万引き依存症、謎の少女、トークショーを渡り歩く教祖生活、こうして作中に出てくる要素のさわりを並べるだけではただ突飛なだけですが、カート・ヴォネガットを思わせるような軽妙な語り口でストーリーとして繋がっていく様は本当に見事。
文明から隔絶して成長した、カルト教団の最後の生き残りである主人公の目に映る、現代アメリカの物質主義、セックス、宗教、メディア。その中で生きる虚無感・閉塞感を、笑いで厚くコーティングしながらも徹底的にシニカルに描きます。説教感はゼロでスピード感は満点。「ジェネレーションX」とか言ってしまうと途端に陳腐になりますが、このすさまじい同時代感、言葉1つ1つに惹き付けられます。
旅客機をハイジャックした主人公が墜落を待つ中でブラックボックスに向かって半生を語りかける、というスタイルの文章。「ファイト・クラブ」が映画化してヒットしたことから、この「サバイバー」も映画化権が争奪され映画製作が進められたそうですが、その後に9.11同時多発テロ事件が起こり、当時の過剰な自粛ムードの中「旅客機をハイジャック」というくだりが嫌われ、映画化の話はいったん立ち消えになったそうです。今はまた別の筋から映画化の話が復活したようで、「コンスタンティン」のチームが動いていると報道されています。
帯じゃなくて表紙に直接「author of Fight Club」って書かれてます。昔の洋楽の邦盤シングルレコードじゃないんだから、日本はひどいなー、と思いつつアメリカでの本の表紙を見たら、全く同じことが書いてあって、しかも他の本にもほぼ全部に「author of Fight Club」と書いてありました。
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Review : 2008年09月25日 11:24
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