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産学連携デザインセミナー        デ ザ イ ン 科 学 科
                                                    2012活 動 報 告 展


      ユーザー体験価値から発想する
      デザイン経営の事例と手法
            
                 〜発表資料抜粋〜




                          千葉工業大学 デザイン科学科	
                          Chiba Institute of Technology Department of
                          Design	
                          安藤 昌也
                          ando@sky.it-chiba.ac.jp	
Copyright © Masaya Ando
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              安藤 昌也	
              ANDO Masaya, Ph.D.	

              千葉工業大学  工学部  デザイン科学科 准教授
              早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。NTTデータ通信(現、NTTデータ)を経て、
              1998年 アライド・ブレインズ株式会社の取締役シニアコンサルタント。早稲田大学、
              国立情報学研究所、産業技術大学院大学など経て、2011年より現職。博士(学術)。
              専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)の研究者。

              人間工学ISOの国内委員、人間中心設計推進機構 (HCD-net)理事を務める。

              認定人間中心設計専門家 / 認定専門社会調査士	
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   千葉工業大学  工学部  デザイン科学科




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ユーザー体験価値から発想するデザイン経営の事例と手法 
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                          デザイン思考

                                   


                          ビジネスアイディア
                             の開発
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   千葉工業大学 エクスペリエンス系研究室
                                       デザイ                調査・
                                           ン                  分析
                                       力点                  力点
              スマイルエクスペリエンス	
                   エクスペリエンスデザイン	
                デザイン研究室	
                         計画研究室	




                          山崎 和彦 教授	
               安藤 昌也 准教授	
                          デザイナー出身	
                マーケティング出身	




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                          “体験”こそ製品




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   “体験”こそ製品
   n 1888年イーストマン・コダックが開発したカメラとフィルム
      は、その技術よりも体験そのものが革新的だった。	




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   “体験”こそ製品
   n iPodの成功は言うまでもない。iPodは、音楽を聴く機能
      ではなく、体験そのものをデザインした。	



                                   iTunse  Music  Store
                                         (入手)




                           iPod
                          (プレイ)   iTunse
                                  (管理)

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   “体験”こそ製品
   n Starbucksは、顧客のほっとした一時の体験を提供する
      ことに集中している。	




(出所:http://www.starbucks.co.jp/company/customers.html)	
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   “体験”こそ製品                                                      (Merholz, et al., 2008)	




       不確実な世界ですばらしい製品やサービスを送り出
       すにはどうすればいいのだろうか。	
 
       	
 
       心に留めるべきは、顧客とその能力、ニーズ、欲求
       を、うわべだけでなく真摯に肝に銘じておくことだ。	
                               Peter Merholz	
       	
 
       これができた時、そして顧客に心から共感できた時、
       顧客にとって体験こそ、我々が送り出すべき製品だ	
 
       顧客にとって体験こそ、我々が送り出すべき製品だ
       ということに気付くだろう。そして、顧客の真の関
       心事はそれしかないということに。	
 
                          	
 (Merholz, et al., 2008, p.12)	
 




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                          なぜ“体験”なのか?




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   経済価値の進展としての経験 (Pine  &  Gilmore,  1999)

      差別化 大	
                                                                                   妥当性あり	
                                                                               変 革
                                                       カスタマイゼーション	
            (誘 導)	


                                                                   経 験
                                           カスタマイゼーション	
            (演 出)	
          競                                                                                          消
          争                                                                                          費
                                                                             コモディディ化	
               者
          条                      カスタマイゼーション	
                                                        サービス
          件                                              (提 供)	




                                                                                                     ー 	
          	




                                             製 品               コモディディ化	
                                             (製 造)	


                             コモディティ                コモディディ化	
                                 (抽 出)	
       差別化 小	
                                                                                  妥当性なし	

                          低い	
                                                           高い	
                                                       価格	

                                                                                     (出所:『(新訳) 経験経済』, p. 178)	
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   経済価値の進展としての経験 (Pine  &  Gilmore,  1999)

      経済価値	
              コモディティ    製  品     サービス        経  験            変  革
   経済システム	
               農業経済	
   産業経済	
   サービス経済	
    経験経済	
        変革経済	
    経済的機能	
                抽出	
     製造	
      提供	
       演出	
            誘導	
   売り物の性質	
 代替できる	
                形がある	
    形がない	
    思い出に残る	
         効果的	
    重要な特性	
                自然	
     規格	
    カスタマイズ	
    個人的	
           個性的	
                                                        一定期間	
        長期間	
      供給方法	
              大量貯蔵	
    在庫	
    オンデマンド	
                                                         見せる	
        維持する	
                                             サービス	
         売り手	
            取引業者	
   メーカー	
            ステージャー	
  ガイド	
                                             事業者	
       買い手	
               市場	
    ユーザー	
   クライアント	
   ゲスト	
  変革志願者	
      需要の源	
               性質	
    特徴(機能)	
   便益	
     感動	
     資質	


                                                            (出所:『(新訳) 経験経済』, p. 186)	


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   消費の意味の捉え方の変化



                          ニーズ        充    足                       価  値
     消
     費               生活における	
      商品やサービスの             価値は企業に	
                     不足や不満	
        選択と購買	
            よって与えられる	
     	




     経
     験                    欲    求     実    現                      価  値
     消               生活における	
      商品やサービスを	
           価値はユーザが	
     費                自己創造	
        手段とした経験	
           参加して生み出

     	




                                                          される	

Copyright © Masaya Ando                         http://web.econ.keio.ac.jp/staff/takeyama/ee/1.pdf
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   体験に基づく商品開発のトレンド~エスノグラフィ
n 文化人類学の手法を応用し、フィールドワークに基づいて
   ユーザの体験を把握する手法に注目が集まっている。

           l 文化人類学、社会学の研究手法
                   •  外国や原始文化の人々の視点で、彼
                      らの文化を理解するための手法として
                      1800年代に開発。

           l ビジネス分野で応用が進展
                   •  需要創造型の製品開発の手法として
                      米国の成功事例を背景に、国内でも
                      徐々に採用企業が増加。


            不確実性の高いビジネス環境において
         機会探索・仮説発見型のアプローチとして高評価
Copyright © Masaya Ando
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            2	
                    ユーザー体験価値から発想する
                      ビジネスアイディアとは?




Copyright © Masaya Ando
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                          ユーザー体験が把握できれば
                           よいビジネスアイディアが
                             生まれるのか?




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   事実からアイディアに結びつける“発想の山”

 抽象	




                 調査結果

 具体	

     調査結果から本当は何ができたらよいかを発想
     だが、そもそもどんな体験を調査すればいいか?
Copyright © Masaya Ando
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   クイズ: このサービスの提供企業はどこでしょう?




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   クイズ: このサービスの提供企業はどこでしょう?




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   答え: クロネコヤマト




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   答え: クロネコヤマト




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   クロネコヤマトのメンテナンス支援ビジネスの構造

                                          既存ビジネス    個別訪問による	
                                                    宅配便ビジネス	
                                           ドメイン




 人と人、人と組織の                               ビジネス提供     人と人、人と組織の
                          ユーザー体験
 面倒なやりとりを任                                 価値の      間を個別に取り持て
 せられる価値	
                 価値の抽出                     る	
                                         リフレーミング




                                   故障機器の修理依頼はたらい
                          ユーザーの    回しされて面倒	
                          日常の実践    保証書どこかにいってしまって
                                   連絡先わからず	

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   クロネコヤマトのメンテナンス支援ビジネスの構造

                                         既存ビジネス    個別訪問による	
                                                   宅配便ビジネス	
                                          ドメイン




 人と人、人と組織の                               ビジネス提供    人と人、人と組織の
                          ユーザー体験
 面倒なやりとりを任                                 価値の     間を個別に取り持て
 せられる価値	
                 価値の抽出                    る	
                                         リフレーミング




                                   故障機器の修理依頼はたらい
                ユーザーの              回しされて面倒	
            ビジネスのコアコンピタンスをユーザー体験の
                日常の実践 保証書どこかにいってしまって
            視点で捉え直し体験価値を絞り込むことが重要
                     連絡先わからず	

Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~富士フイルム




                          “健康を気遣う”をサポートする
Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~富士フイルム
   n 「健康を気遣う」をキーワードに、ビジネス提供価値と
      マッチするユーザー体験価値を発見するワークショップ。	




                          2011年12月1日, 「エスノグラフィック・デザインアプローチ~フィールドデータの分析法」, 富士フイルム株式会社 デザインセンター, ワークショップ	
Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~ケーブルテレビ
   n (社)ケーブルテレビ連盟	
              “安心・安全に備える”




                          2012年2月8日、9日, 「サービスデザインワークショップ」, 社団法人日本ケーブルテレビ連盟, 経営委員会 若手部会, ワークショップ	
Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~ナカダイ
   n 群馬県の産廃業のナカダイは、「廃棄物は分別のデザ
      イン」とリフレーミングしユニークな取り組みを展開。	




Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~ナカダイ




Copyright © Masaya Ando   (出所:山崎和彦先生のブログ:http://kazkazdesign.blogspot.com/)
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   ユーザー体験でのリフレーミングの例~ナカダイ




Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験価値発想のビジネス企画のポイント
   l エスノグラフィなどでユーザー体験を抽出する
           –  ユーザー体験価値には3つある。共感性の高い価値を見つけ
              ることが重要。
                   l あるある: 多くの人がよく感じる感情や問題点
                   l そうそう:  普段忘れがちだが、多くの人が共感する感情や課題
                   l  へー :  一部の人、またはある状況になると起こりうる感情や課題


   l ビジネス提供価値をユーザー体験でリフレーミングする
           –  既存のビジネスを機能ではなく、ユーザー視点でどんな価値を
              実現しているかで捉えなおす、定義しなおす。


   l 両者の検討を繰り返し行い、ユーザーとビジネスがマッチ
      するコンセプトアイディアを発想する
Copyright © Masaya Ando
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            3	
                          ユーザー体験価値に着目した
                            産学連携デザイン事例




Copyright © Masaya Ando
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   ユーザー体験のフォーカスとデザインの対象
   n ユーザー体験のどこにフォーカスするかによって、力点
      を置いてデザインすべき対象領域が変わる。	
UXD	
                          長期に渡る製品との関わりに着目した   •  商品としての意味	
                                              •  生活におけるモノの意味・価値	
                      意味的・累積的UXのデザイン
                                              •  ブランド、商品の物語	



                          一定期間の製品との関わりに着目した   •  新しい体験を生み出す機能	
                          エピソード的UXのデザイン       •  新しい文脈での利用法	



                          製品との一時的な関わりに着目した    •  快適な操作感・利用感・応答	
                                              •  わかりやすさ、理解しやすさ	
                      一時的・瞬間的UXのデザイン
                                              •  デザインの美しさ	

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35

   ユーザー体験に基づくデザインと産学連携事例
   n ユーザー体験のどの部分をトリガーにデザインするかに
      よって、3つのタイプに分けられる。	

     長期に渡る製品との関わりに着目した       (株)デンソー
                          次世代ソーシャルモビリティ	
    意味的・累積的UXのデザイン
                             コンセプト開発	



     一定期間の製品との関わりに着目した     (株)日本メディックス
        エピソード的UXのデザイン        医療福祉機器の	
                            アドバンスデザイン	


       製品との一時的な関わりに着目した    メディアキュート(株)
    一時的・瞬間的UXのデザイン         スマートフォンAndroid 

                          ユーザインタフェース開発	

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                          (事例部分は割愛させて頂きます)	




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37




            4	
                          手法と教育




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   ユーザー体験からビジネスアイディアを導く諸手法

                             l  ユーザー行為の観察・インタビュー	
            ユーザーの体験価値        l  エスノグラフィ	
            を探索するフェーズ	
      l  KA法による価値モデリング、上位下位分析	
                             l  ペルソナ/問題シナリオ	

                             l  製品・サービスアイディア	
              コンセプトアイディア
                             l  バリューシナリオ	

                             l  アクティングアウトによる体験のスケッチ	
        実現すべきユーザー体験と         l  アクティビティシナリオ	
          その効果の可視化           l  ユーザージャーニーマッピング	

                             l  プロトタイピング/モックアップ	
                企図した体験を
                             l  サービスブループリント	
                実現するフェーズ	
                             l  ユーザーテスト	


Copyright © Masaya Ando
39

   KA法
   n KA法は、調査結果それぞれの事実の背後にある“ユー
      ザーにとっての価値”を抽出。	
                                           KAカード	
                                                       (ID: 004-26)	
 
                             出来事	
 
             調査              エコ走行のインジケータが付いてて、今ま
             結果              で の 運 転 が す ご い ガ ソ リ ン 使 って た な と
                             思った。今はエコのラインを超えないよう
                             に運転するのが楽しい。	
 
                             心の声	
            価値       	
 
                             エコな運転って楽し エコな運転を楽し
                             いわ	
      む価値



                          どんな小さな行為にも背景には価値は存在する
                          =  ユーザ行為の背景にある“価値”を導出できる
Copyright © Masaya Ando
40

   KA法〜写真を使った分析
   n KA法の最大の特徴は、たった一つの、どんなに小さな
      出来事にも価値があるという考え方に立っている。	




                          できていないことは、ポジティブな
            “動詞+価値”で表現することで体験の価値を導出
                           価値表現にして未充足とする
Copyright © Masaya Ando
41




                          千葉工業大学 デザイン科学科
                           情報デザインコースにおける
                           ユーザー体験デザイン教育




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42

   千葉工業大学でのUXD教育の取り組み
   n 情報デザインコースでのUXDは「時間の概念を扱える」
      ことを一つの目標に演習などを実施している。	
                             2年生	
                                      3年生	
       情報デザイン基礎	
                    情報デザイン演習	
                     情報デザイン演習 他	




                                    コミュニケーションデザイン演習	




                                                                   フィジカル	
                                                               コンピューティング	
                                            Web	
                          Flash	
                     情報デザイン論	
                  デジタル表現	
                                                                  ユーザー工学	
      テクノロジーアート	
            ヒューマンインタフェース論	
            認知科学	
       デザイン解析	

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43

   千葉工業大学でのUXD教育の取り組み
   n 情報デザインコースでのUXDは「時間の概念を扱える」
      ことを一つの目標に演習などを実施している。	
                             2年生	
                                     3年生	
       情報デザイン基礎	
                    情報デザイン演習	
                    情報デザイン演習 他	




                                                                 意図したユーザ体験
                                                                 を実現できるような
                                       ユーザとモノの                   インタラクションが
                                     相互作用のあり方                     デザインできる
                                         からモノを
                                    コミュニケーションデザイン演習	

      ユーザとモノの                          デザインできる
       相互作用を
      経時的に捉え
                                                                  フィジカル	
       表現できる                                                  コンピューティング	
                                           Web	
                          Flash	
                    情報デザイン論	
                  デジタル表現	
                                                                 ユーザー工学	
      テクノロジーアート	
            ヒューマンインタフェース論	
            認知科学	
      デザイン解析	

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   本日のまとめ
         ユーザー体験価値から発想するビジネスアイディアに	
        ついて、事例を紹介しつつその考え方のポイントを示した	
   1.  製造業・サービス業を問わず、ユーザー体験を捉え、
       ビジネスに活かすのは時代の不可避なながれ。
   2.  ユーザー体験を把握し、そこから発想するだけでは難
       しい。むしろ、ビジネスのコア・コンピタンスをユーザー
       体験の視点で捉え直すことが重要。
   3.  捉え直したビジネスのコアと、調査で見えてきたユー
       ザー体験価値を徐々に絞り込んでいくプロセスが大切。
   4.  ユーザー体験からデザインする手法や教育は緒につ
       いたばかり。日々研究と努力を重ねている。	
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45

   本日の資料を公開します  (一部抜粋)
   n SlideShare
          http://www.slideshare.net/masaya0730	




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   プレゼンテーションに関するお問い合わせ
   n 安藤研究室は、総武線津田沼駅
      3分の千葉工業大学津田沼キャ
      ンパスにあります。
      お近くにお寄りの際はぜひ!	



                     l 安藤個人宛 連絡先
                          Mail: ando@sky.it-chiba.ac.jp
                                 masaya.ando@gmail.com
                         Twitter: masaya21
                          Facebook: masaya ando
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  • 1. 産学連携デザインセミナー デ ザ イ ン 科 学 科 2012活 動 報 告 展 ユーザー体験価値から発想する デザイン経営の事例と手法                   〜発表資料抜粋〜 千葉工業大学 デザイン科学科 Chiba Institute of Technology Department of Design 安藤 昌也 [email protected] Copyright © Masaya Ando
  • 2. 2 安藤 昌也 ANDO Masaya, Ph.D. 千葉工業大学  工学部  デザイン科学科 准教授 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。NTTデータ通信(現、NTTデータ)を経て、 1998年 アライド・ブレインズ株式会社の取締役シニアコンサルタント。早稲田大学、 国立情報学研究所、産業技術大学院大学など経て、2011年より現職。博士(学術)。 専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)の研究者。
 人間工学ISOの国内委員、人間中心設計推進機構 (HCD-net)理事を務める。
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  • 25. 25 クロネコヤマトのメンテナンス支援ビジネスの構造 既存ビジネス 個別訪問による 宅配便ビジネス ドメイン 人と人、人と組織の ビジネス提供 人と人、人と組織の ユーザー体験 面倒なやりとりを任 価値の 間を個別に取り持て せられる価値 価値の抽出 る リフレーミング 故障機器の修理依頼はたらい ユーザーの 回しされて面倒 ビジネスのコアコンピタンスをユーザー体験の 日常の実践 保証書どこかにいってしまって 視点で捉え直し体験価値を絞り込むことが重要 連絡先わからず Copyright © Masaya Ando
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  • 33. 33 3 ユーザー体験価値に着目した 産学連携デザイン事例 Copyright © Masaya Ando
  • 34. 34 ユーザー体験のフォーカスとデザインの対象 n ユーザー体験のどこにフォーカスするかによって、力点 を置いてデザインすべき対象領域が変わる。 UXD 長期に渡る製品との関わりに着目した •  商品としての意味 •  生活におけるモノの意味・価値 意味的・累積的UXのデザイン •  ブランド、商品の物語 一定期間の製品との関わりに着目した •  新しい体験を生み出す機能 エピソード的UXのデザイン •  新しい文脈での利用法 製品との一時的な関わりに着目した •  快適な操作感・利用感・応答 •  わかりやすさ、理解しやすさ 一時的・瞬間的UXのデザイン •  デザインの美しさ Copyright © Masaya Ando
  • 35. 35 ユーザー体験に基づくデザインと産学連携事例 n ユーザー体験のどの部分をトリガーにデザインするかに よって、3つのタイプに分けられる。 長期に渡る製品との関わりに着目した (株)デンソー 次世代ソーシャルモビリティ 意味的・累積的UXのデザイン コンセプト開発 一定期間の製品との関わりに着目した (株)日本メディックス エピソード的UXのデザイン 医療福祉機器の アドバンスデザイン 製品との一時的な関わりに着目した メディアキュート(株) 一時的・瞬間的UXのデザイン スマートフォンAndroid 
 ユーザインタフェース開発 Copyright © Masaya Ando
  • 36. 36 (事例部分は割愛させて頂きます) Copyright © Masaya Ando
  • 37. 37 4 手法と教育 Copyright © Masaya Ando
  • 38. 38 ユーザー体験からビジネスアイディアを導く諸手法 l  ユーザー行為の観察・インタビュー ユーザーの体験価値 l  エスノグラフィ を探索するフェーズ l  KA法による価値モデリング、上位下位分析 l  ペルソナ/問題シナリオ l  製品・サービスアイディア コンセプトアイディア l  バリューシナリオ l  アクティングアウトによる体験のスケッチ 実現すべきユーザー体験と l  アクティビティシナリオ その効果の可視化 l  ユーザージャーニーマッピング l  プロトタイピング/モックアップ 企図した体験を l  サービスブループリント 実現するフェーズ l  ユーザーテスト Copyright © Masaya Ando
  • 39. 39 KA法 n KA法は、調査結果それぞれの事実の背後にある“ユー ザーにとっての価値”を抽出。 KAカード (ID: 004-26) 出来事 調査 エコ走行のインジケータが付いてて、今ま 結果 で の 運 転 が す ご い ガ ソ リ ン 使 って た な と 思った。今はエコのラインを超えないよう に運転するのが楽しい。 心の声 価値        エコな運転って楽し エコな運転を楽し いわ む価値 どんな小さな行為にも背景には価値は存在する =  ユーザ行為の背景にある“価値”を導出できる Copyright © Masaya Ando
  • 40. 40 KA法〜写真を使った分析 n KA法の最大の特徴は、たった一つの、どんなに小さな 出来事にも価値があるという考え方に立っている。 できていないことは、ポジティブな “動詞+価値”で表現することで体験の価値を導出 価値表現にして未充足とする Copyright © Masaya Ando
  • 41. 41 千葉工業大学 デザイン科学科 情報デザインコースにおける ユーザー体験デザイン教育 Copyright © Masaya Ando
  • 42. 42 千葉工業大学でのUXD教育の取り組み n 情報デザインコースでのUXDは「時間の概念を扱える」 ことを一つの目標に演習などを実施している。 2年生 3年生 情報デザイン基礎 情報デザイン演習 情報デザイン演習 他 コミュニケーションデザイン演習 フィジカル コンピューティング Web Flash 情報デザイン論 デジタル表現 ユーザー工学 テクノロジーアート ヒューマンインタフェース論 認知科学 デザイン解析 Copyright © Masaya Ando
  • 43. 43 千葉工業大学でのUXD教育の取り組み n 情報デザインコースでのUXDは「時間の概念を扱える」 ことを一つの目標に演習などを実施している。 2年生 3年生 情報デザイン基礎 情報デザイン演習 情報デザイン演習 他 意図したユーザ体験 を実現できるような ユーザとモノの インタラクションが 相互作用のあり方 デザインできる からモノを コミュニケーションデザイン演習 ユーザとモノの デザインできる 相互作用を 経時的に捉え フィジカル 表現できる コンピューティング Web Flash 情報デザイン論 デジタル表現 ユーザー工学 テクノロジーアート ヒューマンインタフェース論 認知科学 デザイン解析 Copyright © Masaya Ando
  • 44. 44 本日のまとめ ユーザー体験価値から発想するビジネスアイディアに ついて、事例を紹介しつつその考え方のポイントを示した 1.  製造業・サービス業を問わず、ユーザー体験を捉え、 ビジネスに活かすのは時代の不可避なながれ。 2.  ユーザー体験を把握し、そこから発想するだけでは難 しい。むしろ、ビジネスのコア・コンピタンスをユーザー 体験の視点で捉え直すことが重要。 3.  捉え直したビジネスのコアと、調査で見えてきたユー ザー体験価値を徐々に絞り込んでいくプロセスが大切。 4.  ユーザー体験からデザインする手法や教育は緒につ いたばかり。日々研究と努力を重ねている。 Copyright © Masaya Ando
  • 45. 45 本日の資料を公開します  (一部抜粋) n SlideShare http://www.slideshare.net/masaya0730 Copyright © Masaya Ando
  • 46. 46 プレゼンテーションに関するお問い合わせ n 安藤研究室は、総武線津田沼駅 3分の千葉工業大学津田沼キャ ンパスにあります。 お近くにお寄りの際はぜひ! l 安藤個人宛 連絡先 Mail: [email protected] [email protected]     Twitter: masaya21 Facebook: masaya ando Copyright © Masaya Ando