声が大きな人の時代が終わる
2011年1月31日(月) 7:46:39
ボクの後輩の京井良彦くんが、年末に本を出した。
この日にチラッと触れているのだが、幸いとても評判がいい本のようなのでもう一回プッシュしておきます。
「ロングエンゲージメント」(京井良彦著/あさ出版/1470円)
彼は会社でボクがリーダーをしているサトナオ・オープン・ラボのラボ員である。ソーシャルメディアのことをみんなで一緒に研究してきたこともあり、巻末に以下のような推薦文を書かせていただいた。
マス・マーケティング全盛の時代、広告会社では「声が大きな人」が主導権を握っていた。物理的に声が大きいだけでなく、我が強く押しも強い、いわゆる「ハッタリが利く人」の意見が通りやすかったのである。これはある意味とても象徴的なことだったと思う。つまり、数百万人という大きな塊に対してインパクト強くアテンションを喚起しなければ伝わらなかったあの時代、多少ハッタリめいていても、大きな声を出して目立つことが広告でも尊ばれたからである。ええと、みなさま、どうぞよろしくw
共感の時代はそうはいかない。
この本の題名のような「ロング・エンゲージメント」を築く場合には特にそう。企業が大声で自分をアピールするだけでは嫌われてしまう。もっと静かで謙虚で誠意あるつきあいを生活者としていかなければ、共感関係は長続きはしない。アテンションを与えてこちらを振り向かせていれば伝わった時代は終わろうとしているのである。
このことは、アテンションを得意分野としてきた広告会社にはわりと深刻な問題だ。広告でインパクト強く、そして効率よく伝えることに血道を上げてきた分、なかなか舵を大きく切ることができないし勇気もいる。そんな時代、どういう姿勢で取り組み、どういうアプローチが必要になってくるのか、この本は事例とともに親切に、わかりやすく教えてくれる。
このように、大きくそして急速にコミュニケーションが変化していっている中、生活者を相手にするすべてのコミュニケーションは実験的にならざるを得ない。前例も成功体験もないからである。その実験をやる部署がボクが主宰するサトナオ・オープン・ラボであり、著者である彼はラボ員である。ラボ員といっても頭でっかちではない。普段は営業マンとして現実に直面し、その経験を活かしてラボに参加している。この本は彼の日々の実験と考察の成果であり、共感の時代を迎えつつあるのになかなか変化できない広告業界へのエールでもある。
ちなみに彼は「声が大きな人」ではない。むしろ逆。謙虚で穏やかで人の話を傾聴する。ソーシャルメディアが広告コミュニケーションの主戦場になっていくとき、こういうタイプの人が実は主要プレーヤーになっていくんだろうな、と、いつも感じている。