デジタル・ネイティブ2G

2009年11月26日(木) 8:32:06

少し前のツイッターで suzukinao さんという方が以下のようなことをつぶやいていて、共感してRT(引用してコメントする)をした。反響が大きかった。

娘(5歳):パパ、テレビ止めて!もう一回観たい! 俺:YouTubeじゃないから止められないの 娘:なんで?…じゃ、ねこちゃんが観たい! 俺:テレビは検索できないの 娘:意味わかんない! …みなさま、これが本当のデジタルネイティブです
意味わかんない!(笑)
でも、なるほどテレビという映像配信形態に馴れてしまって疑問を持たない世代にはない発想かもしれない。というか、テレビが衰退するのも復活するのも、意外とデジタル・ネイティブが肌感覚として感じているこういう「不便さ」にキーポイントがあるのかもしれないな。不便は発明の母。ヒントがたくさん転がってるね。

デジタル・ネイティブとは、生まれたときから生活にデジタルがある人々のこと。
いまの大学1年生あたりが生まれたとき(1991年)にはもうNTT(まだ DoCoMo ですらない)の「ムーバ」という実質的な携帯第一号機があり、いまの高校1年生や2年生あたりは生まれたころ(1993〜4年あたり)にはもうモザイクやネットスケープ1.0があった。Yahoo! が出来たのが1995年だから(グーグルは1998年創業)、そのちょっと前くらいがデジタル・ネイティブの先頭走者。

この辺の世代が社会人として世の中に出てくるまでにあと4〜7年。消費者(ユーザー)の購買行動は、店頭での検索が空気みたいに当然のものとなり、ソーシャルメディアの経由が当たり前になるという意味で激変すると思うのだが、まぁそれはおいといて、第二世代のデジタル・ネイティブはまさに上記引用の世代だろう。物心ついたときには YouTube が普及しており、mixi や Facebook や Flickr や Twitter や iPhone が普通にあり、クラウドすら当たり前に利用できる環境をすでに手に入れている。しかもほとんどが「タダ」である。これらが「生まれながらに当然」な人生って…。

まぁ「それがシアワセかどうか」は難しい。
というか、アナログの爛熟期もデジタルの創生期・普及期も両方知っているボクたち世代が実は一番シアワセな気もするのだが(両方の美味しいところを選んで味わえるという意味で)、とはいえ、デジタル・ネイティブ2G(セカンド・ジェネレーション:第二世代)な彼らが社会に出てきたとき、我々は一気に年老いる。物理的にではなく、社会的に。

鉛筆と物差しで表を作り、消しゴムを大量に消費して文章を書き、机の上には黒電話があり、ファクスが先端機器だった新入社員時代を過ごした我々世代に比べて、発想も理解もやり方も消費も娯楽も大きく大きく変わってくるのがデジタル・ネイティブ2G。彼らが社会に出てくるころ、ボクたち「境目世代」はサポートに回らざるを得ないと思う。いまから準備しておかないと(せめて様々なITサービスに追いついておかないと)、真の意味で「社会のお荷物」になってしまうぞ。

うちの娘は中3で、ボクがサイトを始めた1995年に生まれたデジタル・ネイティブ第一世代。
ツイッターで同級生とグチをつぶやきあいながら勉強をし、休憩するときはリビングで YouTube を見て、Gmail でポルトガルやロンドンの友人とメールしあっている。Evernote などのクラウドも使い出すのも時間の問題だ。

さいわい父親であるボクが彼女よりもそれらを酷使しているので、まだ「教え諭す立場」を守れているし、普通にソーシャルメディア経由でコミュニケーションが取れるが、いまソーシャルメディアやらクラウドやらに乗り遅れている父母世代の方々はかなりヤバイと思う。デジタル・ネイティブ2Gあたりが相手になると、もうコミュニケーションすら取りにくくなってしまうかもしれない。

携帯メールを使えないおじいさんやファクスを使えないおばあさんをちょっと上から目線で「しょうがないなぁ」と思って今は見ているかもしれないけど、十数年後は確実にあっち側。まだ差がついてないうちに、そしてデジタル・ネイティブ2Gがガキンチョであるうちに、追いついて使いこなしておいた方がいいと思うデスよ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、[email protected] まで。

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