【国際政治経済学入門】
格差問題を取り上げた仏経済学者のトマ・ピケティの「21世紀の資本」が世界的なベストセラーになっている。そのコアは「資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」(邦訳本=みすず書房刊=の内容紹介から)と断じている点だ。
元凶はデフレ
日本はどうか。さっそくデータを調べてみた。まずは法人企業統計(財務省)の総資本経常利益率を「資本収益率」に、国内総生産(GDP)の実質成長率を「産出と所得の成長率」にみなして、それらの推移を追ってみた。興味深いことに1997年度以降、資本収益率が成長率を一貫して上回っているではないか。
それまではおおむね成長率のほうが収益率を上回ってきた。下回ったときは、石油危機やプラザ合意による急激な円高、90年代前半のバブル崩壊といった「ショック効果」によるもので、その後、成長率は1、2年で元通り収益率を上回る軌道に回帰している。ピケティの定理を前提にするなら、日本経済は97年度以降、「格差の時代」に突入したことになる。