電子と紙の書籍は共存できるのか、電子書籍市場の将来は-。昨年と今年、『死ねばいいのに』と『ルー=ガルー2』(いずれも講談社)の小説2作品を紙と電子双方で発表した作家の京極夏彦さん(48)に思いを聞いた。
--紙と電子で新刊を出した理由は?
「以前、文庫を1冊本と分冊本で同時発売した時、『分冊が売れて、厚い1冊本は売れないのでは』という意見があったが、売れ行きは変わらなかった。持ち運びに便利だけれど、全部買うと若干割高になる分冊本と、若干安いけれど厚い分持ちにくい1冊本ではニーズが異なるからだ。同じ文庫ユーザーでもこれだけ違うのだから、ハードカバーの単行本はもっと違うし、電子書籍はさらに違う。販路が多いほうが売れるわけで、(紙と電子の)同時発売があり得ないということはない」
--その結果は?
「『死ねばいいのに』は、(多機能端末)iPad(アイパッド)の発売と合わせ電子書籍を配信したので、(話題性もあって)確実にハードカバーの売れ行きが伸びた。電子書籍が出たことで紙の本が売れなくなったことはない」