東日本大震災の復興需要に牽引(けんいん)される形で、国内のセメント市場が活況を呈している。2020年の東京五輪開催決定で競技施設だけでなく首都圏の再開発も見込まれることから、今後10年ほどはセメント需要の伸びが続くとの見方もある。もっとも、バブル崩壊後の景気低迷や民主党政権による公共工事の大幅な削減を受けて各社は製造設備を絞った経緯があり、フル生産で国内分を供給しているのが現状。昨年末以降に進んだ超円高の是正で輸出環境が整う中、アジアを中心に旺盛な海外需要を取り込みたくても「輸出に回すモノがない」というジレンマにも直面している。
好調な首都圏再開発
岩手県大船渡市の太平洋セメント大船渡工場では連日、災害廃棄物を積み込むショベルカーが休む間もなく動いている。大船渡湾に面した工場は津波で大きな被害を受けたが、11年11月にセメント生産を再開した。
小池敦裕工場長によると「災害廃棄物は不燃系と可燃系に分けて運び込んでいる」という。不燃系の災害廃棄物はセメントの原料として、可燃系は1450度の熱が必要なセメントの焼成工程での燃料として使い分けるためだ。道路や建築物向けのセメントを生産するとともに、14年3月末までに計80万トンを計画する災害廃棄物の処理を進め、復興を両面から支えている。