熊本地震は平成7年の阪神大震災と同じ内陸直下型で、木造家屋に大きな影響を及ぼすタイプの揺れが強かったことが被害拡大につながった。震源付近では地盤を南北に引っ張る力が働いており、専門家は2つの活断層帯の一部が連動した可能性が高いとみている。
日本で起きる大地震は、プレート(岩板)境界が動く東日本大震災などの海溝型地震と、内陸の活断層が動く直下型地震に大別される。熊本地震は後者で、阪神大震災と類似点が多い。
東京大地震研究所の古村孝志教授の分析によると、熊本地震は周期が1~2秒の揺れと、周期が0・4~0・6秒の短い揺れの2つのタイプが強かった。
周期1~2秒の揺れは「キラーパルス」と呼ばれ、木造家屋に大きな被害をもたらす特徴があり、阪神大震災の揺れのほとんどがこのタイプだった。より短周期の揺れは崖崩れを起こしやすく、震源付近の被害状況と一致するという。
地震の規模はマグニチュード(M)6・5で阪神大震災のM7・3を下回ったが、震源付近では大きな揺れに見舞われた。震源の深さが約11キロと浅かったことに加え、阿蘇山から約30キロと近いため揺れやすい地盤だった可能性がある。
産業技術総合研究所の吾妻崇主任研究員は「阿蘇山の噴出物が分厚く堆積しているため地盤が緩く、地震の規模の割に揺れが大きくなったのでは。益城町で震度7を記録したが、周辺で震度6強が観測されておらず、地質的に特異な構造なのかもしれない」と話す。
熊本地震の背景には九州の特徴的な地質構造がある。西日本は太平洋側から海洋プレートが沈み込むため地盤を圧縮する力が働くが、九州では地盤を引っ張る地殻変動が起きている。
大分県別府市から長崎県・島原半島にかけての溝状の地形は「別府・島原地溝帯」と呼ばれ、地盤を南北方向に引き裂くような力が働く。周辺にはひずみがたまりやすく、多くの活断層があり、今回の地震はこの南端で起きた。
気象庁によると、震源は布(ふ)田(た)川(がわ)断層帯と日奈久断層帯が交差する場所で、断層は北東-南西方向に動いた。余震は両断層帯にまたがって分布していることから、古村氏は「2つの断層帯が同時に活動した可能性が高い。最初は北東側の布田川断層帯が動き、南西側の日奈久断層帯に広がったようだ」と分析する。
政府の地震調査委員会は両断層帯でいずれもM7級の地震を想定。動いたのは千年以上前で、活動歴は不明な点も多い。調査委は15日、日奈久断層帯北端の高野-白旗区間が動いたとの見解を示した。この区間ではM6・8を想定したが、確率は不明としていた。