パナソニックが1年ほど前から販売を開始した、10年間は本格的な掃除が不要というレンジフード(換気扇)が、当初予測を大幅に上回る売れ行きをみせている。販売台数は、当初の企画台数の3倍を超えるペースで推移。面倒な手入れを劇的に減らした機能性が、改めて注目されている。
商品名「ほっとくリーンフード」は、長期間ファンの手入れがいらない「ほっとく」に由来する。従来機ならファン部分に付着する油汚れを、毎回使用終了後に自動の高速回転で振り切ることで、ファンを取り外す掃除を10年間不要とした(注)。吹き飛ばした油の受け皿となるパーツの洗浄は1年に1度、食器洗い機に入れるだけで済む。普段の掃除は表面部分を水拭きする程度だ。徹底した省力化が評価され、日経新聞の2016年第1四半期新製品ランキングで総合1位を獲得した。
パナソニックが2015年に行った調査によると、主婦がキッチン掃除で最も嫌いな場所は、「レンジフード・換気扇」で49%にのぼり、2位「排水口」の18%を大きく引き離した。
理由の上位は①手が届きにくい②掃除に時間がかかる③分解するのが大変──などだ。構造がシンプルな「ほっとくリーンフード」は、こうした主婦の悩みを解決した。ワンタッチで操作でき、10年後のファンのお手入れも、従来型より約14センチ低い位置でファンの着脱をできるのが大きな特長。台などに乗る必要がなく、高齢者でも安全、簡単に作業できる設計も大ヒットにつながったようだ。
同社住建商品営業部の森氏は右肩上がりの売れ行きについてこう話す。
「レンジフードは大掃除をしても、汚れが落ちずにガッカリという方が多い。商品によっては2、3カ月に1度、ファンのお手入れが必要になります。そうした中で『10年間お掃除不要』というフレーズがお客様に一番、響いているようです。10年後も業者さんにメンテナンスを依頼する必要がなく、お手入れも簡単です。ラクウオッシュプレートと呼ばれる吹き飛ばした油の受け皿となるパーツも大掃除の機会など1年に1回、食洗機で洗うだけです。当初の企画台数は前機種の実績から想定したものですが、主婦のお困りごとを解決できる商品となったことが予想以上に伸び続けている要因だと思います」
発売から1年が経過し、評判が評判を呼ぶ形で認知度は急上昇。東京、大阪等のショウルームにはスケルトン状の見本機があり、来場者が最も関心を示す商品のひとつになった。
「お客様は、ファンが高速回転する様子を実際にご覧になり、油を振り切るからお手入れが10年に1度で済む、と納得されているようです。ファンを洗剤液に漬け置き、歯ブラシでゴシゴシこすって掃除する場合、半日がかりの作業になることもあります。これが1年に一度とは言え、結構な時間を取られますので、ご高齢の方だけでなく、30代、40代の子育てに忙しい世代の方にも人気です」(ショウルームの堀谷氏)
主婦層に圧倒的な支持を受ける同商品だが、開発のきっかけは男性社員の危機感だったという。レンジフード・換気扇の大掃除は「お父さんの仕事」というデータが一定割合あり、「いつか自分がやらされるかも」という心配が、「世の中のお父さんを苦行から解放しよう」となり、製品化された。「ファンのお手入れ不要」という最大のテーマをなかなか実現できず、お蔵入りの危機にも直面したが、「野菜の水切り機のようにファンを高速回転させれば油が吹き飛ぶのではないか」との提案があり、企画構想から3年半の歳月をかけて完成に至った。
「ほっとくリーンフード」はパナソニックのキッチン専用商品であり、他社製キッチン利用者への単品販売は行っていない。取り付けにはシステムキッチンを丸ごと交換するケースもあるが、リフォーム需要を取り込み、新築住宅への受注も好調という。システムキッチンは少なくとも100万円程度の出費を強いられるが、ユーザーの利便性を飛躍的に高める商品なら売れるという格好の見本のようだ。
(注)ファンは10年に1回、プレートは1年1回のお手入れが必要です。10年使用相当の汚れ付着での基本性能試験の値を根拠とする。(パナソニック調べ)
(提供 パナソニック株式会社)