法廷から

望まない妊娠で乳児を2度殺害 「お母さんにばらすぞ」と義父に追い込まれ

13歳のときから義父による性的虐待を受け続け、産んだ赤ちゃんに手をかけるまで追い込まれた…。新潟地裁で2月27日に開かれた裁判員裁判の判決公判。殺人と死体遺棄の罪に問われた乳児の母で愛知県半田市の無職、中村一美被告(30)に懲役4年(求刑同6年)の実刑判決が言い渡された。裁判長は「体に気をつけて務めを果たし、2人の子供の供養をしてほしい」と声を掛けた。

母の再婚…

2月21日、被告人質問が行われた同地裁。中村被告は黒のスーツの上下に髪を後ろで1つに束ね、うつむき加減で法廷に姿を現した。入廷の際、一瞬だけ天井に目をやってから唇をギュッとかみしめた。

中村被告は昭和62年生まれで、離婚した母親と一緒に新潟県糸魚川市に移り住んだ。母親は飲食店で働き、機嫌が悪いときは、「ガラスの大きい灰皿やコップを私に向かって投げた」(中村被告)。安らげる幸せな家庭ではなかった。

中村被告は幼い頃に児童養護施設に預けられたものの、7歳で施設を出て再び、母親と2人暮らしを始めた。その後、母親が義理の父となる中村栄志被告(67)=殺人と死体遺棄の罪で昨年4月に起訴=と再婚。母親の再婚について、法廷で一美被告は「本心では嫌だと思った。だけど、『いい』と答えるしかなかった」と振り返った。

13歳のときに義父から性的虐待を受け、その後も虐待は続いた。「こういう関係は普通じゃない」と思い、一美被告は虐待をやめるように訴えた。だが、義父の栄志被告は当時、こう言い放ったという。「このことをお母さんにばらすぞ。やっとつかんだお母さんの幸せを、お前はつぶすのか?」

義父は避妊具を使うことはほとんどなく、やがて一美被告は妊娠する。妊娠したと告げた際、栄志被告の反応は「おー、そうか」というものだった。出産が近づく一美被告に義父が投げかけた言葉も、信じがたいものだった。「(俺は)仕事があるから…。まあ頑張れよ」

平成15年5月上旬ごろ、義父との関係を母親に知られることを恐れた一美被告は、出産したばかりの赤ちゃんの首をビニールひもで絞めるなどして殺害した。一美被告は当時、15歳だった。

仕事から帰り、赤ちゃんを殺したと聞いた栄志被告は「殺したのか。まあ、仕方ないよな」とつぶやいたという。栄志被告は、殺された赤ちゃんの遺棄に関わったとされる。

一美被告は、性的虐待をやめるよう再び訴えた。しかし、栄志被告は「それはできない。お前は俺の中では(娘ではなく)女だから」と認めなかった。

第2の殺害

赤ちゃんを殺害した後も一美被告は何度も妊娠し、中絶を繰り返した。栄志被告と娘の関係を知った母親は、徐々にアルコールに溺れていったという。

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