亡くなった配偶者の親やきょうだいとの関係を解消する「姻族関係終了届」を出して〝死後離婚〟する人が急増している。こじれた嫁しゅうとめ関係の継続や、義理の親の介護を担うことへの不安などを背景に、専門家に相談する女性も増加傾向にある。
「あなたがしっかりしていれば、こんなに早く死なずに済んだのに!」
5年前に夫をがんで亡くした50代の女性=東京都北区=は、義母の言葉が忘れられない。夫が病気になってから、健康管理などについて責められてきた。
夫の死でショックを受けているところに、義母の心ない言葉が突き刺さった。相続の相談のため、たまたま訪れた弁護士事務所で姻族関係終了届のことを知った。法的には家庭裁判所が「特別な事情」と認めた場合を除き、義理の親を扶養する義務はない。だが、「紙切れ1枚で『絶縁宣言』できると思うと前向きになれる」と女性は言う。
手続きは市区町村の窓口に届けるだけで、相手の了解は不要だ。法務省の戸籍統計によると、平成17年度に1772件だった姻族関係終了届の提出数は、27年度に2783件に増えた。
こうした背景について、夫婦問題カウンセラーの岡野あつこさんは「配偶者の家族とのつながりが希薄になっていることの表れ」と指摘する。岡野さんの元にも5年ほど前から死後離婚に関する相談が増えてきた。
「夫が亡くなったことを自分のせいにされた」「介護に巻き込まれたくない」…。30〜50代の女性が多く、嫁しゅうとめ問題に起因するものがほとんどだ。
「夫の親と同じ墓に入りたくない」という女性も増えており、岡野さんは「縁あってつながった家族の関係。紙切れ1枚で消してしまうのは寂しい。まずはよく話し合って」と訴える。