風邪やインフルエンザの予防などで広く使われるうがい薬「イソジン」をめぐり、国内で製造販売を担ってきた明治と、開発元でブランドを保有する米製薬会社ムンディファーマが訴訟合戦を繰り広げている。両社はイソジンについて約55年前から提携関係にあり、3月末で契約満了を迎えるが、互いに4月から発売予定の新商品が消費者に混同・誤認させ不正競争防止法に違反するとして、東京地裁に不正競争行為等差止の仮処分を申し立てる異例の展開となっている。法廷闘争の行方によっては、商品の一時的な販売停止も考えられ、消費者への影響も避けられない様相を呈している。
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「『カバくん』によってうがい文化の普及に時間とコストを費やしてきた。その信用力にただ乗りすることは看過できない」。明治の担当者はこう話す。
明治がムンディファーマを訴えるきっかけは、ムンディが日本国内の販売元を塩野義製薬に変更して発売する新しい「イソジン」のパッケージキャラクターだ。薬局向けの資料として配布されているパンフレットに掲載されているパッケージにはうがいをする動物のキャラクターが印字されている。これが明治が商標権を保有する「カバくん」に極めて類似していると明治は主張する。
明治は、昭和60年からCMなどで使用してきたカバくんに類似したキャラクターを使わないよう、昨年12月と今年1月の2度にわたってムンディに書面で申し入れたが、ムンディの対応から「申し入れは実現はされない」と判断。2月9日、東京地裁に不正競争行為等差止の仮処分を申し立てたと説明する。
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一方、ムンディは明治が新たに発売するうがい薬が、今までのイソジンに酷似しているのが問題と反論する。
ムンディは、明治との提携を解消する際に、厚生労働省に提出しているイソジンの製造販売承認を明治から移管、承継することについて合意したと指摘。明治が4月から販売するうがい薬は、イソジンの延長ではなく、明治が新たに製造販売承認を得たものにも関わらず、現在のイソジンとほぼ同じパッケージで販売することこそ、消費者に混同・誤認させると主張している。
ムンディの担当者は「認識の違いが生じた場合は、信義誠実の原則に基づき話し合いで解決すると決めていた」と主張。「明治から一方的に書類が送られてきた上、話し合う間もなく、仮処分を申し立ててきた。私たちも仮処分申し立てを行うのはやむを得ないと判断した」と話す。明治が訴えているキャラクターについては「並べれば違いは分かる」と強調。「むしろ今売っているイソジンと全く同じパッケージで明治が新しいうがい薬を発売することに驚いた」と話す。