西之島噴火

100年で4番目の規模で面積12倍に 特殊な溶岩流など新たな謎も…

西之島 長引く噴火活動
西之島 長引く噴火活動

噴火から2年が経過した小笠原諸島の西之島。国内の火山噴火では過去100年間で4番目の規模となったことが最近の調査で分かってきた。終息の見通しは立っておらず、特殊なタイプの溶岩流が観測されるなど新たな謎も浮上している。

面積12倍に拡大

東京の南方沖約1千キロに位置する西之島は、富士山のような形をした高さ4千メートル級の海底火山の頂上が海面に出たものだ。2013年11月に40年ぶりに噴火し、面積は2年間で0・22平方キロから12倍の2・64平方キロに拡大した。

島の半径4キロ以内は噴火警戒範囲に指定されて立ち入りできなくなったため、海底の様子は不明だった。そこで海上保安庁は今年6、7月、噴火後初の海底地形調査を実施。無人探査船から海底に超音波ビームを当てて反射波を解析したところ、溶岩などの噴出物は北西部では薄くなだらかに積もり、南東部は険しい崖を形成していた。

海底地形と航空機で観測した標高のデータを噴火前と比較して計算したところ、噴出量は東京ドームの129倍に当たる1億6千万立方メートルと判明。国内で過去100年間に起きた噴火では、1914(大正3)年の桜島(鹿児島県)、30年代の薩摩硫黄島(同)、90年代の雲仙普賢岳(長崎県)に続く4番目の規模だったことが分かった。

さらに測量船などから人工地震波を照射して地下構造を探り、島直下の深部にマグマとみられる物体があることも突き止めた。同庁海洋情報部の森下泰成地震調査官は「さらに詳しく調べ、マグマの状態を確認したい」と話す。

終息は予測困難

73年に始まった西之島の前回噴火は1年2カ月で収まった。今回は長引いているように見えるが、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は「海底火山の噴火は把握しにくいため長く感じるかもしれないが、それほど変わったことではない」と説明する。

噴火の規模も火山としては中程度という。それでも過去100年間で4番目だったのは、日本の火山は桜島の大正大噴火以降、静穏期が続いてきたことの表れといえる。

西之島の噴火は当初、火山弾を飛ばすような爆発的なものが多かったが、最近は徐々に規模が小さくなってきた。火口付近では、火山ガスに含まれる硫黄成分が黄色の固体となって大量に付着する現象がみられ、火口の温度が下がった可能性があるという。

火山活動は終息に近づいているのか。藤井氏は「溶岩流の状況がよく分からず、データも不足しているので推移の予測は難しい。継続的な調査が必要だ」と指摘する。

大陸形成に手掛かり

地質学的な分析も進んでいる。海洋研究開発機構などは今年6月、西之島周辺の船上で火山灰を採取。分析した結果、噴出していたのは安山岩だったことが分かった。

西之島は前回の噴火でも安山岩を噴出したことが地質調査で判明している。今回の調査に参加した東京大地震研究所の前野深(ふかし)助教(火山地質学)は「2回の噴火は同じマグマだまりに由来するとみられる」と話す。

海洋機構によると、一般に海底の地殻は玄武岩、大陸の地殻は安山岩や花崗(かこう)岩でできている。伊豆・小笠原海溝沿いに連なる海底火山の多くは、玄武岩を多く含むマグマを噴出することが知られており、西之島がなぜ安山岩なのかは不明だ。その理由が分かれば、大陸の成り立ちを探る手掛かりにもなりそうだ。

一方、新たな謎も生まれた。前野氏が溶岩流を観察したところ、安山岩の溶岩は粘り気が多いはずなのに、粘り気が少ない玄武岩に多いタイプの流れ方だったのだ。海に流れ出た先端部が指のような形に伸びているのも、玄武岩に多い現象という。

安山岩を噴出する火山は浅間山(群馬、長野両県)など国内に多数あるが、噴火の特徴はさまざまだ。前野氏は「溶岩流も多様だと分かった。噴火が新たな地形を作る過程の理解につながるかもしれない」と話している。(伊藤壽一郎、黒田悠希)

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