アラブ首長国連邦ドバイにある世界一の高層ビルや、人気アイドルグループSMAPが出演したCMで知られるシンガポールのリゾートホテル、マリーナ・ベイ・サンズの建設を請け負い、海外で存在感を示している韓国の建設企業。ただ、こうした難度の高い工事をこなす一方、赤字覚悟の安値入札で受注実績を伸ばしてきたことも事実で、ここに来て工期の遅れや手抜き工事などが表面化。日本の建設業界では、ありえない工事現場の実態が浮き彫りになっている。
安値受注が裏目
シンガポール最大の新聞「ザ・ストレーツ・タイムズ(昨年8月18日付)は、現地の病院建設の完成が6カ月も遅れた原因として、請負業者の韓国・GS建設が熟練工を手当てできなかったことなどを指摘した。あるゼネコン関係者は「日系企業ではまず考えられないミス」とあきれる。
韓国国内でも聯合ニュースが5月12日、同国中部の牙山で、建設中の7階建てビルが突然傾いたと報じた。中央日報日本語版によると、傾斜した理由は、設計に従わなかった基礎・基盤の手抜き工事が原因であるという。ちょうど、旅客船セウォル号の沈没事故で安全対策が問われている中で、ずさんな管理が発覚したとして、韓国メディアも競って報道した。
過去にも、1994年10月に首都ソウルの漢江にかかる聖水大橋の中央部分が長さ48メートルにわたって崩壊して32人が死亡する事故があったほか、1995年6月には韓国・三豊百貨店が営業中に突然崩壊して500人余りの死者が出るなど、手抜き工事が原因とされる惨事が相次いだ。韓国建設業界に対する国民の不満が再燃しつつある。
聯合ニュースは11月12日、大型プロジェクトの受注が相次いでいた中東の産油国で、韓国の建設企業が逆に欧州企業に積極的な低価格入札を仕掛けられ苦戦している現状を報告し、「何らかの対策が必要だ」と指摘した。
韓国製は『使うな』
「公共工事で韓国の製品を使うことが一番のリスクだ」
2年ほど前まで日本の大手ゼネコンの東南アジア拠点で働いていた中堅幹部は、ベトナム政府関係者からこうささやかれたのを思い出す。中堅幹部は「ではなぜ工事の質が悪いと分かっていながら、韓国企業を選ぶのか」と詰め寄った。すると、この関係者は「入札価格が一番低い業者を選ばなければ、上司に説明がつかない」と顔をしかめたという。冗談かと思ったが本当の話だ。
日系建設企業にとって、韓国企業の安値攻勢は脅威だ。例えば、シンガポールの競争入札では、「コリアンライン」という隠語がある。日系企業が無理をして入札価格を下げて(業界用語で「突っ込んで」)も落札できないような安値で、韓国企業は請け負っているのだ。