経済インサイド

金メダル1個=税金100億円「ふざけるな」と財務省 東京五輪強化「高コスト」、それでも中韓に負けないためにどうするか

東京五輪の強化費をめぐり、財務省㊧と文科省㊨が早くもバトルを展開している(コラージュ)
東京五輪の強化費をめぐり、財務省㊧と文科省㊨が早くもバトルを展開している(コラージュ)

2020(平成32)年開催の東京オリンピック・パラリンピックの予算をめぐり、財務省と文部科学省が早くも火花を散らしている。政府の目標は自国開催の東京五輪で「金メダル30個で世界3位」に入ること。目標達成のためには、選手強化費用の大幅増が不可欠だと主張する文科省に対し、財務省は五輪という「錦の御旗」のもと、予算バラマキの温床になりかねないと警戒する。国の借金が1000兆円という世界最悪水準の財政再建と、日本人選手の金メダルラッシュ。この2つの両立は果たしてできるのか。

予算要求は「どんぶり勘定」

「金メダル1個に税金を100億円もかけて、国民の理解が得られるのか」

財務省は2015(平成27)年度予算の概算要求で、五輪の選手強化予算など前年度比2倍超の計540億円を求めた文科省に対し、怒りを隠さない。社会保障費の歳出削減や消費税増税や保険料の値上げなどで家計の負担が増す中、文科省の要求が「あまりにどんぶり勘定で時代に逆行した内容」(財務省)とみているためだ。

例えば、選手強化費である「競技力向上事業」の要求額は117億円で前年度から2.4倍に膨らんだ。財務省によると、約30の各競技団体に文科省が予算の希望額を聞き取り、それをほぼ単純合算した結果で、費用対効果の検証が十分に行われた形跡はうかがえない。実際、東京都渋谷区内に事務所を構えるある競技団体は財務省のヒアリングに対し、「予算の使い道は精査していない。お金はたくさんあったほうがいいから多めに要求した」と話し、予算要求は言い値に近い状況だという。

文科省は学校で五輪の歴史を教えたり、地域の国際交流事業を開催する「オリンピック・パラリンピック・ムーブメント推進事業」を新規で24億円要求した。だが、財務省は「全て民間でできること。このままではゼロ査定だ」と手厳しい。

財務省が警戒するのは、五輪メダルの高コスト化だ。夏季五輪でみると、2012(平成24)年のロンドン五輪は金メダルが7個で、メダル獲得総数は38個。直近4年間の強化費計616億円で割ると、金メダル1個で88億円、銀や銅を含めたメダル1個あたり16億円かかった計算だ。

強化費は年々増加する一方、金メダルは16年のアテネ(16個)以降、減少している。さらに東京五輪では、国立競技場の改修(総工費約1600億円超)や、最先端の設備をそろえるナショナルトレーニングセンターの増床(同約400億円)など五輪関連経費は大きく膨らむ見込みだ。メダル数が大きく伸びなければ「金メダル1個100億円」という試算は的外れではなさそうだ。

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