「待機児童ゼロ」「電柱ゼロ」「満員電車ゼロ」-。東京都の小池百合子知事は、生活に密着した分野の課題を「ゼロ」にすることを目指す公約を掲げ、平成28年の知事選で大きな支持を得た。就任から1年5カ月がたった今、取り組み状況や見通しを検証すると、「ゼロ」実現に向けた険しい道のりが浮き彫りになった。
待機児童ゼロ
「私が就任してから最重要課題と位置付けてきた」。小池氏がそう自負し、投資してきたのが待機児童対策だ。
32年春までの4年間で、保育所などのサービスを利用する児童数を7万人増やし、待機児童をゼロにする目標を掲げる。就任直後に補正予算を組んだほか、29年度当初予算でも1381億円を充当。保育所増に向け、家賃補助を手厚くしたり、保育所用地を貸した人の固定資産税などを減免したりと施策を打つ。
だが、29年4月は計画通りに利用児童を増やしたものの、拡大する需要に追いつけず待機児童は8586人だった。
都幹部は「実態調査などを踏まえ、7万人増で待機児童ゼロが達成できるのか、計画の見直しも議論している」と話す。
電柱ゼロ
小池氏が国会議員時代から取り組んできた電柱ゼロ(無電柱化)。その原点は、倒れた電柱が被害を拡大させた7年の阪神大震災の教訓だ。
29年9月に都道上への電柱新設を原則禁止する都道府県では初めての「無電柱化推進条例」を施行し、「無電柱化の日」の11月10日にはシンポジウムを開くなど、推進に向けたPRにも精力的だ。
ただ、世界との格差は大きい。国土交通省によると、無電柱化率100%のパリ、95%の台北に比べ、東京23区内はわずか7%。都はまず、都道のうち、山手通り内側に設定した「センター・コア・エリア」について、32年までに無電柱化を完了させるとしている。
一方、1キロ約7億円というコストも足かせとなる。29年12月の都政改革本部会議では、現在のペースだと都道全線の無電柱化に、約100年間の整備期間と約1・2兆円がかかるという試算も明かされた。
都は29年3月、無電柱化に向けた700億円の推進基金を創設。30年3月をめどに都無電柱化計画を策定・公表する方針だ。