安倍晋三首相が生活必需品の税率を低く抑える軽減税率の検討を指示したことにより、膠着(こうちゃく)状態だった与党の税制協議は加速する見通しだ。今後は幅広い飲食料品を対象品目とする公明党案を軸に議論するが、中小事業者の事務負担増加を懸念する自民党内には慎重論も残る。今年末の与党税制改正大綱決定まで残された時間は少なく、実現には「3つのハードル」が待ち構えている。
対象品目と財源
増税分を後に還付する財務省案の白紙撤回で急浮上した公明党案は、「酒類を除く」または「酒類と外食を除く」飲食料品、新聞・出版物を対象品目にする。幅広い飲食料品の税率を現行の8%に抑え、消費者の痛税感を和らげるためだ。
ただ、これらの品目に軽減税率を適用すると年間1兆~1兆3千億円の減収になる。8%時の負担軽減策である給付措置の財源は約5千億円で、税収減を懸念する自民党や財務省は対象品目の拡大に慎重だ。
公明党からは、品目を絞らずに「高級品は税率を上げるなど、高所得者向けの税制を見直して財源に充てるべきだ」との声もあり、与党内の調整は難航が予想される。